夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
42 / 151
第13章 (1)ヴァロン(マオ)side

1-1

しおりを挟む
【2月下旬/アルバートの別荘】

この別荘を訪れるのは、久し振りだ。
あの時は”バロン”、今回は”マオ”。
思えば仕事の時以外に来た事はない。

次来る時は、長期任務が終わりアカリとヒナタを迎えに行く時だと思っていた俺にとって、今回ここへ来たのは予定外の事。
今の俺の雇い主、アランが提案したせいだ。

……。

アカリが、この別荘内に居る。
そう考えるだけで心が揺れない筈がない。
仕事をしながらも、俺はいつだって彼女の事を捜してるんだから……。

でも、俺はそれをアランに悟られたくない。
そして……。
奴にアカリを絶対に見せたくないし、接触させたくもなかった。

……。
なんだか、嫌な予感がしたから……。

気にし過ぎかも知れない。
アカリの元婚約者という立場の奴に、嫉妬しているだけかも知れない。

だが、アランはやたらと俺をアカリの事で動揺させようとしてくるのが伝わってくる。


俺が滞在している奴の屋敷の使用人もそうだ。
アランが選んだ俺の専属の使用人”スズカ”。
黒い髪、黒い瞳の容姿。
少しドジで、でも頑張り屋な彼女は、俺に何度もアカリを思い出させた。

笑顔を見てしまったら、親しくなってしまったらマズいと思って冷たくしようとしたが……。
そこにも奴の策略があり、そうも出来ない。
あの屋敷は使用人への待遇が悪く、アランの思惑通りに彼女が俺を持て成す事が出来なければ、どうなるか分からなかった。

純情そうで、家族の為に働く健気な様子に、俺はアランの策略通りスズカの事を完全に無関心では出来ずにいる。


そんな彼女に”好き”だと、告白された時はさすがに参った。
アカリに泣かれてるみたいで、思わず動揺した。

”マオ”として過ごしている期間、アランに付いて色んな場所に行く度に女性関係が絡んできて正直勘弁してくれと思う日の連続。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

私も一応、後宮妃なのですが。

秦朱音|はたあかね
恋愛
女心の分からないポンコツ皇帝 × 幼馴染の後宮妃による中華後宮ラブコメ? 十二歳で後宮入りした翠蘭(すいらん)は、初恋の相手である皇帝・令賢(れいけん)の妃 兼 幼馴染。毎晩のように色んな妃の元を訪れる皇帝だったが、なぜだか翠蘭のことは愛してくれない。それどころか皇帝は、翠蘭に他の妃との恋愛相談をしてくる始末。 惨めになった翠蘭は、後宮を出て皇帝から離れようと考える。しかしそれを知らない皇帝は……! ※初々しい二人のすれ違い初恋のお話です ※10,000字程度の短編 ※他サイトにも掲載予定です ※HOTランキング入りありがとうございます!(37位 2022.11.3)

離縁しましょう。あなたの本当の恋は、その聖女様なのでしょう?

ネコ
恋愛
私は辺境貴族の娘として、武名高い王国騎士団長と婚約していた。 けれど、彼が戦場で救われたという“聖女”が現れたとたん態度は急変。 「彼女こそ真の伴侶だ」と熱を上げ、私の前では居心地悪そうに黙り込む毎日。 ある日、とうとう決定打が来た――「お前と離縁して聖女を護りたい」。 ならば遠慮なく離縁しましょう。私はさっさと判を押し、新しい道へ進む決意を固める。 彼が「やはりお前も必要だ」なんて言い始めても、もう遅いのです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】貴族の矜持

仲村 嘉高
恋愛
「貴族がそんなに偉いんですか!?」 元平民の男爵令嬢が言った。 「えぇ、偉いですわよ」 公爵令嬢が答える。 「そんなところが嫌なんだ!いつでも上から物を言う!地位しか誇るものが無いからだ!」 公爵令嬢の婚約者の侯爵家三男が言う。 「わかりました。では、その地位がどういうものか身をもって知るが良いですわ」 そんなお話。 HOTで最高5位まで行きました。 初めての経験で、テンション上がりまくりました(*≧∀≦*) ありがとうございます!

奪われたものは、もう返さなくていいです

gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

処理中です...