辿り着けない世界

和之

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合格発表2

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「途中で乗客がすっかり入れ替わるなんて此処は凄い街だなあ、普通は段々減っていって最後はのんびり出来るのに」
 と言われて同感だった。それを察したように高村は、ひょっとして地方からかと聞かれて頷いた。するとそこでまた福井県だと出身地を言われて、まだ受験結果も判らないのに坂部も若狭だと、云わなくても良いのに言ってしまった。これで二人とも不合格なら問題ないが、いやこの場以外では大問題だが、どう見ても高村の余裕に蹴落とされそうだ。
 それでも受験生の二人は、郷里の田舎と違って、朝からの此の人の混み具合には眼を丸くしていた。目的の大学に近付いたが、乗り降りが激しくてバスの中は一向に空いてこない。この頃には始発から一緒に座っていた二人も、どうやら同じ目的地に向かっていると悟ったようだ。その決定的瞬間が、バスの車内から流れた停車名で二人は此処で、ほぼ同時に降車ボタンに手が重なった。そこで二人は顔を見合わせて苦笑いしたが、次の試練は最後部の座席から一番前の降り口まで、どうやって行くかとまた二人は見合わせた。
「合格発表の前にこんな試練が待ち受けているのか」
 と坂部は、何だこれはまだ大学の合否を知るだけなのにと、此の難関に悲観した。
「ものは思いようですよ、都会生活の洗礼だと思えばいいでしょう」
 まだ合否の判らぬうちからこんな洗礼は受けたくない、と坂部は更に身構えてしまった。
「とにかく此の狭い通路を突破しましょう」
「そうだなあー、汝狭き門より挑めと云うからなあ」
 これには高村も、気の利いた坂部の言葉に、彼を見直したように眼を丸くした。
「とにかく私が突破口を切り拓きますからしっかり付いてきて下さい」
 とインテリにしては頼もしい事を云ってくれるとスッカリ気を良くした。


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