久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

文字の大きさ
10 / 49
第2章 別に…

第10話 箱の様子が…

しおりを挟む
「…はっ!?」

 や、やばい! 寝込んでしまっていた! 

 夜の8時半。正座の体勢で目を覚ます。

 うっ!! あー…この痛み久々だわー…。

 痛みで悲鳴を上げている身体の筋肉を伸ばしながら、立ち上がる。

 世理はその人当たりの良さ、どんな時に頼んでも来てくれると言う理由でモデルとしてよく駆り出されていた。

 報酬はちゃんと出るし、人脈は作れるしで悪くないけど…こんなに疲れるのはな~…大学にいる時はもっと上手くデッサンのモデルを出来てたと思うけど…にぶったか?

 首を伸ばす様に顔を晒し、目を開ける。

 すると、そこには…

「な、なんでしょうか…」
「別に…」

 階段で膝を抱えて、此方を見ている葵がいた。

 何故そこにいる…? そして何故此方をジッと見ている?

 葵の今の姿はまるで像。置かれた像が、俺が動くたびに一緒に視線だけを動かす。

「あ、そうだ。忘れてた。これを受け取ってくれ!」

 俺は葵にもう一度箱を差し出す。

 何故かその箱は先程持った箱よりも軽い気がした。だが、折角那由さんにアドバイスを貰ったのだ。上手くいく筈だ。

『女の子が好きな物と言えばぬいぐるみでしょ。見てても可愛いし、抱いても癒される』
『え? ぬいぐるみでいいんですか?』
『この那由様を信じなさい!』

 と言われて買ったが…少し子供っぽ過ぎはしないか?

 世理は少し首を傾げる。

 世理は実は大事な事を忘れていた。那由に対し、『妹のパンツを掴んでいるところを見られて怒られた』と言った。しかしこれだけでは、やった事は分かっても義妹の年齢が分からないのだ。

 那由は勘違いをした。妹は小学生の様な子供だと。

 その事を世理は幸か不幸か、まだ知らない。

「そのだな…これで許してくれとは言わない。俺がお前に好きそうかもしれない物を買ってきている訳だし、気に入らなければ貰わなくて構わない。…その、なんだ、箱の中身を見るぐらいはしてくれないか?」

 俺は一抹の希望を胸に頭を下げる。

「……」

 何も返事は返ってこない。しかし、足音が近づいている事が分かった。そして足音が近くで止まる。

「……調子に乗らないでください」
「は?」

 いきなり罵倒され、葵はリビングの方へと行ってしまった。

 何もそこまで言わなくても良くないか? 俺だって店で店員に照れながらも「可愛いぬいぐるみとかないですか?」って聞いたんだぞ。少しでも見てくれても…あれ?

 そこで世理はある事に気づく。

 店員には店で箱の飾り付けもお願いした。綺麗にラッピングしてもらって此処まで持ってきた筈だ。

 しかし、所々に付いてた飾り付けがズレている。物作りをしてきたお陰だろうか、世理の観察眼は他の人よりも倍は鋭く、その事に気づいた。

「何で…」

 箱を床に置き、ゆっくりと箱を開ける。

「え! 何で箱の中身が!?」

 ガタガタガタッ!!

 箱の中身は空っぽだった。

 リビングの方から何か物音がしたが、今はそれどころじゃない。

 まさかラッピングの時に入れるのを忘れてしまったのか? いや、そんな事あるか? 此処まで持ってくる時は確かに中に物が入ってる感じがあった。葵が帰ってきた時も同様だ。

 何故ないのか…まさか俺が寝てた時に誰かが盗った? いや、それこそまさかだろ。

 玄関の扉は鍵が閉まっていた。家の中に居たのは、葵と、その友達の2人だけ。

 …とりあえずは店に電話しとくか。

 俺は箱を持って立ち上がり、リビングへと向かう。

 入ると、葵はキッチンで料理の準備をしていた。俺が作って少しでも距離を縮めようと思ったが、今回は仕方ないな。

 俺は箱をリビングの隅に置くと、スマホを取り出す。

 タン タン タン…

「…あ、もしもし? あの先程そちらで買い物をした者なんですけど、どうやら箱の中身に商品が入ってなかったみた

 ガッ!!

「え?」

 突然スマホが俺の手から消える。

「う! うるさいので電話は切ってください!!」

 何故か俺の横には葵がエプロン姿で立っており、眉尻を吊り上げ、此方を息切れしながら見ていた。

 タン

 電話が葵の手によって切られる。

「えー…っと」

 さっきまでキッチンに居たのに何で此処に? とか、そんなうるさかったかな? とか色々思う所はあったが、この言葉が自然と出た。

「どうしたの?」

 そう言うと、葵の顔がドンドンとトマトの様に赤く染まる。

 そして口を開けては閉じ、此方を見ては晒しを繰り返す。

 な、何だ? 本当にどうしたんだ?

 俺が心配して手を伸ばすと、それを葵に叩かれる。

「…触らないで貰っていいですか。それよりも、ご飯を食べるなら貴方も手伝って下さい」

 プイッと顔を背け、キッチンへと歩いていく葵。

 ……何を考えているのか分からない。世界中の兄もこんなに困っているのか?

 困惑しながら世理は葵の後を追った。



「今日は何を作るんだ?」
「テキトーにパスタで。早く出来ますし」

 葵の前には乱雑に色々な材料が置かれている。

「…何を作るんだ?」
「だからパスタですよ。何回も言わせないで下さい」

 そう言って俺は口をつぐむ。そして葵は鍋に水を入れていく。

 そのパスタの中でも何を作りたかったのか聞きたかったのだが…まぁ良いか。

 俺はとりあえず、材料の中にあったベーコンを細かく切って行った。その途中にチラチラと葵の方を盗み見る。

 あぁ…なるほど。

 世理は葵の手元にある材料を見て、メニューを理解し、手際良く下準備を整えていく。

「…手際良いですね」
「ん? …あぁ、一応1人暮らししてたしな」
「ロンドンでしたっけ?」
「あぁ、そうそう」

 2人の会話が繋がる。

 何だ、結構話してくれるじゃん。

 俺と葵は少し、自己紹介の様な話を交えながら料理を続けた。



「出来たな」
「いただきます」

 テーブルの上には普通のカルボナーラが出来ていた。最初は材料が乱雑に置かれていたが、葵が本当にテキトーに冷蔵庫から出した物らしかった。詳しくは聞いてないが…。

「そう言えば今日来てた女の子、名前なんて言うんだ?」
「環です。…なんですか。もしかして狙ってるんですか?」

 ギロリという効果音が付くかのように此方を睨む。

「いや! 違うって! でも、その…俺が葵にって買って来た箱の中身が無くなってたんだ。だから、もし、何か知っている様なら話を聞いといてくれないか?」
「もしかして…私の友達が盗ったって言いたいんですか…?」
「いや、その、一応だよ。だって他に家に居た人は
「しょうがないですね! 一応! 一応聞いておきます!!」

 葵はそう言うと、急いで料理を口に頬張った。

 その頬をパンパンにさせながら此方を見ている姿に俺は笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...