辿り着けない世界

和之

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転機は来るか1

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 街角広場を出てこのまま駅から電車で帰ろうとすると、典子さんは真由ちゃんとあの頃にもう少し浸りたい、と言い出して広場に残った。高村と坂部は改札を抜けて、ホームに立って暫く二人は電車を待った。
「おい高村」
「何だ」
「俺は付き合ったから約束の話を聞こう」
「何の話だ」
「惚けるな! 典子さんの子供にどうして四代目の名前を祖父は付けたんだ」
「それだが、和久井に上手くかわされた」
「どう云う事だ。話がチグハグで何を言ってるんだ」
「典子を取り込んだ一件であいつの邪《よこし》な面を曝け出せは典子は不快に思う。それを俺とお前で和久井に一泡吹かして、典子の面目の立つようにしたなら彼女は取り込み易い。そうなれば彼女もお前の知りたい一件も、アッサリと言えるが、今のまま言えば典子は家を飛び出すかもしれない」
「そんなに事実は、複雑に絡み合ってるのか」
「今の処は何とも言えん」
 ホームに立つ二人を取り込むように、列車は風を巻き上げて入って来た。随分と荒っぽい運転だなあ。つむじ風は列車が巻き上げたのでなく自然現象だ。
「どっちにしてもホコリが入って目が痛くなった」
「素直じゃないからだよ」
「そりゃあ無理だろう。姉貴ならその場でひと揉めして、あとは怒り散らして終わるが、典子の場合はこっちは末代までも祟られるからなあ」
 末代は余計でも当分は口もきけないだろう。高村家の同じ屋根の下では無理でも、彼奴《あいつ》は夏休みが終わるまでに、あの学生マンションへ戻れば良いが、今の坂部にはそうはいかない。美紗和さんと遠距離恋愛するにも、此処でもう少し粘る必要があった。一人でも此の家の者にそっぽを向かれてはもう居候は出来ない。此処は慎重な高村を擁護しつつ、改めて突破口を切り開く必要性に迫られた。






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