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第11章 (1)アカリside
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【アルバート別荘/アカリの部屋】
確かにヴァロンは仕事に没頭すると他事が見えなくなる。
けど、約束を破る人じゃない。
「真っ直ぐ寄り道せずに帰って来てくれる、って約束したもん。
だから、私は大丈夫だよ」
私がそう言ってモニカに微笑むと、コンコンッと扉がノックされ「失礼致します」と言う声が聞こえたと思うと使用人長のローザが部屋に入ってきた。
「モニカ様、お電話でございます」
「え?……。……。
……誰よ?……」
側に来て要件を伝えるローザに、モニカは”まさか”と言う様な表情で尋ねる。
尋ねておきながら電話の主が誰なのか悟っている感じのモニカにローザは軽く咳払いすると呟く。
「……ジェイク様からでございます」
ローザの言葉にモニカは”やっぱり”と呆れ顔。
「あ~!もうっ……!
今朝まで一緒だったじゃない!
話す事なんてないわよっ……」
「心配なんだよ、モニカの事」
溜め息を吐きながらぶつくさと幸せな愚痴を零すモニカに、私がくすくす笑いながら電話へ行くようにうながすと……。
「ヴァロンとジェイク。
足して二で割ったら丁度いいのにね」
私に少し申し訳なさそうな笑みを浮かべて、モニカは電話機のある部屋へ去って行った。
パタンッと静かに閉まる扉の音が、いやに心に響く。
「……。
アカリ様から一度、手紙でもお書きしてみてはいかがですか?」
再び編み物の手を動かし始めた私の肩に、ローザがカーディガンを羽織らせてくれながら言った。
手紙。
何度も書こうかと思った。
でも……。
確かにヴァロンは仕事に没頭すると他事が見えなくなる。
けど、約束を破る人じゃない。
「真っ直ぐ寄り道せずに帰って来てくれる、って約束したもん。
だから、私は大丈夫だよ」
私がそう言ってモニカに微笑むと、コンコンッと扉がノックされ「失礼致します」と言う声が聞こえたと思うと使用人長のローザが部屋に入ってきた。
「モニカ様、お電話でございます」
「え?……。……。
……誰よ?……」
側に来て要件を伝えるローザに、モニカは”まさか”と言う様な表情で尋ねる。
尋ねておきながら電話の主が誰なのか悟っている感じのモニカにローザは軽く咳払いすると呟く。
「……ジェイク様からでございます」
ローザの言葉にモニカは”やっぱり”と呆れ顔。
「あ~!もうっ……!
今朝まで一緒だったじゃない!
話す事なんてないわよっ……」
「心配なんだよ、モニカの事」
溜め息を吐きながらぶつくさと幸せな愚痴を零すモニカに、私がくすくす笑いながら電話へ行くようにうながすと……。
「ヴァロンとジェイク。
足して二で割ったら丁度いいのにね」
私に少し申し訳なさそうな笑みを浮かべて、モニカは電話機のある部屋へ去って行った。
パタンッと静かに閉まる扉の音が、いやに心に響く。
「……。
アカリ様から一度、手紙でもお書きしてみてはいかがですか?」
再び編み物の手を動かし始めた私の肩に、ローザがカーディガンを羽織らせてくれながら言った。
手紙。
何度も書こうかと思った。
でも……。
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