じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ

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第3章 レベルってゲームですか?

第42話 ファントム討伐したらメイドが増えていた

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 右京さんはエースさんと共に、苦しんでいる凪さんの下でピョンピョン手を伸ばしている。


「ううっ!」
「凪っ!!」


 何か異様な光景だよな。右京さんは凄い焦ってるけど、事情を知っている俺は全然焦ってない。しかも俺の力であれば直ぐにでもやっつける事が出来る。

 1つ問題があるなら、体に触れていない事だろうがーー。


「右京さん、ちょっとどいて下さい」
「て、哲平さん……な、凪が……!!」
「大丈夫です。今助けますから」


 右京さんの隣に立ち、俺は両手を掲げた。


 ハッキリ言って、こういう事は言いたくないし、したくも無いんだけどーー。



「あっち、行けっ!!」



 ブワアァッ



 俺が叫んだ瞬間。凪さんの身体から黒いモヤの様な物が飛び出る。


 どうやら上手く行った様だ。


 そのモヤは一点に留まり蠢くと、ドンドン収縮されていき、消滅する。


「!! 凪ッ!!」



 同時に凪さんの身体から力が抜ける様にして落ちて来る。しかし、右京さんの身体じゃ受け止める事は出来ないだろう。


「おっとぉぉっオェ!!」


 それに俺は滑り込むように、凪さんの下に潜り込んでクッションとなる。が、どうやら映画の様に上手くは行かなかった。


 マジで、内臓飛び出る。


「う、うぅ……」


 凪さんは頭を抱えながら、上体を少し起こす。


「大丈夫か?」
「え…あ、え!! ふ! 触れないで下さい!!」
「ぶへぇっ!!」


 い、イテェ……な、何でこんな事に。


 俺は顎の下からの見事な一撃に、意識を飛ばすのだった。


 __________


「ふぅ」
「凪……無事で良かったわ」


 天峯は凪の元へ駆け寄ると、無事元気な姿を見せる凪に、堪え切れず涙を流していた。


「し、師匠……!」


 その先程まで冷たかった態度とは裏腹な天峯の表情に、凪は頰を綻ばせる。あの大好きな天峯からこんなに心配されているのだと、改めて愛情深く指導して貰っている事に感動しながら、凪は天峯の身体に思い切り抱きつく。


「……何ともない?」
「は、はい! 師匠のお陰で何ともありません!!」
「うっ……」


 凪は気絶する哲平の上に乗り、頰を染めながら言った。


「……凪。貴女恩人に何て事をしてるのよ」
「お、恩人? 誰がですか?」
「貴女が今踏んでいる人よ」


 そう言われて凪は自分の足元を見た。


「ちょっと何を言ってるのか分かりません」
「はぁ。哲平さんが貴女を助けなかったら死んでたのかもしれないのよ? それなのに貴女は……」
「え!? この人が私の事をですか? 師匠じゃなくてですか?」


 下の方から呻き声の様なものが聞こえたものの、凪は気にする事なく立ち上がる。


「貴女の男性恐怖症もあるかも知らないけど、少しでもこの人に感謝の気持ちを伝えたいなら、さっきみたいな行動は止めなさい。いいわね?」
「……はい」
『それなら、私に良い考えがあります』


 返事をした瞬間。指導者、比奈、メマが音も無く天峯の後ろに現れる。凪は驚きに目を見開くものの、天峯は動揺を見せる事なく指導者に問い掛ける。


「……貴女は?」
『此処で……メイドをやっている様な者です』
「メイド、ねぇ? 初めて見るけど?」


天峯は比奈の方を見る。


「今日からですから」


比奈はそれに余計な事を言ったらまた混乱すると思ったのか、簡潔に言う。


『それよりも貴女、哲平様に感謝の気持ちを伝えたいのですよね?』
「え……ま、まぁ……………一応は」
「ならーー……」


 指導者は凪に耳打ちをする。すると、凪はそれに顔を一気に顔を赤らめた。


「は!? 何で私がこんな者の為に? 私を陥れようとしてるな貴様ァッ!!」
『とんだ被害妄想ですね。私は貴女の為、アドバイスをしただけなのに』
「私も反対です。そんなの必要ありません」
「凪、何を言われたの?」
「こ、この者! 私にーー……!!」


 凪が言うと、天峯はそれを噛み締める様に頷き、少し腕を組んで目を瞑った後言った。


「……いいじゃない。少しの期間だけやってみたらどう?」
「は??? 師匠……それは本気で言っているのですか?」
「本気よ」
「…………………はぁ。分かりました」


 師の本気の目に気圧され、愛しの師からの指示により、凪は嫌々ながらも了承するのだった。


 __________


 う……。


 俺は顎に痛みを感じながら、意識を取り戻そうとしていた。

 だが、頭の下のフカフカな枕がどうしても俺を離してくれない。


 あぁ。やべぇ。この枕凄い良いんだが。ふわふわで良い匂い。それにスベスベで何か温もりを感じ……ん?


 俺は目を瞑りながら、弄っていた手を止める。


 何か嫌な予感がする。しかもーー。


「あ……くっ! こ、コイツ……!!」
『ダメですよ。感謝の気持ちを伝えるのでしょう?』


 何やら……不穏な声が聞こえて来る。


「ふ、ふわぁ……」


 俺の勘が言っていた。誤魔化しながら起きろと。


 俺は分かりやすく欠伸をしながら、目をゴシゴシと擦った後に目を開けた。


 するとそこにはーー。



「だ、だい、ダイジョウブデすカァ?」



 メイド服姿の凪さんの姿がありました。



 怖い。









『これで一先ずは土地の住人が3人ーー……』
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