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第9章 (1)ヴァロンside

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【暫くして/小さな町】

「……はい。到着~!」

アカリに連れられて着いた場所。
そこは、港街から少し離れた隣町。

アカリが17歳まで育った町だった。


「……一度、ヴァロンと来たかったの。
私の育った所を、見てほしかったんだぁ~」

可愛く照れながら、彼女は俺に町中を案内してくれた。
自分が好きだったお店や場所。
子供の頃の思い出。


「!……あ、この本屋さんでね!
いつもヴァロンが載った雑誌を、店員さんの目を盗んで立ち読みしてたんだよ!」

その思い出のほとんどに、俺の名前が出て来た。
アカリは5歳の時に会ってから、ずっとずっと俺の事を想い続けてくれていた。

……何故、もっと早く会いに来てやらなかったのだと。
思わずにはいられない位、嬉しくて切なかった。


俺は酷い男だ。
いつもそうなんだ。
仕事になると、人格が変わったように他事を忘れて没頭してしまう。

”また会いに来てほしい”……。
幼いアカリがあの日言った言葉も、彼女が17歳の時に自分の任務で再会するまで、忘れていたんだから……。

結婚してからも、そうだ。
アカリがどんな気持ちで俺を待っているか気付きもしないで、任務中は全て忘れて仕事だけ……。
そして仕事が終わるとハッと我に返った様に彼女を想って……癒しを求めて、家へ帰る。


……どれだけ、我が儘なんだろう?

俺の夢を叶え様としてくれたアカリを……。
ヒナタを身籠ってくれている彼女を……。
俺はまた暫く忘れて、生きようとしてる。
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