31 / 38
第2章 人との交流
第30話 ルイエ役に立っています
しおりを挟む
「ん? 何だアレ?」
「ん? どうした? 何かあったか?」
見張りに立っている1人が入り口の正面を見て呟く。それにもう1人の男が反応し、同じ方向を見つめる。
「「あ?」」
そこには1つの小さな影があった。
それに2人は油断なく槍を構える。
しかしーー
「…キュ」
そこに居たのは普通の魔物、ラビットだった。しかもこの寒さで身体が悴んでいるのだろう、身体が震えていた。
「何だよ、ラビットかよ…」
「はぁ、ビビらせやがって…そうだ! コイツを丸焼きにして食っちまうか! 寒さで動きも鈍いし、小腹も空いて来たし、ちょうど良いだろ」
「ま、そうだな。じゃあいただくか」
「おう。じゃあトドメは頼んだ。俺は辺りを警戒しとくからよ」
「りょーかい」
そう言われた1人の男が槍を片手に、ラビットに槍を突き立てようとする。
「…あ、そう言えば思ったけどよ? 此処に普通のラビットが居るなんて珍しいよな。此処は麓だぜ? 此処まで来るのに引き返すのが普通なのに………って、おい! 聞いてんのか、よ?」
男が返事のない男に苛立ちを覚え、振り向く瞬間。何故かとても瞼が重くなり意識を保つ事が難しくなり、地面に膝をつける。
「ど、どうなって…」
段々と閉ざされて行く視界の中、男がかろうじて開く目に映ったのは、うつ伏せで倒れている仲間の姿。そしてその上で震えながらもドヤ顔を決めているラビットの姿だった。
「な…?」
男は抵抗虚しく瞼を下ろすのだった。
◇
「ふ、ふふ、わ、私にかかればこんなもん…」
「よしよし、寒かったなー」
倒れている2人の人間を洞窟の両端に寄せた俺は、頑張ったルイエの体が暖まる様に体をさすっていた。
ルイエが1人で出て行った理由、それはルイエが使った魔法にあった。
「ふふ…私の睡眠魔法の前では皆んな無力」
歯をカチカチと鳴らしているルイエは、偉そうに胸を張りながらそう言う。
睡眠魔法。それはルイエが使えると言う魔法の名前らしい、因みに名前は自分が決めたと言っていた。
その魔法が使えると言うルイエに、俺は聞いた。
魔法が使えないから、ジャルデから教えて貰っていたのではないか…と。
しかし、そんな俺にルイエは衝撃な一言を叩き出した。
「全部寝てたから分からない」
……雪が綺麗である。
効果は分からないけど、いざとなったらアノムが助けてくれるでしょ? とルイエに言われたら、もう認めるしかなかった。
そこまで俺を信用してくれるなら、俺もルイエを信用しなくちゃならないから。
まぁ、結果少し危険ではあったが、何の被害もなく中に入れるのは十分過ぎる戦果と言っていいだろう。
「それで…これからどうするかだが…」
「任せて…私が全員眠らす」
「ルイエにはあまり無茶をしないで欲しい」
「え…」
魔法は魔力を動力にして発動される現象の事だ。
魔力は人それぞれ保有する量が決まっている。無限にある訳ではないのだから、無闇に使わない様にしなければルイエが使えなくなった途端危険に侵される。
「わ、私は出来るよ!?」
「これからは洞窟の中だ。見張りが俺達を見逃さなければ入らない。つまり、見張りが本当に見逃したか、何かあったのか…頭の良い奴なら分かるだろう」
「…でも」
「ルイエの睡眠魔法は強力だ。その代わり大きなデメリットも存在する…俺から離れなければならない事。俺と一緒に居れば一気に警戒心を抱かせる事になる」
ウルフはラビットとは違って、人間を襲う事に特化している。まぁ、ラビットに比べればだが牙や爪が鋭く、体も大きい。すぐに発見され、攻撃される可能性もある。
「でもそれならさっき上手く…
「もう1つ。俺と離れると寒い」
俺の半径2メートル以内。それが俺のダンジョン領域内だ。この中にいる限りは適温が保たれ、動きを阻害する事はない。だが、この領域内から出るとーー
「さっきは寒かっただろう?」
「う…」
そう、あの震えている姿は演技でも何でもない。本当に寒くて体を震わせていたんだ。ルイエにはとても無理をさせてしまったと思っている。
「俺はルイエが怪我をしたらと思うと気が気じゃないんだよ…だから頼む」
「あ、う、うん…わ、分かった」
よし。ルイエの説得には成功した。
これからは俺のターンだ。
「ん? どうした? 何かあったか?」
見張りに立っている1人が入り口の正面を見て呟く。それにもう1人の男が反応し、同じ方向を見つめる。
「「あ?」」
そこには1つの小さな影があった。
それに2人は油断なく槍を構える。
しかしーー
「…キュ」
そこに居たのは普通の魔物、ラビットだった。しかもこの寒さで身体が悴んでいるのだろう、身体が震えていた。
「何だよ、ラビットかよ…」
「はぁ、ビビらせやがって…そうだ! コイツを丸焼きにして食っちまうか! 寒さで動きも鈍いし、小腹も空いて来たし、ちょうど良いだろ」
「ま、そうだな。じゃあいただくか」
「おう。じゃあトドメは頼んだ。俺は辺りを警戒しとくからよ」
「りょーかい」
そう言われた1人の男が槍を片手に、ラビットに槍を突き立てようとする。
「…あ、そう言えば思ったけどよ? 此処に普通のラビットが居るなんて珍しいよな。此処は麓だぜ? 此処まで来るのに引き返すのが普通なのに………って、おい! 聞いてんのか、よ?」
男が返事のない男に苛立ちを覚え、振り向く瞬間。何故かとても瞼が重くなり意識を保つ事が難しくなり、地面に膝をつける。
「ど、どうなって…」
段々と閉ざされて行く視界の中、男がかろうじて開く目に映ったのは、うつ伏せで倒れている仲間の姿。そしてその上で震えながらもドヤ顔を決めているラビットの姿だった。
「な…?」
男は抵抗虚しく瞼を下ろすのだった。
◇
「ふ、ふふ、わ、私にかかればこんなもん…」
「よしよし、寒かったなー」
倒れている2人の人間を洞窟の両端に寄せた俺は、頑張ったルイエの体が暖まる様に体をさすっていた。
ルイエが1人で出て行った理由、それはルイエが使った魔法にあった。
「ふふ…私の睡眠魔法の前では皆んな無力」
歯をカチカチと鳴らしているルイエは、偉そうに胸を張りながらそう言う。
睡眠魔法。それはルイエが使えると言う魔法の名前らしい、因みに名前は自分が決めたと言っていた。
その魔法が使えると言うルイエに、俺は聞いた。
魔法が使えないから、ジャルデから教えて貰っていたのではないか…と。
しかし、そんな俺にルイエは衝撃な一言を叩き出した。
「全部寝てたから分からない」
……雪が綺麗である。
効果は分からないけど、いざとなったらアノムが助けてくれるでしょ? とルイエに言われたら、もう認めるしかなかった。
そこまで俺を信用してくれるなら、俺もルイエを信用しなくちゃならないから。
まぁ、結果少し危険ではあったが、何の被害もなく中に入れるのは十分過ぎる戦果と言っていいだろう。
「それで…これからどうするかだが…」
「任せて…私が全員眠らす」
「ルイエにはあまり無茶をしないで欲しい」
「え…」
魔法は魔力を動力にして発動される現象の事だ。
魔力は人それぞれ保有する量が決まっている。無限にある訳ではないのだから、無闇に使わない様にしなければルイエが使えなくなった途端危険に侵される。
「わ、私は出来るよ!?」
「これからは洞窟の中だ。見張りが俺達を見逃さなければ入らない。つまり、見張りが本当に見逃したか、何かあったのか…頭の良い奴なら分かるだろう」
「…でも」
「ルイエの睡眠魔法は強力だ。その代わり大きなデメリットも存在する…俺から離れなければならない事。俺と一緒に居れば一気に警戒心を抱かせる事になる」
ウルフはラビットとは違って、人間を襲う事に特化している。まぁ、ラビットに比べればだが牙や爪が鋭く、体も大きい。すぐに発見され、攻撃される可能性もある。
「でもそれならさっき上手く…
「もう1つ。俺と離れると寒い」
俺の半径2メートル以内。それが俺のダンジョン領域内だ。この中にいる限りは適温が保たれ、動きを阻害する事はない。だが、この領域内から出るとーー
「さっきは寒かっただろう?」
「う…」
そう、あの震えている姿は演技でも何でもない。本当に寒くて体を震わせていたんだ。ルイエにはとても無理をさせてしまったと思っている。
「俺はルイエが怪我をしたらと思うと気が気じゃないんだよ…だから頼む」
「あ、う、うん…わ、分かった」
よし。ルイエの説得には成功した。
これからは俺のターンだ。
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
雪花祭り☆
のの(まゆたん)
ファンタジー
記憶を失くし子供の姿に戻ってしまった黒の国の王 火竜王(サラマンデイア)
アーシュラン(アーシュ)に
愛された 白の国のオッド・アイの瞳の王女エルトニア(エイル)
彼女は 白の国の使節(人質)として黒の国の王宮で暮らしていた・・
記憶をなくし子供の姿になってしまった彼(アーシュ)黒の王に愛され
廻りの人々にも愛されて‥穏やかな日々を送っていた・・
雪花祭りの日に彼女はアーシュに誘われ女官長ナーリンとともに
出かけるが
そこで大きな事件が・・
無詠唱魔法が強いなんて誰が決めた! ~詠唱魔法を極めた俺は、無自覚に勘違い王子を追い詰める~
ノ木瀬 優
ファンタジー
詠唱魔法に強いこだわりを持つクロは無詠唱魔法を一切覚えずに、同郷のマリアと国立魔導士養成学校に入学する。だが、そこにはめんどくさい勘違い王子がいて……。
勘違いと空回りを続ける馬鹿王子と、実は・・・なクロとマリア。彼らの学園生活が、今、始まる!
全11話(約4万6千字)で完結致しますので安心してお読みください。
学園生活が始まるのは1話からです。0話は題名の通り過去の話となっておりますので、さらっと読みたい方は、1話から読まれてもいいかも?です。
残酷な描写、肌色表現はR15の範囲に抑えたつもりです。
色々実験的な試みも行っておりますので、感想など頂けると助かります。
異世界転生者の図書館暮らし2 おもてなし七選
パナマ
ファンタジー
「異世界転生者の図書館暮らし モフモフと悪魔を添えて」の続編。図書館に現れる少女の幽霊、極東で起きた、長く悲惨な戦争、ヨル(図書館の悪魔)の消失。それらは全てソゴゥを極東へと導いていく。
理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -
由奈(YUNA)
ファンタジー
1ヶ月前、幼馴染みの井黒揚羽が行方不明になって、私の世界は一変した。
*
どこかへ一人で行けるはずがない病弱な幼馴染みの謎の失踪理由を探して辿り着いたのが都市伝説“ユートピア”という異世界の話だった。
*
私はただ、アゲハを心配だったから、ただそれだけだったのに。
*
理想郷とは名ばかりのその世界で見たのは『破壊者と救済者』二つの勢力が争う荒れ果てた世界だった。
*
*
*
異世界で異能力を手に入れて戦う冒険物語。
※タイトルほどポップな内容ではありません。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
本条蒼依
ファンタジー
山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、
残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして
遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。
そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を
拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、
町から逃げ出すところから始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる