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第13章 (1)ヴァロン(マオ)side
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しおりを挟む視線に気付いて、何度アカリの方を見上げようと迷った事か……。
でも、一度見てしまったら……。
彼女と目を合わせてしまったら、俺はもう”マオ”ではいられなくなってしまうと思った。
……。
だから、正直。
アランが急な仕事が入って食事会を辞退すると言い出した時は、色んな意味でホッとした。
アカリをアランに近付けさせる事もなくなるし、俺自身も断る口実が出来た。
俺の居るアルバート様の部屋と、外の廊下を繋ぐ扉一枚。
すぐそこに、アカリが居る事に……。
俺はずっと気付いていた。
掛けたい言葉は、話したい事は、たくさんある。
……でも。
それは、今の俺じゃない。
「休暇を頂けるのでしたら、他にやる事があります。
仕事を1日でも早く終わらせる。
今、私にはその事しか頭にありませんから」
精一杯の、俺の言葉。
アカリにちゃんと伝わっただろうか?
本当は会いたい。
”アカリ”って名前を呼んで、この腕の中に閉じ込めたい。
いつしかお前の名前を呼んだ瞬間が、俺の仕事の終わりの合図のようなものになってた。
まるで魔法が解けるように、俺を俺自身に戻してくれる。
魂のない人形が、心を宿したように自然と笑顔になれるんだ。
あの瞬間、”ああ、幸せだな”って心から感じる事が出来る。
……。
愛おしい足音が、外の扉から離れていく気配を感じて俺は心の中で呟いた。
もう少し待ってて。
”アカリ”って俺がちゃんと俺で呼べる日まで。
名残惜しい気持ちを振り切って、俺は別荘を後にすると……。
再びマオに戻って、仕事に没頭した。
そして……。
一ヶ月程過ぎた、4月上旬。
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