上 下
10 / 57
第1章.始まり

8.初戦闘

しおりを挟む
「出たわね!」
 私はこのゲームで初の戦闘を開始する。

 スライムは私に向かって突進してくる。それを私は【影魔法】を使って防御する。


「ピギッ…!」
 スライムは、いきなり出てきた影の盾にぶつかり、苦悶の声をあげて後退する。


「ベリアル!」
 スライムが怯んでいる隙に、私はスライムを指差し、ベリアルに攻撃させる。


(任せて!!)
 そう言ったベリアルは、背から三叉槍を出すと矛先をスライムに向け、突進する。三叉槍はスライムに突き刺さった。


「ピッ…」
 スライムがポリゴンとなって消えて行く。


 〈経験値が上昇しました〉
 〈スプリングのレベルが上昇しました。3ステータスポイントを獲得しました〉
 〈ベリアルのレベルが上昇しました。3ステータスポイントを獲得しました〉


 経験値が上がって、自分達のレベルも上がって、ステータスポイントも貰ったらしい。

 思ってたよりも楽に倒せた…。

 しかもスライムに攻撃とかしてないけど、経験値が入るんだ…。戦闘に参加すれば経験値は分配されるってことかな?
 私がそう思ってたら、頭の上から声が聞こえた。


(やったー! 勝ったー!!)
 ベリアルの弾んだ声が聞こえてくる。


 まぁ…いっか!そんな事考えないで、今は初戦闘に勝った事をこの子と喜ばないと!


 私はベリアルを捕まえて、頭を撫でる。
「ベリアル~! カッコよかったよ~!」

「えへへ~! でしょ~?」


 私達がそんな事をしてると、さっきスライムを倒した所に何か落ちている事が分かった。

 そこには3ギルの硬貨があった。


「おぉー!お金だ!」
 私はその硬貨を拾う。

 なるほど。敵を倒すとこうやってお金が貰えるんだ。知らなかった。

 んー、私何も知らなすぎない? もっとちゃんと街を探検した方が良いかな。そう思った私は一旦、始まりの街 アバールへ帰った。



 ~始まりの街 アバール~


 うーん、戻ってきたはいいけど…。どこに行けばいいのか。うーむ。
 私が目を瞑り、腕を組んでると

 ドンッ

「おっと!すまねぇ、嬢ちゃん! 」
 私にぶつかったって来たのは、細身の身体をして腰に双剣を携えていた青年だった。そのまま青年は走り抜けて行ってしまった。


 すごい急いでたなぁ。何があったんだろ?
 私は少し気になったが、ぶつかった事を忘れ街を歩く。

(スプリングー。お腹減ったー。)
 ベリアルが私の頭に乗り言う。


「あー、さっき初戦闘だったからね。緊張してお腹が減りすぎたのかもね!」
 私は笑うと、すぐそこのレストランに入った。



 ~まんぷく亭~


「「「いらっしゃいませ~。」」」


 おぉ。結構賑わってる所に入っちゃった。
 私は隅に空いてる席があったのでそこに座った。

 私は置いてあったメニューを見る。
「お、おふ。」
 な、なんかめちゃくちゃ高いお店に入っちゃったっぽい…!

(うわ~!あの席の人の美味しそう~!)
 ベリアルの視線の先には、大きな肉の塊があった。

 ご、ごくり。
 いや、まぁ?お金はあるし。ゲームの中ぐらいは贅沢しないとね!そう思った私は、近くを通ったウェイトレスに声をかける。


「はい。いらっしゃいませ~。って、あれ?幻想姫?」
 ウェイトレスのお姉さんは言った。

「ゲンソウキ?」
 私は思わず聞き返した。

 お姉さんは不思議そうに聞き返す。
「あれ?もしかして掲示板でスレッドとか見てないの?」

「掲示板?」

「掲示板。冒険者ギルドに行って登録すればメニューで掲示板ってのが開ける様になるんだよ?知らない?」

 ……知らなかった…! この1つだけ使えないとこか!? 

「ははっ、知らなかったみたいだね。掲示板見ればその"幻想姫"ってのもなんだか分かるよ。それよりご注文は?」

「あ、じゃあ、これとこれを。」

「はい、じゃあ少々お待ちを~。」
 お姉さんは厨房の方へ行った。


 はぁ。やっぱり、街の中で情報収集は必須だっか~。今日みたいに何も分からないままってなってたら、良い情報とか逃しちゃうかもだし。

 私は考えながら、ベリアルとイチャコラする。
 ベリアルの頭を撫でたり、羽根を撫でたり、お腹を撫でたりした。そうして料理はすぐにできた。


「は~い、お待たせしました!」
 さっきのお姉さんが料理を置いていく。

 私は料理を食べる。するとお姉さんから声をかけられた。

「お嬢ちゃん、このゲーム始めてどれくらいなの?」

「まだ2日目です。」

「あ、そうなんだ。どおりで掲示板も知らないわけだ!」
 お姉さんが笑う。

「お姉さんは、なんで此処で働いてるんですか?」
 私は聞く。

「あー、まだ知らないか?私の職業"売り子"なの。」

「は?売り子?」

「そ、売り子。戦闘職とは違って、自分が働いた分のお金、経験値が貰えるの。」

「え、じゃあパートナーとかのレベルとかはどう上げるんですか?」

「…お嬢ちゃん。本当に何も知らないんだね。」

「すみません、何も調べたりしないで始めた方が面白いかなって。」
 私は頭を掻く。

「私のパートナーはネズミのチューって言う子なんだけど、何かお客様にトラブルがあった時とかに知らせてくれる様にしてるの。これでパートナーにも経験値が入るってわけ。」


「なるほど。ちゃんと経験値が入るように試行錯誤してこうなったってわけですか。」

「そういう事!」
 お姉さんはドヤ顔をキメる。

「興味深い話ありがとうございました!あのよかったら私とフレンドになってくれませんか?また色々聞かせて貰いたいんですけど…。」
 私は自分が情けなく、モジモジしてしまった。


「くはぁっ!!」
 お姉さんは膝をつくと苦しそうに胸を抑える。

「大丈夫ですか!!」
 現実の世界で何かあったのだろうか! 私は心配して声をかけた。

「あ、あぁ。大丈夫。えーと、私の名前はサキ。よろしくね。」
 サキさんはなぜか分からないが、かろうじて立ち上がり言った。

「はい!私はスプリングと言います!よろしくお願いします!」

 私に初のフレンドが出来た。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光
SF
 その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。  現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。  そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。  ――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。 表紙は頂き物です、ありがとうございます。 ※カクヨムさんでも重複掲載始めました。

最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。

鋼殻牙龍ドラグリヲ

南蛮蜥蜴
ファンタジー
歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」  ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。 次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。  延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。 ※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。 ※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。

【完結済み】VRゲームで遊んでいたら、謎の微笑み冒険者に捕獲されましたがイロイロおかしいです。<長編>

BBやっこ
SF
会社に、VRゲーム休があってゲームをしていた私。 自身の店でエンチャント付き魔道具の売れ行きもなかなか好調で。なかなか充実しているゲームライフ。 招待イベで魔術士として、冒険者の仕事を受けていた。『ミッションは王族を守れ』 同僚も招待され、大規模なイベントとなっていた。ランダムで配置された場所で敵を倒すお仕事だったのだが? 電脳神、カプセル。精神を異世界へ送るって映画の話ですか?!

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

処理中です...