15 / 18
第2章 夜会がある様です。
第15話 第2王妃との邂逅
しおりを挟む
「ね、アレ見て…」
「う、羨ましい…何であの子がカーシュ殿下と…」
「それより殿下の持ってるの…」
「ハウスタイガーの亜種、では無さそうだけど…灰色の毛色に赤い目って少し気味悪いね」
城の廊下、カーシュはマアトを抱きながらメイドの後ろをついて行っていた。
(やっぱり少し目立つなー…でもこうやって人だかりがある所を通るって事は怪しい所に連れて行かれる訳では無さそう)
カーシュ達は廊下の真ん中を堂々と歩いていた。メイドは凛とした佇まいで、話しかけても「はい」「いいえ」としか言わず、此方を見向きもせずにただ真っ直ぐと目的地へと進んでいた。
「アウッ!」
「「「ひいっ!?」」」
「アウ…」
皆んなに見られてテンションが上がったのか、マアトが手を上げて鳴くと、周囲にいた者達は悲鳴を上げる。
「マアト…ごめんね。少し大人しくしてて」
「アウ…」
「着きました」
小声で話していると、メイドが立ち止まり、凛とした声で告げる。
トントントン
「入れ」
扉の中から少し威圧感のある声が聞こえ、メイドはゆっくりと扉を開けた。
「遅いわよ」
そこには金髪で鋭い目つきをした女性が待っていた。端正な顔立ち、フアラよりは少し年老いて見えるが、その老いを感じさせないパワーを感じる。
(カーシュの記憶でもこの人とは会った事はない…誰なんだろう?)
そう思いながらも中へと入ると、メイドは女性の前で跪く。
「申し訳ありません。第2王妃"アイリス・アルザ・ファテル"様」
見るからに高級そうな赤いドレス、指には幾つも煌めく指輪が存在している。
(この人が第2王妃!?)
カーシュはすぐ様にメイドと同様、床に膝をつけた。
「お初にお目に掛かります。カーシュ・アルザ・ファテルと申します」
「へぇ…まぁ、座りなさい」
アイリスに促され、カーシュは対面のソファへと移動する。
「それが貴方の魔物? 随分気味が悪い色をしてるわね」
「はは、そうですか? 私は特徴的でカッコいいと思いますけど」
「……絶望的なセンスね」
アイリスは鼻で笑うと「まぁ良いわ、そろそろ本題に入りましょう」と言って1つの紙を差し出した。
「これにサインをしなさい」
「…これは?」
そこには誓約書の様な物が置かれていた。
「大丈夫、貴方が不利益になる物は何も書いてないわ。むしろ得になるかも」
アイリスはどこか怪しげな笑みを浮かべ、持っていた扇子で口元を隠す。
それにカーシュは眉を顰めた。
(いやいやいや、どう考えても不利益になるものでしょ)
不利益にならないものなら教えてくれても良い筈だ。それなのに教えないとなると、後ろめたい事があるという事。
(だけど…第2王妃の提案を断るというのは…)
貴族社会というのは、色々と面倒だというのはCritical Rose(乙女ゲー)で散々と言う程に思い知っている。
(あの時の事を踏まえるとサインするしかないんだよね~…まぁ、同じ王族だし? 流石に奴隷にするとかではないと思うけど…)
カーシュはゆっくりと誓約書を手に取る。
そこには、読み続けていた絵本だけでは読み解けない文字が羅列していた。
「うっ…」
「…もしかして文字も書けないのかしら? 良かったら私が代筆してあげても良くてよ?」
そう言うとアイリスは、素早く誓約書をカーシュの手から奪い去ると、サラサラっとカーシュの名前を誓約書に書いた。
「これで良いわね。さっ、もう帰って良いわよ」
アイリスは虫を払う様に手を払った。
(いや…それだと誓約書の意味ないじゃん!? しかも何でマアトも連れて来たの!?)
色々な疑問が浮かんだカーシュであったが、それを言い出す事も出来ずにカーシュは部屋を後にするのだった。
* * *
「何だ、思ってた通り。以前通りのカーシュのままね」
「はい、その様でございます」
カーシュが部屋から出て行った後、アイリスはふんぞり返ってメイドと話していた。
「あの様子じゃ、ビクター様と私の子供が産まれても落ちこぼれのまま」
アイリスは鼻で笑うと、天井を見上げてメイドにも聞こえないような声で呟く。
「あんな子が『聖王』だなんて…馬鹿馬鹿しい。しかもあんな汚らわしい魔物まで飼って…良かったわ、アレを飲ませて」
「う、羨ましい…何であの子がカーシュ殿下と…」
「それより殿下の持ってるの…」
「ハウスタイガーの亜種、では無さそうだけど…灰色の毛色に赤い目って少し気味悪いね」
城の廊下、カーシュはマアトを抱きながらメイドの後ろをついて行っていた。
(やっぱり少し目立つなー…でもこうやって人だかりがある所を通るって事は怪しい所に連れて行かれる訳では無さそう)
カーシュ達は廊下の真ん中を堂々と歩いていた。メイドは凛とした佇まいで、話しかけても「はい」「いいえ」としか言わず、此方を見向きもせずにただ真っ直ぐと目的地へと進んでいた。
「アウッ!」
「「「ひいっ!?」」」
「アウ…」
皆んなに見られてテンションが上がったのか、マアトが手を上げて鳴くと、周囲にいた者達は悲鳴を上げる。
「マアト…ごめんね。少し大人しくしてて」
「アウ…」
「着きました」
小声で話していると、メイドが立ち止まり、凛とした声で告げる。
トントントン
「入れ」
扉の中から少し威圧感のある声が聞こえ、メイドはゆっくりと扉を開けた。
「遅いわよ」
そこには金髪で鋭い目つきをした女性が待っていた。端正な顔立ち、フアラよりは少し年老いて見えるが、その老いを感じさせないパワーを感じる。
(カーシュの記憶でもこの人とは会った事はない…誰なんだろう?)
そう思いながらも中へと入ると、メイドは女性の前で跪く。
「申し訳ありません。第2王妃"アイリス・アルザ・ファテル"様」
見るからに高級そうな赤いドレス、指には幾つも煌めく指輪が存在している。
(この人が第2王妃!?)
カーシュはすぐ様にメイドと同様、床に膝をつけた。
「お初にお目に掛かります。カーシュ・アルザ・ファテルと申します」
「へぇ…まぁ、座りなさい」
アイリスに促され、カーシュは対面のソファへと移動する。
「それが貴方の魔物? 随分気味が悪い色をしてるわね」
「はは、そうですか? 私は特徴的でカッコいいと思いますけど」
「……絶望的なセンスね」
アイリスは鼻で笑うと「まぁ良いわ、そろそろ本題に入りましょう」と言って1つの紙を差し出した。
「これにサインをしなさい」
「…これは?」
そこには誓約書の様な物が置かれていた。
「大丈夫、貴方が不利益になる物は何も書いてないわ。むしろ得になるかも」
アイリスはどこか怪しげな笑みを浮かべ、持っていた扇子で口元を隠す。
それにカーシュは眉を顰めた。
(いやいやいや、どう考えても不利益になるものでしょ)
不利益にならないものなら教えてくれても良い筈だ。それなのに教えないとなると、後ろめたい事があるという事。
(だけど…第2王妃の提案を断るというのは…)
貴族社会というのは、色々と面倒だというのはCritical Rose(乙女ゲー)で散々と言う程に思い知っている。
(あの時の事を踏まえるとサインするしかないんだよね~…まぁ、同じ王族だし? 流石に奴隷にするとかではないと思うけど…)
カーシュはゆっくりと誓約書を手に取る。
そこには、読み続けていた絵本だけでは読み解けない文字が羅列していた。
「うっ…」
「…もしかして文字も書けないのかしら? 良かったら私が代筆してあげても良くてよ?」
そう言うとアイリスは、素早く誓約書をカーシュの手から奪い去ると、サラサラっとカーシュの名前を誓約書に書いた。
「これで良いわね。さっ、もう帰って良いわよ」
アイリスは虫を払う様に手を払った。
(いや…それだと誓約書の意味ないじゃん!? しかも何でマアトも連れて来たの!?)
色々な疑問が浮かんだカーシュであったが、それを言い出す事も出来ずにカーシュは部屋を後にするのだった。
* * *
「何だ、思ってた通り。以前通りのカーシュのままね」
「はい、その様でございます」
カーシュが部屋から出て行った後、アイリスはふんぞり返ってメイドと話していた。
「あの様子じゃ、ビクター様と私の子供が産まれても落ちこぼれのまま」
アイリスは鼻で笑うと、天井を見上げてメイドにも聞こえないような声で呟く。
「あんな子が『聖王』だなんて…馬鹿馬鹿しい。しかもあんな汚らわしい魔物まで飼って…良かったわ、アレを飲ませて」
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる