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第9章 (2)ヴァロンside

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「……これ、ね。
ヴァロンに……プレゼント、なの」

「っ……」

このタイミングで来たか……。
と、俺は口元に手を当てて少し目を逸らした。

俺へのプレゼントだと分かってはいた。
……が、渡される時の事まで考えていなかった。


「?……ヴァロン?」

目を逸らす俺を、不思議そうに見つめるアカリ。
俺は彼女と目を合わせられないまま、呟く様に口を開く。


「……慣れて、ねぇんだよ」

「?……え?」

「プレゼントなんて……。
貰った、事……ねぇから……」

仕事中やファンからのプレゼントは、山の様に貰った事がある。
……けど、プライベートで。
しかも好きな異性から面と向かってプレゼントを貰った事なんて、ない。

どうやって受け取っていいのか……。
どう喜んで、どんな表情をすればいいのか、分からない。


差し出されたプレゼントに手を伸ばせないでいると、アカリがくすくす微笑みながら俺の頭を撫でてそっと寄り添ってくれる。


「……可愛いね。
ヴァロンは時々、すごく可愛い」

「っ……お前が、不意をつくからだろ」

アカリ相手だと、本当に調子が狂う。
照れ隠しをする様に、アカリを抱き締めて顔を合わせない俺。


「……プレゼント、受け取ってくれないの?
せっかく初めてのお給料で買ったのに」

俺の腕の中で拗ねた様な声が聴こえる。

”初めてのお給料。”
自分の欲しい物、買えばいいのに……。

アカリが働きたいと言った時、俺が家にいない寂しさからだと思った。

……けど、違う。
きっと、全て俺の為。

さっき俺へのプレゼントを買って、幸せそうに微笑んでいた彼女の笑顔が蘇ってくる。
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