20 / 83
第十五話
しおりを挟む
(15)
二日目のキャンプ場はテント張りで、道中から買い込んだ食べ物で、野外パーティと花火だった。尚子さんと橋場さんの車は同乗者が入れ替わっても、深山の車はいつも同じメンバーだった。だから運転の深山より自然に野村と希美子は駄洒落を言ったりふざけ合う事が増えたが、友だち以上にはなれなかった。深山も笑って見ていた。やはり車から降りると野村は他の者の中に入り、深山と希美子は常に一緒だったと云うより、付かず離れずの表現が当てはまった。
信州の高原では照明が皆無で野外のテントでは明るい内に食事を済ませる。陽が落ちればする事も無く、みんなはキャンプファイアーの炎が下火になればそれまでで早く寝た。
三日目はまた旅館に泊まれた。睦夫さんは時々麻雀の役を聞かれて座がしらけるから今日はずっと尚子さんが勤めた。ここも娯楽室には卓球台はひとつしか無かったからあとの三人は部屋でトランプになった。
残りの卓球組は希美子とトヨちゃん、睦夫と野村でミスする度に一人ずつの交代で残り二人が座って待っていた。トヨちゃんと希美子の二人が巧いから男二人が待つ時間が多かった。二人とも上手いから面白くないですねと言う野村に、睦夫は二人とも相手の打ちやすいとこへ打ってるなあと言った。よく見ればなるほどわしらのは自分勝手に打ってるから続かへんのやなぁ。
「ところで野村くんはあの二人の車にずっと乗ってて面白か?」
「何でまた」
どうも睦夫さんは締め出されないかと本気で案じているようだった。
「そやからお邪魔虫にならへんかいなぁ心配してな代わってやってもええで」
「そんな気を使わんでもええよ」
「そうよ睦夫さん結構愉しくやってるからねぇ野村くんとは」
希美子がラケットで打ちながら言った。希美ちゃん余裕やねぇとトヨちゃんが答えている。
「うん、面白いよ」
「お前はええけど深山さんが気の毒やろ」
「睦夫さんそうでもないのよお陰で深山さん運転に集中出来て大助かりみたいよ」希美子が言った。
「だって橋場さんの車も尚子さんの車もうちら騒いでいてもたまにしか一緒に喋らへんから我慢して聞き役で運転してはるやん」トヨ子が言った。
「あの二人は運転に集中出来るわいな、問題は希美ちゃんとこやで」
睦夫さんはイヤに絡んで来る。
「あら、どこが問題なのねぇ野村くん」
「希美ちゃん偉い割り切るんやなあ」
「そんなこと無いわよねぇトヨちゃんの方が割り切ってる」
「お姉さん何でうちとこへ持って来るの」
「ちょっとトヨちゃんそのお姉さん止めてくれる歳そんなに変わらないのに」
「野村さんにしたらお姉さんやわなぁ」
「分かったわ、じゃあ慎二さんだからしんちゃんにしょうかしら」
「何かクレヨンみたいでイヤですね」
「どっちでもええがなぁ今までの通りにしとき」睦夫が言った。
「そうよお姉さん」
「もうトヨちゃん!」と彼女は思い切り打ち込んだ。トヨちゃんは見事に打ち返して希美子は打ち損じた。
「ハイ、交代交代、次」
とトヨちゃんは意気揚々とラケットで顔を扇いだ。
二日目のキャンプ場はテント張りで、道中から買い込んだ食べ物で、野外パーティと花火だった。尚子さんと橋場さんの車は同乗者が入れ替わっても、深山の車はいつも同じメンバーだった。だから運転の深山より自然に野村と希美子は駄洒落を言ったりふざけ合う事が増えたが、友だち以上にはなれなかった。深山も笑って見ていた。やはり車から降りると野村は他の者の中に入り、深山と希美子は常に一緒だったと云うより、付かず離れずの表現が当てはまった。
信州の高原では照明が皆無で野外のテントでは明るい内に食事を済ませる。陽が落ちればする事も無く、みんなはキャンプファイアーの炎が下火になればそれまでで早く寝た。
三日目はまた旅館に泊まれた。睦夫さんは時々麻雀の役を聞かれて座がしらけるから今日はずっと尚子さんが勤めた。ここも娯楽室には卓球台はひとつしか無かったからあとの三人は部屋でトランプになった。
残りの卓球組は希美子とトヨちゃん、睦夫と野村でミスする度に一人ずつの交代で残り二人が座って待っていた。トヨちゃんと希美子の二人が巧いから男二人が待つ時間が多かった。二人とも上手いから面白くないですねと言う野村に、睦夫は二人とも相手の打ちやすいとこへ打ってるなあと言った。よく見ればなるほどわしらのは自分勝手に打ってるから続かへんのやなぁ。
「ところで野村くんはあの二人の車にずっと乗ってて面白か?」
「何でまた」
どうも睦夫さんは締め出されないかと本気で案じているようだった。
「そやからお邪魔虫にならへんかいなぁ心配してな代わってやってもええで」
「そんな気を使わんでもええよ」
「そうよ睦夫さん結構愉しくやってるからねぇ野村くんとは」
希美子がラケットで打ちながら言った。希美ちゃん余裕やねぇとトヨちゃんが答えている。
「うん、面白いよ」
「お前はええけど深山さんが気の毒やろ」
「睦夫さんそうでもないのよお陰で深山さん運転に集中出来て大助かりみたいよ」希美子が言った。
「だって橋場さんの車も尚子さんの車もうちら騒いでいてもたまにしか一緒に喋らへんから我慢して聞き役で運転してはるやん」トヨ子が言った。
「あの二人は運転に集中出来るわいな、問題は希美ちゃんとこやで」
睦夫さんはイヤに絡んで来る。
「あら、どこが問題なのねぇ野村くん」
「希美ちゃん偉い割り切るんやなあ」
「そんなこと無いわよねぇトヨちゃんの方が割り切ってる」
「お姉さん何でうちとこへ持って来るの」
「ちょっとトヨちゃんそのお姉さん止めてくれる歳そんなに変わらないのに」
「野村さんにしたらお姉さんやわなぁ」
「分かったわ、じゃあ慎二さんだからしんちゃんにしょうかしら」
「何かクレヨンみたいでイヤですね」
「どっちでもええがなぁ今までの通りにしとき」睦夫が言った。
「そうよお姉さん」
「もうトヨちゃん!」と彼女は思い切り打ち込んだ。トヨちゃんは見事に打ち返して希美子は打ち損じた。
「ハイ、交代交代、次」
とトヨちゃんは意気揚々とラケットで顔を扇いだ。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる