久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

文字の大きさ
6 / 49
第1章 最低です

第6話 暴虐姫

しおりを挟む
 タン

 世理はスマホの画面をタップし、耳に当てる。

「もしもし」
『おー! 世理! 身長伸びたか?』
「2年越しの電話でどんな事聞いてんだクソ親父。成人してるんだからそんな変わんないに決まってんだろ」

 それは再婚した事を俺に伝えていなかったクソ親父からの電話だった。

『ハッハッハッハッハッ! そんな大きくなる訳ないか!』
「誰かさんの所為で俺の器の大きさは今も成長中だよ」
『おー! 良い事だな!』

 高らかに笑い声を上げる親父。

 親父は俺と正反対の、メンタル激強陽キャ男。皮肉は通じない。

「それより親父がわざわざ電話かけて来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
『ん? 特に用はない。元気でやってるかどうかの確認だ』
「…」
『どうした?』
「俺はいつでも元気だよ、用ないなら切るぞー」
『冷たっ!? 久々の親との会話がこれで良いのか!?』
「そう思うなら最初に身長の話なんかすんな、じゃあなー」
『ちょちょちょちょちょ!!』

 そこで大きな声が電話から鳴り響く。

「……早く要件言えよ」

 世理はうんざりと、眉を顰めながら電話を続ける。

『ハハッ、その…あー…葵ちゃんとは上手くやってるか?』

 親父は葵との関係を世理に聞いて来た。

「…普通だけど」
『…そうか。なら良いんだが…少し心配でな。いきなり家族って言われても受け入れ難いってのは分かってる…。もし何かあったらすぐ連絡しろよ! すぐ駆けつけるからな!!』

 アホか、受け入れ難いのは親父が連絡して来なかった所為だろ。マジ、鼻とか詰まれ。

「別に何もないって」

 俺は親父に鼻の詰まる呪いを掛けながら、無難に答える。

『そうか。あ、因みに葵ちゃんが可愛いからって手を出す時は同意を得てか

 タンッ

 「はぁ」

 親父は俺の前でよく笑う。

 そしてある時気づいた。親父が唐突に笑う時は何か気まずい時、何かを隠してる時。

 俺を心配してる時。

「……不器用過ぎなんだよ、親父は」

 大きく溜息を吐いた後、世理は部屋から出て、玄関で靴を履き外へ出た。





「はぁ…」

 葵は1人、教室の自分の席で頬杖をつき、窓の外を見ていた。

 今は昼休み。皆、ご飯を食べながら談笑している。しかし、葵の近くには誰一人近寄らない。

 何故か。

 何で朝からあんな目に遭わないと行けないの…。

 葵は朝の事を引きずっており、顔がずっと顰めっ面だった。

 寝ぼけていたとはいえ、あの様な無防備な姿をアイツに見せてしまった。朝早いからどうせ起きてないだろうと油断していた。

 最悪だ。

「葵ー! ご飯食べよー!」
「環…」

 そんな事を思っていると、いつも通り元気な環が机と椅子を移動させながら近づいて来る。

 私の対面に位置取ると、机と椅子を置き、私と目を合わせる。

「ふーむ…まさか昼までこの調子とは…」

 環は口に手を当てて、訝しげな顔で葵を見つめる。

「だから言ったでしょ…色々あったの」
「その色々が聞きたいんだけどなぁ~…相談に乗るよ?」

 環がニヤニヤと私の顔を覗き込む。

「………分かった。あのね…」

 私は昨日、再婚相手に義兄がいた事等、その他諸々を話した。

「へぇ~、良いじゃん! お兄ちゃんが出来たんでしょ? 2人だと何かと安心じゃない?」
「何言ってるの!? あの変態…! わ、私のむむむ、胸に…!!」
「ちょ、ちょっと葵! 声でかいよ!」
「あ…」

 葵は周りを見渡す。

 普段、葵は大声を出さない為か、教室中の人が此方を見て目を丸くしている。

「あ、あぅ…」

 葵は顔を赤く染めると、ゆっくりと俯く。

「おい、見たか今」
「"暴虐姫"が大声出したぞ」
「入学して初めて見た」
「顔赤らめてるぞ…レアだ」
「めっちゃ写真撮りてぇ」
「やめとけ、マジで死ぬぞ」

 周りからヒソヒソと声が聞こえて来る。

 私のあだ名である"暴虐姫"という名も出てきてしまった。嫌になる…

 暴虐姫。

 冷たく、無表情。しつこく付き纏う者には容赦なく手をあげる。

 入学当初、私は1日に1回は告白をされる程、モテていた。告白だけなら断ればいいだけだから別に良い。

 面倒くさいけど。

 でもそれが段々エスカレートして最終的には断った後、手を掴まれた。無理矢理にでも付き合おうとしてきた頭がおかしい奴がいたのだ。

 その時からだ。私が暴虐姫と呼ばれる様になったのは。

 私はその男の大事な所を蹴り上げ、顎にアッパーをかまし、最後に胸ぐらを掴んで頭突きをしてしまった。

 咄嗟にやってしまった事だったとはいえ、少し後悔している。

 今では1週間に1回のペースに告白は減っている…

 それでもまだ面倒臭い。

 私は告白されて見ず知らずの男と付き合う気はない。少し話しただけで仲良くなった気がしている男子も同じだ。

 私の容姿だけを見てる…ハッキリ言ってそう言う男は信用ならない。

 「もう少し殴っておけば、告白なくなったのかなぁ」

 葵はボソッと呟く。

「怖い事言わないでよ…で? 変態って?」

 環が私の様子を伺いながら聞く。

「実は今日の朝…」

「ハハハハハッ!!」
「ちょっと笑い過ぎだよ!?」

 2人の話は昼休みが終わるまで続いた。





「あれ? 世理くん? こんな所で何してんの?」
「……那由《なゆ》さん?」

 葵達が授業を受けている途中、世理は商店街に向かっている時にある人と出会っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...