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第12章 (1)アルバートside
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しおりを挟む「今は仕事なんだと、言い訳して……。
アカリがどれだけ不安な毎日を過ごしているか、知っているのかっ……?」
郵便が届く度に気にして、電話が鳴る度に誰よりも早く反応して、落ち込んで……。
”あまり動かない”と、大きくなったお腹を撫でながら胎動を感じない事を不安がっているか……。
悪い事はお腹の子に聴かせたくないと、アカリはヴァロン君の事を決して悪く言ったりしない。
仕事の記事を見て、”パパはすごいね!”と……いつも語り掛けているんだ。
なのに……。
「その件に関しましては、お答えする理由がありません」
顔色一つ、口調も崩さない、冷静な彼。
「次の仕事の準備がありますので、失礼致します」
そう言って軽く頭を下げてその場を去ろうとしたヴァロン君の胸倉を両手で掴み、気付いたら私は彼を背後の壁にバンッ!と押さえ付けていた。
自分がやってしまったとっさの行動に驚きながらも、引く事は出来ない。
「っ……頼む」
黙ったまま無抵抗のヴァロン君に、もう一度頭を下げた。
彼を責めたい訳じゃない。
ただ、アカリを想ってくれているんだという気持ちを確認したかった。
「頼むよっ……」
祈る様な想いで声を絞り出した時。
「いいじゃないか、マオ。
一度くらい息抜きをして来たらどうだ?」
私の背後から聞こえてきた声。
ハッとしてヴァロン君の胸倉を放し振り返ると、そこに居たのはアラン君。
「お前の仕事での成果はハッキリ言って想像していた以上だ。
一日くらい休みをやってもいいんだぞ?」
私を挟んで奥のヴァロン君を見ながら、アラン君はニヤリと笑って言った。
「いえ、休暇は必要ありません」
短くそう答えるヴァロン君。
……。
何とも言えない空気になる。
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