久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

文字の大きさ
41 / 49
第5章 なんでもない!

第41話 文化祭当日(葵視点)

しおりを挟む
「今日は待ちに待った文化祭!! いやぁ! 楽しみだね!!」
「私は気が気じゃないよ…文化祭実行委員だし」

 私は家から出た後、環と一緒に学校へと向かっていた。

 いつも大人っぽい環だが、今日はいつも以上に色っぽい。
 それはウチの高校で、文化祭の登校中に限り私服でもOKという特殊な校則があるからだろう。

「でも、葵が高波君と仲良くなってからは上手くやってたでしょ?」
「…まぁね。でも、あの人が来てからはもうギクシャク」
「あー…お兄さんね」

 そう。あの人が来てからは高波君との関係が悪くなった…いや、少し拗れてしまったと言った方がいいだろうか。

 話をするのにも辿々しく、会うのも少し気まずい。

「まぁ、でも葵も少しうざっがってたでしょ?」
「…そうだけど……」

 折角の文化祭を楽しまないと勿体ないじゃない。

 という、何処か貧乏性からの言葉を呑み込み、私は環と一緒に学校へと向かって行くのだった。



「神原さん! ごめん!!」
「…急に何?」
「うわー…視線すご…」

 学校の校門に着いた私達は、1人の男子生徒、高波君から頭を下げられていた。
 まだ登校時間という事もあって、周りには野次馬が3人を囲む様にして立ち並んでいた。

「この前から気になってたんだ…君のお兄さんを悪く言ってしまった事!」

 高波君は必死に私に頭を下げてくる。

「ふーん? で?」
「え…あ…だからごめん!」

 それに私は冷たく返した。

 高波君が戸惑っている事が伝わって来るが関係ない。だってそうだろう。
 それを私に言った所でどうすると言うのだ。

「そうじゃないでしょ…そういうのはさ、私じゃなくてあの人に言ってよ。私に対して言った訳じゃないし」

 そう言うと、高波君は はっ! とした表情を浮かべた後に大きく頷いた。

「分かった! じゃあさ、お兄さんって何処のクラスなのか教えて貰っても良いかな?」
「い、いや! 多分今日は文化祭当日で忙しいだろうし後にした方がいいと思う!」
「そうか…分かった!」

 危ない…あの人がこの学校の生徒でない事がバレる所だった。バレてたら色々面倒な事になりかねない。

「咄嗟に出た嘘にしてはまともだね」
「うるさい」

 したり顔で此方を見てくる環を置いて、私は教室へと向かったのだった。



 それからは時間が早く流れた気がした。
 文化祭が始まると、学校中の生徒が一斉に動き始めて、少し人に酔いながらも私はメイド喫茶の準備を進めた。


「こんな物かな?」
「良いじゃん良いじゃん!」
「これ普通のお店で出しても分からないんじゃない!?」

 これで内装も終わったし、皆んなの反応も上々。

「よし。じゃあ皆んな、今度は神輿の方に行くよ」

 神輿では、毎年商店街で沢山の観客に囲まれながら、わいわいと皆んなで神輿を担ぐ。

 神輿は数日前から、商店街の駐車場に置いてある。だから、クラスの人は法被を着て、後は歩いてそこまで行けば良いだけ。

 私は文化祭実行委員だから、商店街の見回りをして、ウチの生徒が何か困っていないか確認した後に着るけど。

 そんなこんなしてる内に、あっという間に商店街へと着く。

 今、神輿の置いてある所には生徒が密集し過ぎてトラブルにならない様に、文化祭実行委員の人しか行けない。高波君が不手際がないか確認したと思うけど、私も一応確認しておこうかな。

 そんな確認しに行く途中、私は人が集まっているのを見つける。

 何かの催し物? それともウチの生徒が何か問題を起こしてるとか…

 少し気になって人混みを掻き分けて見てみると、そこに居たのは文化祭の手伝いをしてくれた誰かさんだった。

 髪はかき上げられ、あの素顔がハッキリと見えている。


 はぁ…。



「……何やってるんですか」
「ん? お、葵か。何でこんな所に?」

 目の前には、手帳を手に壁にもたれかかっている義兄の姿があった。

「もう、神輿の時間ですから」
「……俺の居る場所が神輿が出て来る場所なのか?」
「…はぁ、ふんっ!!」
「うわっ! 何すんだ!?」
「…こっちに来て下さい」

 私は義兄の髪をぐしゃぐしゃにすると、腕を引き、人混みを掻き分けて行く。

 このまま此処に居ても目立つだけ。


 …そうだ。クラスの皆の所に連れて行けばこの人だかりもなくなるかも。流石に高校生達が居る中まで見にくる人は居ないでしょ。


 それにーー


「っ!」
「あ…確か高波君、だよね?」

 高波君も居るし。ちょうど良いかも。

 皆んなが居る所に着くと、高波君は義兄に向かって深く頭を下げる。

「あの…この前はすみませんでした! 失礼な事を言って…」
「いや、良いんだ。気にしないで」

 義兄は手を振って高波君に応える。

「葵を君にやろう!」
「え! 本当ですか!?」
「何を言ってるんですか?」

 そして、何故かふざけた事を言う義兄。
 高波君からの謝罪は思っていたよりもあっさり終わって、何故か2人は仲良さげだ。

 何で急にそんな仲良く…私が話し始めたのは最近からだし…ちょっと悔しいかも。

 いや、それも私が避けてたからって言うのも多少なりには、あると思うけど…。

「お、お兄さんは文化祭には参加しないんですか?」

 私が義兄達を見つめていると、それに苦笑いをしながら高波君が話を変える。

 あ、そう言えば高校生(設定)なんだっけ。

「お…俺は良いんだ。椿先生から許可を貰ったから……」
「椿先生って…美術の田中先生の事ですか? 何か頼まれ事でもされてるんですか?」
「まぁ、うん」


 ふふっ! 何それ。


 さっきまでは余裕綽々な大人の対応だったけど、今は子供が一生懸命言い訳してるみたい。
 それに私は自然と口を綻ばせていた。



 そして、ふと、あの人と目が合う。


 すると、何故かあの人も自然と笑みを深めている。



 あぁ。



 よく分からない。よく分からないけど、悪くない感じだ。

 これまで、私の学校行事は人生でも微々たる思い出に過ぎなかった。楽しくはやっていた。
 だけど、何だか心の端っこに何もない空間がある様な、そんな喪失感があった。


 今だから分かる。多分その空間には、愛情が足りなかったのだと私は思う。いつも仕事を頑張っている母に、私は愛情は求められなかったから。

 でも、この人は何処か私を安心させてくれる。

 愛情を感じる。

 心地良い。


 きっと、この文化祭は、私の人生で初めて"皆んなでの思い出"になると思う。


 今の私の感情が、そう言っている。




 だけど…まさか、あんな事になるなんて、その時の私は微塵も思ってもいなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...