じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ

文字の大きさ
56 / 67
第4章 お祭り

第56話 もう遅いか……。

しおりを挟む
「それでお祭りが始まった訳ですが……」
「ぜんぜんいなーい……」


 屋台の周りにはチラホラとお客さんが居る訳だが……その殆どがもうお祭りを満喫し切っている感じで、帰路についてるみたいだ。

 いや、まぁ、確かにね。もう花火大会も終盤ですよ。だからと言ってもう帰っちゃうのはどうかと思うんですよ!


「てっぺいさん」
「ん? どうしたんだ?」


 俺が嘆いていると、しょうた君が話し掛けて来る。
 因みに呼び方は矯正済みである。次とうちゃんなんて呼んだらアレだから、デコピン3連発ぐらいかますから。


「なんでここにおきゃくさんがこないのかわかったよ」
「は? マジか?」


 さっきまで姿見えなかったけど、そんな事調査してたのか。


「うん、あれみて」


 俺はしょうたの指差す方を見た。そこには、何やら赤いドラゴンの様な装飾をした剣や、妖精の様なチョコを型取った物を乗せているクレープを持った親子連れが歩いている。


「ここのはんたいのばしょで、なんかすごいのやってるみたいなんだ。たしかーー」


 反対……ずっとメマの事を探し回ってたんだ。思い当たる所がある。


「「ダンジョン屋台」」だよな?」


 俺はしょうたと共に同じ名前を言った。やっぱりだ。


「しってたのか」
「まぁ、ちょっとな……」


 祭り前にそこの人と少し話したからな。
 確か……異世界の扉にちなんで作った屋台で、子供が楽しめる射的とかB級グルメが食べれる場所だったよな?

 まぁ、そんな目新しい物があって、屋台の内容も良かったらーー。


「こっちに人が居ないのも納得だなー……」


 俺は大きく溜息を吐いた。

 材料は収穫した物……ずんだを作る時に使った砂糖と塩、ソフトクリームのコーン、それにソフトクリームを作る為に借りた機械代……これだと借金は増えるだけだ。

 これなら屋台なんかやんなきゃ……。



 パンッ


「え?」
「おとーちゃん?」


 しょうた君、メマが首を傾げて俺を見る。


「……だからって弱気になってたらダメだろ! 俺達のも負けてない!!」


 俺は両頬を叩いた勢いで、大きく叫んだ。

 俺はこの店の責任者! 態度も行動も考えてする! 溜息なんてしてる暇あったら客引きしろ!!


「さぁっ! 美味しいずんだソフトは如何ですか~っ!!」


 俺は腹の奥から声を出した。
 すると、横で見てたメマとしょうた君が屋台から出る。


「おいしいよー!! ソフトクリームたべてー!!」
「ここのソフトクリームはマジでうまいぞ!! たべてみてくれ!!」


 メマとしょうた君が叫ぶ。メマは兎も角、しょうた君も客引きしてくれるなんて……やっぱ、メマを助けたお礼に食べさせたずんだソフトが美味し過ぎたのかな?

 よし、俺も負けじとーー。


「1個150円! そこらのジュースよりも安いよ~!!」


 俺は叫ぶ。そんな俺達を遠くで客引きをしていた2人が見ている。なんか話してるのか?


「皆んなして急に……ふふっ、負けてられないね」
「……私は別に、勝負してる訳ではない。天峯様に頼まれて嫌々やってるだけだからな」
「凪はもうちょっと素直になったら可愛いのにな~」
「な!? 何を!?」


 ……うむ。元気そうである。その元気を客引きに回してくれよ?
 俺が頷いていると、比奈が何かに気づいたかの様に「あっ」と声を挙げて俺の元へ駆け寄って来る。


「って、そう言えば哲平さん。まだ出してあげないんですか?」
「ん? 何を?」


 どうした急に。


「え? エースさんですよ。指導者さんに言われてエースさんも連れてけって哲平さんが言ってたって……」



 ………そんな事言った覚えないんですけど。



「ぽよぽよはここー!!」

 ぷるっ!


 俺が眉を顰めて唇を出していると、メマがエースさんの事を掲げている……って! 何をしてるんだね!?


「メマ!! 早くこっち来なさい!!」


 それ魔物だってバレたら終わり!!


「すごい! これほしい!!」
「あら、これどうやって出来てるのかしら? 不思議な感触ね~」


 ピキッ


 あ、終わった。


「ずんだソフトかってくれたらあげる!」
「ほんと!? おかーさん!!」
「はいはい、じゃあ2つお願いします」
「は、はい……」


 い、いや、バレなかったけど、あげるって……エースさんをあげることなんて出来ないぞメマ。


 俺はメマの方をチラチラ見ながら、ぎゅーさんの作った空間からソフトクリームを提供していると、メマは可愛く親指を立てものすっごい笑顔で頷いていた。


 な、何か策があるという事なのだろうか?


 俺がメマと男の子の様子を見つめていると、男の子のお母さんが「ま"っ!? 美味し過ぎる!?」と声を上げ、瞬く間に屋台の前には人が集まって来る。比奈と凪さんも客引きを止め、急いで接客に回る。


「ありがとうございます、ありがとうございます」


 って! 今これどころじゃないんだけど!? エースさん!! エースさんはどうなったの!?


「はい! どーぞー!」


 そこでお客さん達の隙間、緑色の髪が見え、俺はそこを凝視する。そこにはメマとエースさんが小さな子供達に囲まれている姿。


「ちょーだい!」
「うん! いいよー!」


 メマは男の子に手を差し出されーー。




 ぷちっ




「!?」
「はい! どーぞ!!」




 エースさぁーーーんっ!!?




 メマはエースさんの体を小さく千切り、男の子へと渡していたのだった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...