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第12章 (1)アルバートside
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しおりを挟む二人の間で様子を伺っていると、笑っているアラン君を見るヴァロン君の瞳が何処か鋭い。
普段一緒に仕事をしている時の様子と明らかに違った。
仕事中の彼等は息がピッタリで、互いを高め合うまるで親友の様に和気藹々としている姿をよく目にした。
……それなのに。
まるで一気に対立したような二人の空間。
長くなりそうな沈黙を察してか、アラン君はフッと笑うと視線を私に移し口を開く。
「……では、どうでしょう。
近いうちに行う予定だったアルバート様との打ち合わせ、その場を孫娘様がいらっしゃる別荘で行う。と、いうのは?」
「!……いいのかい?アラン君」
私にとっては願ってもいない申し出だった。
休暇を取って来るよりも、仕事のついでならばきっとヴァロン君も気楽に来てくれる筈だと思った。
「出来れば打ち合わせの後、食事を用意してもらえると嬉しいです。
その席にはぜひ、アカリ様も」
「あ、ありがとうございます……!」
アラン君の気遣いに私は喜び、思わず手を取ってお礼を言った。
……しかし。
「なぁ?マオ。
それならお前も異存はあるまい?」
そう言って再び視線をヴァロン君に移すアラン君につられて、私も彼を見ると……。
「!ッ……」
思わずゾクッと、身が震えた。
ヴァロン君のアラン君を見る瞳の、鋭さに……。
獲物を狙う、獣のような……瞳。
……。
でもそれは一瞬で、ゴクッと息を飲んだ次の瞬間…ヴァロン君は微笑んだ。
「勿論です。
アラン様がそうおっしゃるのなら……。
お邪魔させて頂きます、アルバート様」
穏やかな口調でそう言うヴァロン君の姿に、さっきの眼光は気のせいだったのかと……思う。
目の前の彼がヴァロン君なのか、マオなのか……。
私はおかしな胸騒ぎを、感じていた。
……
…………。
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