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第8章 (1)ヴァロンside
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しおりを挟むこの子に、会いたい。
早く、この手で抱きたいと思った。
「……ヴァ、ロン?」
俺の涙を見たアカリが、驚いた表情で見つめている。
「っ……わり。……。
嬉しいんだけど……。
どんな顔、していいのか……分かんねぇ」
愛おしさが溢れてきて視野が滲む。
恥ずかしい様な、むずかゆい感情に自分の手で口元を隠して俯く俺。
……。
もう二度と大切な人を失いたくない。
ユイの存在を知った時、何故気付けなかったのかと……。
後悔した、のに……。
俺はまた、過ちを繰り返すところだった。
……。
目を閉じた俺の心に浮かぶのは……。
リディアとは築けなかった、俺の夢。
あの日、俺が失った夢の続き。
それを守る為に、俺は……。
どうすればいい?
「……喜んで、くれるの?」
「っ……何言ってんだ!当たり前だろッ?」
俺が顔を上げてそう言うと……。
アカリがホッとした様に、涙を流しながら微笑んだ。
どれだけ不安だったんだろう?
きっと俺の長期任務と重なった自分の妊娠をアカリは喜んでもらえないと、思ってたんだ。
「……ずっと傍にいる」
俺はアカリの手を握りながら、目尻にそっと口付けて唇で涙を拭ってやった。
「……アカリも子供も、愛してる。
絶対に、離れたりしない。
……。だから、安心して眠れ」
俺の言葉と笑顔にアカリは笑顔で頷くと、繋いでいる手を両手で握り締める様にして目を閉じた。
”離れたくない”……。
”何処にも行かないで”……。
彼女の言葉に出来なかった想いが、伝わってきた。
……俺は。
自分の道を、見つめ直していた。
……
…………。
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