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第11章 (3)スズカside
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しおりを挟む「わ、私でよければお教えしますっ。
マオ様ならきっと出来ますよ!」
嬉しくて嬉しくて……。
マオ様の新たな一面を見られて、舞い上がる私。
マオ様と居るとついつい仕事だという事を忘れて、笑顔になってしまう。
一方のマオ様も、すっかり製作に入る気の様で……。
「じゃあさ。……。
こんなの!こんなの作れるかな?」
おそらく自分が作りたいと思っているぬいぐるみの絵を、得意気に紙に描いて私に見せてくれたけど……。
紙に描かれていたのは、顔があって、しっぽがあって、足が4本の……。
かろうじて動物だと分かる生き物の絵。
「……。……。
えっと……。い、犬……ですか?」
「……はい?猫ですけど?」
遠慮がちに尋ねる私に真顔で答えるマオ様。
なんで分かんないんだ?と言いたげな表情で見つめられて、私はおかしくて笑ってしまった。
!っ……いけない。
私はハッとして口を押さえた。
楽しくて気が緩んで笑った私の行動は、身分差を考えたら間違いなく無礼に当たる事。
そして何より怖かったのは……。
どうしようっ……。
マオ様に、嫌われてしまうかも知れない……っ。
思わず、真っ先に脳裏に浮かんだその感情。
仕事を辞めさせられる事よりも先に、この方に嫌われてしまったらどうしよう、という恐怖が……私を襲った。
……でも。
「?……犬?
猫にしか見えないと思うけど……犬??」
怖くてギュッと目を閉じて俯いていた私の耳に聞こえてきたのは、そんなマオ様の声。
恐る恐る目を開けて様子を伺う様に見ると、私の瞳に映るのは……。ご自分で描いた絵をまじまじと見つめて首を傾げるマオ様の姿。
その、無邪気な子供の様な表情と仕草に不安が解ける。
「……。
猫を描くなら、こんな感じだと思います」
私はマオ様の手からペンを取ると、紙に自分も猫の絵を描いて見せた。
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