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第7章 (3)ホノカside

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実は今朝も、ヴァロンさんは私の所に顔を出してくれて新しい薬の材料や資料を持って来てくれた。
その時、私はずっと思っていた事を口にしたの。


「一つ聞いていいですか?
何故あの時、シュウさんの病を治す研究の相棒に……私を選んでくれたんですか?」

当時研修医だった私。
まだシュウさんの妻でもなかったし、他に腕の良い医師はこの医療施設に居たはず。
それなのにヴァロンさんは私に声をかけてくれた。
資料や薬を、シュウさんの病の事を私に託してくれた。

大切な親友の事。
ただ私の恋の成就だけに動いてくれていたとは、到底思えなかった。

そんな私の質問に、ヴァロンさんはこう言った。


『あんたなら俺の馬鹿みたいな提案に、最後まで付き合ってくれると思ったから』

『シュウの事を見捨てないで、一緒に頑張ってくれると思ったんだ』

『あんたを選んで、間違いなかった』って……。


シュウさんの珍しい病には、もう治せないとほとんどの医師が匙を投げた。

そんな中で……。
僅かな希望でも探し続けた私を、ヴァロンさんは認めてくれていた。

内気で自分からは何一つ行動を起こせなかった私が、初めて自分でやりたいと思って始めた事。

”シュウさんの病を治してあげたい。”
その気持ちを見抜いて、いつも助けてくれた。


とっても嬉しかった。

だからヴァロンさんは、私にとっても大切な人なの。
言葉はおかしいかも知れないけど、同じ目標を一緒に頑張ってくれている”戦友”みたいな。

いつか、奥様にも会いたいと思っていた。


”彼女はヴァロンの大切な人なんですッ!”

それがまさか、こんな形で会う事になるなんて……。

……
…………。
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