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第10章 (3)ギャランside

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「さぁ~て!そろそろ行くわ!」

そんなワシを察する様に、俯いたワシの背中をヴァロンがそう言いながらポンッと叩く。

思わず顔を上げると、さっきまで隣に居たヴァロンの姿がなく……。
ワシが後ろを振り返ると、奴は鞄を担ぐ様に持ちながら背を向けていた。


「……ジジイ、ごめんな。
俺はきっと死ぬまで何でも屋。
夢の配達人としてしか、生きられねぇわ」

呟く様に謝るヴァロン。
その言葉から、伝わってくる。


初めてリディアが連れて来たヴァロンを見た時に思った。
成長するこやつを見る度に感じていた。
自分に似ている、と……。

ワシはヴァロンを自分と重ね、こやつの幸せを護る事で自分も救われる気がしていた。

仕事以外に生き甲斐を見付けてほしい。
愛する人と幸せに生きてほしい。
自分が出来なかった夢を、ヴァロンに託していた。

……いや。
押し付けてしまって、いた。


ヴァロンはワシのその想いに気付いていた。

……。

何が、似ておる。

こやつは全くワシには似ておらん。
自分の後悔を優しさとすり替えて正そうとしたワシとは違う。

いつだって誰よりも、人の気持ちを汲んで生きておる。


「っ……。
ヴァロン、ワシは……」

「ジジイ!
俺の幸せ願ってくれて、ありがとな」

謝罪の言葉を口にしようとしたワシの言葉を遮って、ヴァロンが言った。


「俺は、充分幸せだよ。
あんたが創ってくれた夢の配達人に出逢えたからさ!」

背を向けたまま、チラッと顔だけ振り向かせて……。
ヴァロンが微笑った。

その姿が眩しくて眩しくて、視野が滲む。


”何でも屋さん?
人に頼まれた依頼を叶えるなんて素敵な仕事!
人に夢を届ける……。
じゃあ、ギャランさんは”夢の配達人”ですね!”

昔、彼女に言われた言葉と笑顔が蘇る。
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