海に乗せた秋の風

晴蔵

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零れ落ちる

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散りゆく秋は運命。けれども、今落ちた葉は死んだ訳ではない。そして、冬が来ても秋は生きている。
 同じように、貴女がいないところでも私の中で貴女は存在している。私と共にある。
 心の中にある八重は、本物ではない。けれども少しでも近付ける為に、今以上に花を学び、無邪気さを捨てた。
 私自身が責任から逃れる為に、八重に肯定されたくて虚像を作り出したのだ。悲しくて、虚しい行為だ。
「あぁ…八重」
 本物の貴女に、本物でしか知りえない気持ちを告げられたい。怒るなら怒って欲しい。
 私の心にある八重は、私の都合でしか喋らない。だからこそ肯定と褒めばかり、私の選択を疑わない。
 本物の八重なら怒ると分かっていても、私は……。
 あの時も、今も私はずっと自分勝手だ。

 無責任にずっと、私は八重に「大丈夫」と言い続けた。八重が追い込まれていることにも気付いていたのに、あまりに残酷な行為だった。
 行動には起こさないクセに、なんの意味もないアドバイスはして、「大丈夫、大丈夫だから。」って。
 それがどれほど八重にとって重荷になっていただろう?私も八重も、大丈夫で救われるほど幼くは無い。勇気を貰えるほど単純でもない。
「…ごめんなさい、八重」

 私を刎橋に呼び出した貴女を覚えている。忘れられるわけがない。
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