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第11章 (3)スズカside
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しおりを挟む引き下がる事も、マオ様の言葉に強引に迫る事も出来ない私。
その時……。
「あ、でも……。
ここで貴女を部屋から出してしまうと、もしかしてアラン様に何か言われたりしますか?」
……え?
……。………。
さっきとは違う。
マオ様のまるで私を気遣う様な優しいお言葉に時が止まる。
思わず顔を上げて、更に驚く。
嘘偽りない、と……信じられる眼鏡の奥の穏やかな瞳。
この方は今まで噂に聞いたお客様とは違う。
何故か、そう直感で感じた。
……不思議。
さっきは”怖い”と感じたのに……。
「……。
……って、聞いてます?」
ボーッと見上げている私の顔面でマオ様が大きな掌を振りながら尋ねてきて、思わずハッとして頭を下げる。
「っ……も、申し訳ございませんッ!」
「……はい?」
「お、お心遣い…ありがとうございます。
っ……けど、私……覚悟は、出来ておりますッ」
頭を下げたまま自分で自分の手を握り締めて、また震え始めた身体をなんとか私は落ち着けようとした。
不意を突かれたとはいえ、ついついじっとお顔を見つめてしまうなんて初歩的な失態。
しかもお客様に気を遣わせてしまうなんて、この屋敷の使用人として決してあってはならない事。
家族の為に、生活の為に、私はここを辞める訳にはいかなかった。
きっと、マオ様は優しい方。
大丈夫、大丈夫と心の中で呟いていると……。
「……。じゃあ……。
朝まで一緒に居ますか?僕と……」
私の固くなった心と身体を解かす様に、マオ様が言った。
トクンッと静かに響く、自分の暖かい鼓動。
……え?……っ。
その優しい声に顔を上げてマオ様を見ると、今度はさっきとは違うドキドキが私を襲ってくる。
マオ様はネクタイを緩めながら外していき、シャツの1番上のボタンを外して着崩していく。
その姿から、目が……逸らせなくて……。
あっという間に、惹きつけられる。
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