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第11章 (4)スズカside
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しおりを挟む「っ……マオ、様……」
胸を高鳴らせ勇気を出して顔を合わせると、マオ様はパッと私から手を離しそっぽを向いた。
「……今日は、もう自室で休んで下さい。
私の部屋には来なくて結構です」
「!……ッ」
一瞬で、心が沈む。
素っ気ないマオ様の態度と拒絶された様な言葉に、ズキッと胸が痛む。
マオ様はアラン様との打ち合わせに再び熱中し始めて、もう私を……見てくれない。
「っ……は、い。
失礼、致します……ッ」
っ……ゃ、だ……。
涙が、出そうっ……。
私は一礼してアラン様の部屋を飛び出すと廊下を駆け抜け、通路を曲がった所でうずくまる様に座った。
涙が頬をつたり、ポタポタと床に落ちる。
嫌われて、しまったんだっ。
あんな所を見られてっ……。
きっと、出世の為に寝る女……だと……ッ。
”私の部屋には来なくて結構です。”
マオ様の言葉が、深く心に突き刺さって……痛みが治らない。
お側に居られたら、良かった。
マオ様の瞳に私が映る事がなくても、ただ側に居られたら、それだけで嬉しかったのに……。
初めはなかなか懐かない野良猫の様だったマオ様が、何度目かの帰宅で私に鞄と上着を預けて”ただいま”と言ってくれた時の喜び。
緊張感に包まれた様な夜の時間。
最近ようやく私の前でも欠伸をしたり、うつらうつらしたり……。
眠そうで、無防備な姿を見せてくれる様になった。
一週間に一度の二人の時間。
会話、ぬいぐるみ作り……。
私には掛け替えのない、時間だった。
……。
ようやく分かった、自分の気持ち。
マオ様。
私は、あの方に恋をしてたのだと……。
……
…………。
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