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祖父の臨終2
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「それで思うんですけれど、さっき茶室でおばあちゃんから聞けなかった話が出来るでしょう」
なるほど、これがさっき千里さんが言っていた筒抜けって言う奴か。
「でも肝心な典子さんに関しては全て美津枝さんが押さえているみたいよ」
「そうか、ところで美紗和さんお茶は?」
「そんなの遣るわけないでしょう」
「どうして」
「そんな辛気くさいのは苦手なのよね」
此処が千里さんの言《ゆ》う大雑把でサッパリした処か。
「それは此の家の古臭い仕来りが合わないからか」
「まあそれもあるけれど、基本的には女性には押し付けられる事はない。要するに長男だけが押し付けられる。だから姉妹にはかなり自由奔放なの、長男のお嫁さん以外はね」
「そうですか? 千里さんを見ているとそれはあまり当てはまらない気がするけど……」
「遺訓なんて跡取りの長男が居なければ続けられないのよ。昔と違って一人の女性しか居なければね。まあ、昔の大名のように多くの側室が居れば話は別だけれど、直系で三代も続けばしょうがないかと祖父の利恒さんは何処かで見切りを付けたのかも知れないわね」
「それは本当ですか」
「あたしが高校生の時にはそんな噂も影で囁かれていたみたい。でも四代目の利貞ちゃんが生まれるとおじいちゃんはガラッと人が変わったみたいにまた頑張りだしたの」
「その矢先に亡くなれば本人にすれば死んでも死にきれないほど悔やまれるのに動脈硬化で心不全なんて、なんでもっと摂生をしなかったんだろう。でも突然すぎる死ですね」
「そうね、倒れてからその晩には亡くなったのですから余りにも呆気なく過ぎた。特に大事な局面だけに周りからも同情の声も上がったけれど病気でも癌でもなく七十そこそこで死ぬなんて、まあ考えられないわね。それは裕介もよく言ってた」
「原因が判らなければ落ち着く処は脳梗塞から来る心不全なんて、何処にでもある死亡診断書でしょ」
前兆がなくて急に倒れれば病名なんて後から何とでも付けられる。そう考えればキリがなかった。
なるほど、これがさっき千里さんが言っていた筒抜けって言う奴か。
「でも肝心な典子さんに関しては全て美津枝さんが押さえているみたいよ」
「そうか、ところで美紗和さんお茶は?」
「そんなの遣るわけないでしょう」
「どうして」
「そんな辛気くさいのは苦手なのよね」
此処が千里さんの言《ゆ》う大雑把でサッパリした処か。
「それは此の家の古臭い仕来りが合わないからか」
「まあそれもあるけれど、基本的には女性には押し付けられる事はない。要するに長男だけが押し付けられる。だから姉妹にはかなり自由奔放なの、長男のお嫁さん以外はね」
「そうですか? 千里さんを見ているとそれはあまり当てはまらない気がするけど……」
「遺訓なんて跡取りの長男が居なければ続けられないのよ。昔と違って一人の女性しか居なければね。まあ、昔の大名のように多くの側室が居れば話は別だけれど、直系で三代も続けばしょうがないかと祖父の利恒さんは何処かで見切りを付けたのかも知れないわね」
「それは本当ですか」
「あたしが高校生の時にはそんな噂も影で囁かれていたみたい。でも四代目の利貞ちゃんが生まれるとおじいちゃんはガラッと人が変わったみたいにまた頑張りだしたの」
「その矢先に亡くなれば本人にすれば死んでも死にきれないほど悔やまれるのに動脈硬化で心不全なんて、なんでもっと摂生をしなかったんだろう。でも突然すぎる死ですね」
「そうね、倒れてからその晩には亡くなったのですから余りにも呆気なく過ぎた。特に大事な局面だけに周りからも同情の声も上がったけれど病気でも癌でもなく七十そこそこで死ぬなんて、まあ考えられないわね。それは裕介もよく言ってた」
「原因が判らなければ落ち着く処は脳梗塞から来る心不全なんて、何処にでもある死亡診断書でしょ」
前兆がなくて急に倒れれば病名なんて後から何とでも付けられる。そう考えればキリがなかった。
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