振り向けば君がいた

和之

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第十五話

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 二日目のキャンプ場はテント張りで、道中から買い込んだ食べ物で、野外パーティと花火だった。尚子さんと橋場さんの車は同乗者が入れ替わっても、深山の車はいつも同じメンバーだった。だから運転の深山より自然に野村と希美子は駄洒落を言ったりふざけ合う事が増えたが、友だち以上にはなれなかった。深山も笑って見ていた。やはり車から降りると野村は他の者の中に入り、深山と希美子は常に一緒だったと云うより、付かず離れずの表現が当てはまった。
 信州の高原では照明が皆無で野外のテントでは明るい内に食事を済ませる。陽が落ちればする事も無く、みんなはキャンプファイアーの炎が下火になればそれまでで早く寝た。
 三日目はまた旅館に泊まれた。睦夫さんは時々麻雀の役を聞かれて座がしらけるから今日はずっと尚子さんが勤めた。ここも娯楽室には卓球台はひとつしか無かったからあとの三人は部屋でトランプになった。
 残りの卓球組は希美子とトヨちゃん、睦夫と野村でミスする度に一人ずつの交代で残り二人が座って待っていた。トヨちゃんと希美子の二人が巧いから男二人が待つ時間が多かった。二人とも上手いから面白くないですねと言う野村に、睦夫は二人とも相手の打ちやすいとこへ打ってるなあと言った。よく見ればなるほどわしらのは自分勝手に打ってるから続かへんのやなぁ。
「ところで野村くんはあの二人の車にずっと乗ってて面白か?」
「何でまた」
 どうも睦夫さんは締め出されないかと本気で案じているようだった。
「そやからお邪魔虫にならへんかいなぁ心配してな代わってやってもええで」
「そんな気を使わんでもええよ」
「そうよ睦夫さん結構愉しくやってるからねぇ野村くんとは」
 希美子がラケットで打ちながら言った。希美ちゃん余裕やねぇとトヨちゃんが答えている。
「うん、面白いよ」
「お前はええけど深山さんが気の毒やろ」
「睦夫さんそうでもないのよお陰で深山さん運転に集中出来て大助かりみたいよ」希美子が言った。                  
「だって橋場さんの車も尚子さんの車もうちら騒いでいてもたまにしか一緒に喋らへんから我慢して聞き役で運転してはるやん」トヨ子が言った。
「あの二人は運転に集中出来るわいな、問題は希美ちゃんとこやで」
 睦夫さんはイヤに絡んで来る。
「あら、どこが問題なのねぇ野村くん」
「希美ちゃん偉い割り切るんやなあ」
「そんなこと無いわよねぇトヨちゃんの方が割り切ってる」
「お姉さん何でうちとこへ持って来るの」
「ちょっとトヨちゃんそのお姉さん止めてくれる歳そんなに変わらないのに」
「野村さんにしたらお姉さんやわなぁ」
「分かったわ、じゃあ慎二さんだからしんちゃんにしょうかしら」
「何かクレヨンみたいでイヤですね」
「どっちでもええがなぁ今までの通りにしとき」睦夫が言った。
「そうよお姉さん」
「もうトヨちゃん!」と彼女は思い切り打ち込んだ。トヨちゃんは見事に打ち返して希美子は打ち損じた。
「ハイ、交代交代、次」
 とトヨちゃんは意気揚々とラケットで顔を扇いだ。
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