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第3章 はぁ。
第19話 流行
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「…」
「…ちょっと葵……葵!」
「えっ! 何!?」
「何でそんな事してるの?」
今は授業の間の少しした休み時間。環は葵に声を掛けた。
自分の席に座りっぱなしで、プリントと睨めっこしている葵へと。
「何って…文化祭の事についてに決まってるじゃない。ウチのクラスは教室でメイド喫茶を出すんだから、色々と準備しなきゃでしょ」
そう言って、またプリントへと視線を落とす葵。
「だから、なんで葵だけがやってるのか聞いてるの!」
環が私のおでこを指で押す。
「いや、何でって、それは私が文化祭実行委員だから…」
「そうじゃないでしょ! 高波くんはどうしたのよ!?」
「高波くんは、神輿の担当だから…」
「神輿の方はただ男子達が運ぶだけじゃない!? それに比べればこっちの方が飾り付けだとか、料金の設定、メイド服の用意もしなきゃでしょ!? 葵の方が大変過ぎ!!」
環は私を問い詰めるかの様に、叫び近づく。
「…大丈夫だよ、なんとかするから」
葵はぶっきらぼうに答えると、環は大きく溜息を吐いた。
「…高波くんには後で言っときなよ、手伝って欲しいって」
環はそう言うと近くにあった椅子へと座り、私の作業を眺めた。
分かってる。分かってるんだけど……。
*
「おかえりー」
「…ただいま」
世理はキッチンで葵を迎える。
やはり葵はどこか疲れている様で、顔色があまり良くない。昨日の事を含めたとしても、ここまで疲労の色を見せるだろうか?
「手洗って来たか?」
俺は気遣っているとは思われぬ様に、自然と会話をする。
「…まだです」
「じゃあ、早く行ってこい。今日は葵が好きだって言ってたハンバーグを作ってみたんだ。口に合えば良いんだけど」
そう言うと葵は、洗面所に向かっていた足を止めて此方を振り返る。
「何ですかいきなり…私そういうご機嫌を取る様な感じ嫌だって言いましたよね?」
そう言ってきた葵に対して俺は、一言。
「偶々だよ」
そう言うと、葵は少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せながらリビングを出た。
(ふぅ…何かやっぱりピリピリしてるな…自然に話せ~、自然に自然に)
自分を鼓舞するかの様に同じ言葉を繰り返す。そして両頬を叩き気合を入れた瞬間、葵がリビングへと戻ってきた。
「…まだご飯作ってるんですか?」
「ん? あぁ、悪い。あともう少しで出来る」
何だ? ここに来てからはほぼ俺が作ってるんだけど…?
「…手伝いますよ」
葵はそう言って、キッチンの近くにあったウサギの刺繍が入ったエプロンをつける。
「いやいやいや、もう少しで終わるからとりあえず座っとけって」
「…じゃあお皿を出します」
葵は料理をするのは妥協して、皿を準備し始める。
「随分頑なに手伝おうとするんだな…」
「何でそんな事一々反応するんですか。ハゲますよ」
「お、おぅ…」
俺は葵に口撃されながらも、調理を進めた。
「じゃあ、どうぞ。召し上がってください」
その後俺達は、盛り付けをして椅子へと座った。
皿の上には葵が好きだと言っていたチーズinハンバーグが乗っている。葵は俺の方をチラッと見た後、いただきますと言いハンバーグを口へと持っていった。
「…もぐ…もぐ」
「どうだ?」
世理はハンバーグを食べた葵に感想を聞いた。
「ぱく…もぐ…もぐ」
「…あの…せめて何か…」
「ぱく…もぐ…ぱく…もぐ」
「…」
しかし世理が聞いているのにも関わらず、葵は無表情で一心不乱にハンバーグを食べ続けていた。
食べてくれてるって事は、食えない程の味ではなかったって事だよな?
世理は疑問に思いながらも、ハンバーグを頬張る葵の様子を伺いながら食事を口に運ぶ。
「…うん。美味い」
中に入ったチーズと、肉汁が絡み合って芳醇な匂いが鼻から抜けていく。付け合わせに作ったポテトサラダも口直しに最適だ。
俺はふと葵の方を見る。
「…まぁ、ママよりは美味しくなかったですけど…悪くはなかったです」
少し目を話した隙に、葵の皿の上にはもうハンバーグが置いてなく完食していた。
「もう食べたのか…?」
「ち、小さかったんですよ!」
葵は恥ずかしそうにそっぽを向いて答える。
…俺の拳大ぐらいの大きさはあったと思うんだけど、まぁ、流石は高校生って所か。
「まぁ、安心しろよ。もう明後日にも茜さんのハンバーグを食べれるからな」
「そうですね、やっと貴方との生活も終わりです」
葵のその顔には少しの安堵と、嬉しさが混じり合っている様な表情をしていた。
(まぁこの1週間、義兄になったとは言え初対面の男と長い間一緒に生活してんだ。俺と違った気苦労が色々あったかもしれない)
葵の事を考え、少し気まずくなった俺は徐ろにテレビの電源をつける。
『次のニュースです』
ん?
『海外では新型のウイルスが流行しています。その感染力は恐ろしく、今や死者は何千人となっている模様です』
…ほう。
『その為政府は、日本への入国に規制を掛ける方針です』
「「……え?」」
「…ちょっと葵……葵!」
「えっ! 何!?」
「何でそんな事してるの?」
今は授業の間の少しした休み時間。環は葵に声を掛けた。
自分の席に座りっぱなしで、プリントと睨めっこしている葵へと。
「何って…文化祭の事についてに決まってるじゃない。ウチのクラスは教室でメイド喫茶を出すんだから、色々と準備しなきゃでしょ」
そう言って、またプリントへと視線を落とす葵。
「だから、なんで葵だけがやってるのか聞いてるの!」
環が私のおでこを指で押す。
「いや、何でって、それは私が文化祭実行委員だから…」
「そうじゃないでしょ! 高波くんはどうしたのよ!?」
「高波くんは、神輿の担当だから…」
「神輿の方はただ男子達が運ぶだけじゃない!? それに比べればこっちの方が飾り付けだとか、料金の設定、メイド服の用意もしなきゃでしょ!? 葵の方が大変過ぎ!!」
環は私を問い詰めるかの様に、叫び近づく。
「…大丈夫だよ、なんとかするから」
葵はぶっきらぼうに答えると、環は大きく溜息を吐いた。
「…高波くんには後で言っときなよ、手伝って欲しいって」
環はそう言うと近くにあった椅子へと座り、私の作業を眺めた。
分かってる。分かってるんだけど……。
*
「おかえりー」
「…ただいま」
世理はキッチンで葵を迎える。
やはり葵はどこか疲れている様で、顔色があまり良くない。昨日の事を含めたとしても、ここまで疲労の色を見せるだろうか?
「手洗って来たか?」
俺は気遣っているとは思われぬ様に、自然と会話をする。
「…まだです」
「じゃあ、早く行ってこい。今日は葵が好きだって言ってたハンバーグを作ってみたんだ。口に合えば良いんだけど」
そう言うと葵は、洗面所に向かっていた足を止めて此方を振り返る。
「何ですかいきなり…私そういうご機嫌を取る様な感じ嫌だって言いましたよね?」
そう言ってきた葵に対して俺は、一言。
「偶々だよ」
そう言うと、葵は少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せながらリビングを出た。
(ふぅ…何かやっぱりピリピリしてるな…自然に話せ~、自然に自然に)
自分を鼓舞するかの様に同じ言葉を繰り返す。そして両頬を叩き気合を入れた瞬間、葵がリビングへと戻ってきた。
「…まだご飯作ってるんですか?」
「ん? あぁ、悪い。あともう少しで出来る」
何だ? ここに来てからはほぼ俺が作ってるんだけど…?
「…手伝いますよ」
葵はそう言って、キッチンの近くにあったウサギの刺繍が入ったエプロンをつける。
「いやいやいや、もう少しで終わるからとりあえず座っとけって」
「…じゃあお皿を出します」
葵は料理をするのは妥協して、皿を準備し始める。
「随分頑なに手伝おうとするんだな…」
「何でそんな事一々反応するんですか。ハゲますよ」
「お、おぅ…」
俺は葵に口撃されながらも、調理を進めた。
「じゃあ、どうぞ。召し上がってください」
その後俺達は、盛り付けをして椅子へと座った。
皿の上には葵が好きだと言っていたチーズinハンバーグが乗っている。葵は俺の方をチラッと見た後、いただきますと言いハンバーグを口へと持っていった。
「…もぐ…もぐ」
「どうだ?」
世理はハンバーグを食べた葵に感想を聞いた。
「ぱく…もぐ…もぐ」
「…あの…せめて何か…」
「ぱく…もぐ…ぱく…もぐ」
「…」
しかし世理が聞いているのにも関わらず、葵は無表情で一心不乱にハンバーグを食べ続けていた。
食べてくれてるって事は、食えない程の味ではなかったって事だよな?
世理は疑問に思いながらも、ハンバーグを頬張る葵の様子を伺いながら食事を口に運ぶ。
「…うん。美味い」
中に入ったチーズと、肉汁が絡み合って芳醇な匂いが鼻から抜けていく。付け合わせに作ったポテトサラダも口直しに最適だ。
俺はふと葵の方を見る。
「…まぁ、ママよりは美味しくなかったですけど…悪くはなかったです」
少し目を話した隙に、葵の皿の上にはもうハンバーグが置いてなく完食していた。
「もう食べたのか…?」
「ち、小さかったんですよ!」
葵は恥ずかしそうにそっぽを向いて答える。
…俺の拳大ぐらいの大きさはあったと思うんだけど、まぁ、流石は高校生って所か。
「まぁ、安心しろよ。もう明後日にも茜さんのハンバーグを食べれるからな」
「そうですね、やっと貴方との生活も終わりです」
葵のその顔には少しの安堵と、嬉しさが混じり合っている様な表情をしていた。
(まぁこの1週間、義兄になったとは言え初対面の男と長い間一緒に生活してんだ。俺と違った気苦労が色々あったかもしれない)
葵の事を考え、少し気まずくなった俺は徐ろにテレビの電源をつける。
『次のニュースです』
ん?
『海外では新型のウイルスが流行しています。その感染力は恐ろしく、今や死者は何千人となっている模様です』
…ほう。
『その為政府は、日本への入国に規制を掛ける方針です』
「「……え?」」
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