辿り着けない世界

和之

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交渉3

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「だから手に入らない貴重な茶碗が贋作で格安で手に入る。若い子が舶来のバックを求めるように、茶の湯を嗜む人が利休好みの茶碗で飲めるから贋作でも一向に構わないはずだ」
 要するにそう謂う見栄の張った人の求めに応じて、利休の真髄を味わってもらう試みと受け取って欲しい。
「それが和久井の真の狙いか、そこに一点の曇りもないか」
「ただの橋渡しをした典子さんや真由さんはどうだろう。納得出来てますか?」
 本当に天下の名だたる名器に似せた骨董品を贋作と称しても、これは買う人が居るから売るという行為は売春に似てないか。あっちは快楽だけれど、こちらも貴重な品を手に持った優越感を買うのだろう。
「いかに贋作とは謂え、それ程の価値は有あるのか。俺には年代物の骨董品を見てもその良し悪しは解らない。今、和久井が言ったように彼女が持って来た物はそれほどいいのか」
「兄貴は会社の経営や商売の仕方を祖父から教わったが、俺にはそんな物は一切話さず小さいときから祖父は何か催し物や展示があると俺を連れて色々な場所で、様々な貴重な美術品や古書や骨董品を眺め、値と特長を祖父は意義と感触まで手に取るように教えられて育って、奈良の正倉院に秘蔵されてる物以外は大方は見分けられる」
 いやに大きく出たが、ひと癖ありで、何を吹っ掛けられるか解らない和久井の前なら、それぐらいのほらを吹いておけば先行の不安はないだろう。
「しかし、それだけの腕があれば、自らの作品として世に問えばどうだろう」
 と突き放せば。
「でも無名では、先ずは知名度を上げないと目に留まらないでしょう。そうして口コミで広まれば打って出られるし、その第一歩をお願いしたいの」                   
 と今までの強引な押し売り経過から、彼女は珍しく随分と控え目に出て再考を求めた。       











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