上 下
49 / 195
第3章 (2)ユウside

2-4

しおりを挟む

……。

けれど……。
そのアカリの表情。

……いや。
まるで目の前に、愛しいその人がいるかのように話すアカリの瞳を見た時に……感じた。


「彼の言葉は魔法みたいで……。
一瞬で、私を幸せな気持ちにしてくれて……」

恋する瞳。
僕が今まで見てきたアカリの笑顔なんかと比べ物にならない位の……。
可愛い、幸せそうな笑顔を見せる彼女。


「傍にいるだけで、いつもドキドキさせてくれる……。
王子様みたいに、素敵な人なんですっ」

……。
アカリの恋の相手は、僕じゃない。

誰かが……。
僕じゃない、他の男が……彼女を虜にしてる。


そう確信した瞬間。
顔も分からないその男に、僕は激しく嫉妬した。

……
…………。


すっかり恋話に盛り上がってしまった女子達から逃げる様に休憩室から飛び出して来たアカリと、その場から動けなかった僕がぶつかる。

その衝撃で彼女の鞄が落ちて、中身が派手に床に散乱した。
慌てて散らばった荷物を拾うアカリ。
その姿にはさすがにハッとして一緒に拾ってやると……。

僕の足元に、輝く……物。
小さな指輪が転がっていた。


……。

好きな人、じゃない。

”彼氏”……。
アカリはすでに、その男と……。


湧き上がる悔しいような。
許せない気持ち。

僕はその指輪を拾うと、自分のエプロンのポケットの中に隠した。


”喧嘩でもして別れちゃえばいい”……。
僕はそう思って、指輪をアカリに返さなかった。


〈回想終了〉
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側室は…私に子ができない場合のみだったのでは?

ヘロディア
恋愛
王子の妻である主人公。夫を誰よりも深く愛していた。子供もできて円満な家庭だったが、ある日王子は側室を持ちたいと言い出し…

俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?

イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」 私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。 最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。 全6話、完結済。 リクエストにお応えした作品です。 単体でも読めると思いますが、 ①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】 母主人公 ※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。 ②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】 娘主人公 を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

離婚してください、今すぐに。

杉本凪咲
恋愛
余命一か月と告げられた侯爵夫人リア。 最期の時を幸せに過ごすため、彼女は夫のクラークに離婚を叫ぶ。 クラークは離婚を拒否するが、リアは彼の浮気の証拠を突きつけて……

結婚前の彼の浮気相手がもう身籠っているってどういうこと?

ヘロディア
恋愛
一歳年上の恋人にプロポーズをされた主人公。 いよいよ結婚できる…と思っていたそのとき、彼女の家にお腹の大きくなった女性が現れた。 そして彼女は、彼との間に子どもができたと話し始めて、恋人と別れるように迫る。

夫に隠し子がいました〜彼が選んだのは私じゃなかった〜

白山さくら
恋愛
「ずっと黙っていたが、俺には子供が2人いるんだ。上の子が病気でどうしても支えてあげたいから君とは別れたい」

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

処理中です...