27 / 151
第12章 (1)アルバートside
1-3
しおりを挟む
【アランの会社/会議室】
この日はアラン君の持つ会社で、定期的な会議が開かれた。
半年前からアラン君の隣には常に”マオ”という人物がいる。
それが、ヴァロン君だ。
その姿を初めて見た時は驚いた。
普段の薄い栗毛色の髪と瞳を灰色の髪と瞳に変え、アラン君の家系に良く似せられたその姿。
夢の配達人ヴァロンの特技がいくら変装だと言っても、ここまで変わるものなのか……。と、目を疑った。
そして、何より……。
「あの……!ちょっと、いいかね?」
会議が終わり他の者達が退室するのを待っていた私は、残って片付けをしているヴァロン君に話しかけた。
すると、片付けをした手を止めヴァロン君は姿勢を正して私を見ると優しく微笑んだ。
「はい?アルバート様、お疲れ様です。
私に何か御用でしょうか?」
何より驚くのが、この口調と彼を纏う雰囲気。
口が悪く不良の様に何処か子供っぽい普段の彼とは一変して、真面目そうな誠実さが溢れた好青年。
黒ぶちの眼鏡の奥の穏やかな瞳。
とても良く調べてこの任務に臨んだのだろう。
今のヴァロン君は、アラン君の父親……。
つまり先代によく似ている。
私は先代の時からこの会社とは友好関係にあり、プライベートでも時々食事をしたりする仲だった。
ヴァロン君の”マオ”の姿は、若き日の先代の様で何処か懐かしい気持ちを思い出させてくれる。
「?……アルバート様?」
「!……あ、いや。すまない」
つい、思い出に浸り黙り込んでしまった。
私は軽く咳払いをし、他に人がいないのを確認するとヴァロン君に囁く様に口を開いた。
この日はアラン君の持つ会社で、定期的な会議が開かれた。
半年前からアラン君の隣には常に”マオ”という人物がいる。
それが、ヴァロン君だ。
その姿を初めて見た時は驚いた。
普段の薄い栗毛色の髪と瞳を灰色の髪と瞳に変え、アラン君の家系に良く似せられたその姿。
夢の配達人ヴァロンの特技がいくら変装だと言っても、ここまで変わるものなのか……。と、目を疑った。
そして、何より……。
「あの……!ちょっと、いいかね?」
会議が終わり他の者達が退室するのを待っていた私は、残って片付けをしているヴァロン君に話しかけた。
すると、片付けをした手を止めヴァロン君は姿勢を正して私を見ると優しく微笑んだ。
「はい?アルバート様、お疲れ様です。
私に何か御用でしょうか?」
何より驚くのが、この口調と彼を纏う雰囲気。
口が悪く不良の様に何処か子供っぽい普段の彼とは一変して、真面目そうな誠実さが溢れた好青年。
黒ぶちの眼鏡の奥の穏やかな瞳。
とても良く調べてこの任務に臨んだのだろう。
今のヴァロン君は、アラン君の父親……。
つまり先代によく似ている。
私は先代の時からこの会社とは友好関係にあり、プライベートでも時々食事をしたりする仲だった。
ヴァロン君の”マオ”の姿は、若き日の先代の様で何処か懐かしい気持ちを思い出させてくれる。
「?……アルバート様?」
「!……あ、いや。すまない」
つい、思い出に浸り黙り込んでしまった。
私は軽く咳払いをし、他に人がいないのを確認するとヴァロン君に囁く様に口を開いた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。
石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。
失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。
ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。
店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。
自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。
扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お飾り王妃は愛されたい
神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。
私とは違う人との間に。
愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】あなたにすべて差し上げます
野村にれ
恋愛
コンクラート王国。王宮には国王と、二人の王女がいた。
王太子の第一王女・アウラージュと、第二王女・シュアリー。
しかし、アウラージュはシュアリーに王配になるはずだった婚約者を奪われることになった。
女王になるべくして育てられた第一王女は、今までの努力をあっさりと手放し、
すべてを清算して、いなくなってしまった。
残されたのは国王と、第二王女と婚約者。これからどうするのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】貴族の矜持
仲村 嘉高
恋愛
「貴族がそんなに偉いんですか!?」
元平民の男爵令嬢が言った。
「えぇ、偉いですわよ」
公爵令嬢が答える。
「そんなところが嫌なんだ!いつでも上から物を言う!地位しか誇るものが無いからだ!」
公爵令嬢の婚約者の侯爵家三男が言う。
「わかりました。では、その地位がどういうものか身をもって知るが良いですわ」
そんなお話。
HOTで最高5位まで行きました。
初めての経験で、テンション上がりまくりました(*≧∀≦*)
ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
やり直し悪女は転生者のヒロインと敵対する
光子
恋愛
ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう……
断頭台を登る足が震える。こんなところで死にたくないと、心の中で叫んでいる。
「《シルラ》、君は皇妃に相応しくない! その罪を悔い、死で償え!」
私に無情にも死を告げるのは、私の夫である《キッサリナ帝国》の皇帝陛下 《グラレゴン》で、その隣にいるのは、私の代わりに皇妃の座に収まった、《美里(みさと)》と呼ばれる、異世界から来た転生者だった。
「さようならシルラ、また、来世で会えたら会いましょうね。その時には、仲良くしてくれたら嬉しいな!」
純粋無垢な笑顔を浮かべ、私にお別れを告げる美里。
今の人生、後悔しかない。
もしやり直せるなら……今度こそ間違えない! 私は、私を大切に思う人達と、自分の幸せのために生きる! だから、お願いです女神様、私の人生、もう一度やり直させて……! 転生者という、未来が分かる美里に対抗して、抗ってみせるから! 幸せになってみせるから! 大切な人を、今度こそ間違えたりしないから!
私の一度目の人生は幕を閉じ――――
――――次に目を覚ました時には、私は生家の自分の部屋にいた。女神様の気まぐれか、女神様は、私の願いを叶えて下さったのだ。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔物もいます。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる