上 下
172 / 195
第9章 (4)アカリside

4-2

しおりを挟む

「私とヒナタの為に、夢を諦めないで?
……。ヴァロンと私の子供だもん。
絶対に、この子も応援してるから」

きっとヒナタも私の選択に賛成してくれる。
ヴァロンにずっと、輝いていてほしいと一緒に願ってくれる。

自由奔放でいい。
我が儘でもいい。
思うままに、生き生きした貴方が好き。


「”自由に、羽ばたいてほしい”。
……覚えてる?昔、砂浜でそう言ったの。
私の気持ちは、ずっと変わらないよ?」

私はお腹を撫でながらヴァロン寄り添い、彼の胸元に額を付けて目を閉じた。


「……っ。
俺は、……アカリが大好きだッ」

震えた声が教えてくれる。
彼がどれだけ私を想って、悩んでくれたか。


「……うん」

私を包む様に抱き締めてくれるヴァロンの腕の中で、私は頷く。


「初めて、帰りたいと思った。
お前の暖かさに出逢ってからずっと、っ……俺は帰る場所を。アカリを捜してたんだ……」

優しい声、暖かい鼓動が教えてくれる。
ヴァロンがどれだけ私を愛してくれているか。


「……うん」

私も、待ってたよ。
子供の時からずっとヴァロンを待ってた。
この家に住んでいれば、いつかまた来てくれるって思ってたの。

だからお母さんが亡くなって、お祖父様の別荘に連れて行かれた時。
胸が張り裂けそうな位に、辛かった。

……でも。
貴方は来てくれた。
私が大変な時、寂しい時、辛い時……。

いつだって私がピンチの時に駆け付けてくれる、王子様だった。


だから、信じる。
ヴァロンは嘘はつかない。
貴方の魔法の言葉を、私は信じる。

ヴァロンはギュッと一度強く私を抱き締めると、少し身体を離してゆっくり瞳を合わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側室は…私に子ができない場合のみだったのでは?

ヘロディア
恋愛
王子の妻である主人公。夫を誰よりも深く愛していた。子供もできて円満な家庭だったが、ある日王子は側室を持ちたいと言い出し…

俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?

イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」 私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。 最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。 全6話、完結済。 リクエストにお応えした作品です。 単体でも読めると思いますが、 ①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】 母主人公 ※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。 ②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】 娘主人公 を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。

離婚してください、今すぐに。

杉本凪咲
恋愛
余命一か月と告げられた侯爵夫人リア。 最期の時を幸せに過ごすため、彼女は夫のクラークに離婚を叫ぶ。 クラークは離婚を拒否するが、リアは彼の浮気の証拠を突きつけて……

結婚前の彼の浮気相手がもう身籠っているってどういうこと?

ヘロディア
恋愛
一歳年上の恋人にプロポーズをされた主人公。 いよいよ結婚できる…と思っていたそのとき、彼女の家にお腹の大きくなった女性が現れた。 そして彼女は、彼との間に子どもができたと話し始めて、恋人と別れるように迫る。

夫に隠し子がいました〜彼が選んだのは私じゃなかった〜

白山さくら
恋愛
「ずっと黙っていたが、俺には子供が2人いるんだ。上の子が病気でどうしても支えてあげたいから君とは別れたい」

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

処理中です...