144 / 195
第8章 (2)ヴァロンside
2-1
しおりを挟む
【一週間後/自宅】
「にゃ~っ」
「!……リディア。ただいま!」
玄関に入ると、猫リディアが久々に帰宅したアカリを嬉しそうにお出迎え。
彼女が抱き上げるとゴロゴロと、喉を鳴らして甘えている。
今日、アカリは無事に退院。
ずっと担当してくれていたホノカさんの許可が出て、隠れ家の医療施設から自宅に戻ってきた。
「ほら、アカリ。
突っ立ってないで寝室に行くぞ?
まだ無理すんなって言われてたじゃん」
荷物を玄関に置いて背後から包む様に抱き締めると、彼女は嬉しそうに微笑んで顔を俺の方に向ける。
「うん、分かってる。
でも、久々に帰って来られたんだもん。
……今日は、私がご飯作りたい。ダメ?」
”ダメ?”……。
すごく可愛い上目遣いのアングルで、可愛い口調で尋ねられて思わず負けそうになるが……。
俺は頑張って心を鬼にした。
「……駄目です」
俺は猫リディアを抱いたままのアカリを優しく抱き上げると寝室に連れて行き、ベッドにそっと降ろす。
「もう大丈夫だもん。
……せっかくヴァロンと居られるのに、寝てばっかりなんて嫌だよ」
荷物を片付けに行こうとする俺の服の裾を握って引き止めながら、アカリは拗ねた様に呟く。
その仕草にときめく俺。
……俺を殺す気か?
俺は帽子とサングラスを外して棚に置くと、隣に腰掛けてアカリの肩を抱き寄せた。
すると、ふふっと声を漏らして笑顔になった彼女が俺に抱き付いて足をパタパタさせる。
今までの我慢が溜まっていたんだろう。
この一週間、アカリは急に甘える様になった。
思い返せば、結婚して以来こんなにゆっくり彼女と過ごした事なんてない。
これがきっと本来のアカリ。
世の中の新婚の夫婦、なんだよな。
「にゃ~っ」
「!……リディア。ただいま!」
玄関に入ると、猫リディアが久々に帰宅したアカリを嬉しそうにお出迎え。
彼女が抱き上げるとゴロゴロと、喉を鳴らして甘えている。
今日、アカリは無事に退院。
ずっと担当してくれていたホノカさんの許可が出て、隠れ家の医療施設から自宅に戻ってきた。
「ほら、アカリ。
突っ立ってないで寝室に行くぞ?
まだ無理すんなって言われてたじゃん」
荷物を玄関に置いて背後から包む様に抱き締めると、彼女は嬉しそうに微笑んで顔を俺の方に向ける。
「うん、分かってる。
でも、久々に帰って来られたんだもん。
……今日は、私がご飯作りたい。ダメ?」
”ダメ?”……。
すごく可愛い上目遣いのアングルで、可愛い口調で尋ねられて思わず負けそうになるが……。
俺は頑張って心を鬼にした。
「……駄目です」
俺は猫リディアを抱いたままのアカリを優しく抱き上げると寝室に連れて行き、ベッドにそっと降ろす。
「もう大丈夫だもん。
……せっかくヴァロンと居られるのに、寝てばっかりなんて嫌だよ」
荷物を片付けに行こうとする俺の服の裾を握って引き止めながら、アカリは拗ねた様に呟く。
その仕草にときめく俺。
……俺を殺す気か?
俺は帽子とサングラスを外して棚に置くと、隣に腰掛けてアカリの肩を抱き寄せた。
すると、ふふっと声を漏らして笑顔になった彼女が俺に抱き付いて足をパタパタさせる。
今までの我慢が溜まっていたんだろう。
この一週間、アカリは急に甘える様になった。
思い返せば、結婚して以来こんなにゆっくり彼女と過ごした事なんてない。
これがきっと本来のアカリ。
世の中の新婚の夫婦、なんだよな。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ロザリーの新婚生活
緑谷めい
恋愛
主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。
アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。
このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。
愛を知ってしまった君は
梅雨の人
恋愛
愛妻家で有名な夫ノアが、夫婦の寝室で妻の親友カミラと交わっているのを目の当たりにした妻ルビー。
実家に戻ったルビーはノアに離縁を迫る。
離縁をどうにか回避したいノアは、ある誓約書にサインすることに。
妻を誰よりも愛している夫ノアと愛を教えてほしいという妻ルビー。
二人の行きつく先はーーーー。
死にたがり令嬢が笑う日まで。
ふまさ
恋愛
「これだけは、覚えておいてほしい。わたしが心から信用するのも、愛しているのも、カイラだけだ。この先、それだけは、変わることはない」
真剣な表情で言い放つアラスターの隣で、肩を抱かれたカイラは、突然のことに驚いてはいたが、同時に、嬉しそうに頬を緩めていた。二人の目の前に立つニアが、はい、と無表情で呟く。
正直、どうでもよかった。
ニアの望みは、物心ついたころから、たった一つだけだったから。もとより、なにも期待などしてない。
──ああ。眠るように、穏やかに死ねたらなあ。
吹き抜けの天井を仰ぐ。お腹が、ぐうっとなった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる