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第3章 (2)ユウside
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【パン屋さん】
「アカリさん?どうしたんですかっ?」
僕と店長が店の後片付けをしていると、血相を変えたアカリが店に飛び込んできた。
驚く店長に、彼女は今にも泣き出しそうな表情で頭を下げる。
「っ……す、すみま……せん。
落とし物、しちゃってっ……。
少しだけ、探させて下さい……ッ」
汗だくになって、息を切らして……。
そんなに恋人から貰った指輪が大事なのか?
僕はますます、返したくなくなった。
アカリは僕とぶつかって荷物を落とした場所だけではなく……。
更衣室や調理場……。
絶対に関係ない場所まで必死に探す。
……見付かる訳、ない。
だって今も、僕が持ってるんだから……。
懸命な彼女の姿に心が痛まないと言ったら、嘘になる。
けど、アカリを手に入れたい。
あの笑顔を僕だけのものにしたかった。
「…アカリ。
清掃作業の時にもう一度僕が探してあげるから、もう帰りな?」
「……っ。
ご、ごめんなさい……。
……。ありがとう、ございます……」
俯くアカリの頭をポンポンッと優しく撫でると、僕は背中を押して店の外まで見送る。
優しく励ますフリをしながら、この後アカリが彼氏と言い合いになるのを期待していた。
「……指輪くらい。
僕が新しいの買ってあげるよ」
アカリが帰った後、僕はエプロンのポケットから拾った指輪を取り出すとグッと握り締めて……。
今日捨てる、まだ口の開いたゴミ袋へ足を進めた。
……
…………。
「アカリさん?どうしたんですかっ?」
僕と店長が店の後片付けをしていると、血相を変えたアカリが店に飛び込んできた。
驚く店長に、彼女は今にも泣き出しそうな表情で頭を下げる。
「っ……す、すみま……せん。
落とし物、しちゃってっ……。
少しだけ、探させて下さい……ッ」
汗だくになって、息を切らして……。
そんなに恋人から貰った指輪が大事なのか?
僕はますます、返したくなくなった。
アカリは僕とぶつかって荷物を落とした場所だけではなく……。
更衣室や調理場……。
絶対に関係ない場所まで必死に探す。
……見付かる訳、ない。
だって今も、僕が持ってるんだから……。
懸命な彼女の姿に心が痛まないと言ったら、嘘になる。
けど、アカリを手に入れたい。
あの笑顔を僕だけのものにしたかった。
「…アカリ。
清掃作業の時にもう一度僕が探してあげるから、もう帰りな?」
「……っ。
ご、ごめんなさい……。
……。ありがとう、ございます……」
俯くアカリの頭をポンポンッと優しく撫でると、僕は背中を押して店の外まで見送る。
優しく励ますフリをしながら、この後アカリが彼氏と言い合いになるのを期待していた。
「……指輪くらい。
僕が新しいの買ってあげるよ」
アカリが帰った後、僕はエプロンのポケットから拾った指輪を取り出すとグッと握り締めて……。
今日捨てる、まだ口の開いたゴミ袋へ足を進めた。
……
…………。
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