辿り着けない世界

和之

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名付け親は誰だ2

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「それは止めた方がいいでしょうね」
「どうしてだ」
「克之さんは裕介さんにはのんびりと勉強に精を出して欲しいそうですから」
「そこだがなあ、兄貴の子共は女の子だろう。大きくなれば嫁に出すんだろう」
「そこですよ、二代続いた出戻りだけはどうしても避けたいようですよ。まあまだだいぶ先の話ですからね」
「でも男の子が出来なければ典子さんの子供が跡を継ぐんですか」
「先代はそれも考えているんだろう」
「なんせ先代のお兄さんが継いだ事業を先代が言い方は悪いですが取ってしまったんですから、それだけはいつも気にしていました」
「そうなるとオイ高村、典子さんの子供は何て言うんだ」
「そんなもん知るわけないだろう」
「同じ家に住んでいるんだろう」
「ずっと離れに居て、やっと歩き出した頃に俺は京都へ来たから殆ど顔も知らない」
「何て奴だ」
「生まれたての、しかも訳ありの子供なんて歩けない内は関わりたくないんでしょう」
「そんなもんですか、それで典子さんの子供は何て言うですか」
「利貞《としさだ》です」
「エッ、まさかと思うんですが」
 と二人は顔を見合わせた。
「今二人が思ったとおり越前大野藩四代目藩主の名前です」
「そう言えばおやじは確かに七代目藩主の利忠だが、何故俺や兄貴には付けなかったんだ」
「それには社長の利忠さんが学校で苦労したから。それは止めてくれと頼み込んだそうです」
「それをのりちゃんは知らずに付けたんだろうか?」
「本人が付けたんですか ?」
「多分先代の影響でしょうか」
「おじいちゃんの影響力? 何だそれは」
「明治維新までの高村家では普通の名前でしたが、明治の廃藩置県で高村家の当主は次の息子に初代藩主である利房《としふさ》の名前を付けました。此の人が裕介さんの高祖父です。曾祖父は二代目藩主に当たる利知《としとも》、その長男になる人が三代目に当たる利寛《としひろ》で、次男には最後の藩主八代目に当たる利恒《としつね》をつけたんです」




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