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第11章 (3)スズカside
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しおりを挟む屋敷に滞在と言っても、基本的にマオ様はアラン様に付いてお仕事で忙しい日々。
一週間に一度、屋敷に戻られる程度。
だからお戻りになる日は胸が弾んだ。
夜の、二人きりの時間が待ち遠しかった。
……。
マオ様はその名前の通り、猫の様な人。
優しい、美しくも可愛いともとれる容姿に手を伸ばしたくなるのに……。
一定の距離には近付けさせてくれず、かと言って私を不快にさせる様な発言や態度は一切しない。
屋敷に戻られる夜は明け方まで会話をしてくれた。
……。
何度目か夜を共に過ごすうちに分かった事がある。
みんなの前では、他の使用人の前では笑顔を見せるマオ様が、私と二人きりの時は全く微笑まない事。
初めは私との時間が退屈なのかと思ったけれど、きっと違う。
みんなの前で微笑んでいるのは愛想笑い。
仕事の延長なんだと……。
夜の、猫の様な姿が本当のマオ様。
そう分かった時、私はすごく嬉しかった。
……
…………。
そして、マオ様専属の使用人になって三ヶ月が過ぎた夜の事。
いつもの様に会話していると、私の趣味にマオ様が深く興味を示してくれた。
「へぇ~。手芸が得意って事はさ?
その、人形とかぬいぐるみとかも作れるの?」
「は、はい。
難しい物だと少し時間がかかりますけど」
「……。
ふ~ん…。……。……」
私が質問に答えると、マオ様は考え込む様に少し黙り……。
暫くしてボソッと呟いた。
「……あのさ。
それって、初心者でも……作れる?」
「!……。え……?」
「っ……だから。……。
僕でも作れるかな?って、聞いてるんですッ」
まさかの言葉に思わず聞き返してしまった私に、マオ様は恥ずかしそうにそう言った。
っ……嘘、マオ様が……照れてる。
初めて見る可愛い表情に、胸がキュンッと疼く。
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