愛情不信聖女と魔術ばか王子のまったり研究ライフ

ゆるゆる堂

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第7話 アイラは人間不信になっているようで

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 宿泊する用の部屋にも案内するねとリリーとミィが連れていってから、のこった四人はううん、と唸った。

「あれは、…なかなかだなぁ」

 そう呟いたのはトール。ヴィックが頷く。

「ざっくり話は聞いてたけど、完全に人間不信になってるよね」
「…優しくされると、自分が魅了をかけていしまってるんじゃないかと疑い不安になる、という流れが、彼女のなかで出来上がってるのですね」

 ビアンカは眉を寄せた。

「魅了が発動したのが十三歳、現在の彼女が十七歳だから、四年間か。必死に自分のせいじゃないと言い聞かせて耐えてきたんだよねぇ。なのに結局「自分が魅了をかけていた」という事実が発覚したんだもん。彼女の人格を歪ませるには十分すぎる条件だよね」

 アルトもぐっと眉を寄せて唸った。

「彼女のためにも、あとは研究のためにも、彼女の心のケアもしていきたいけど…。ぼくらそう言うの苦手なんだよなぁ…」

 今回選ばれたメンバーに人を思いやるという心がないわけではないが、知的探究心が人より強く、そこに思考を引っ張られがちである、という自覚はそれぞれにある。
 アルト自身もそうだ。

「魔封じの加護をもったカウンセラーとかか?」
「そんなのいる?」

 トールの提案に、ヴィックが突っ込む。
 魔封じの加護自体、それほどメジャーな加護じゃない。
 研究室には七人いるが、これは研究室が発足してからの歴史の中でもかなり異常な数だ。
 大体、一世代に二人から三人いえばいい方で、一人もいないという時期もあった。そして、魔法に直結する加護を持つ者はほとんどが魔法の才も同時に持つため、魔法庁の所属になることが多い。

「うーん…、どうしたらいいのかな」
「どうもしなくていいと思うよ」

 首を横に倒しながら唸ったアルトに、後ろからリリーが言った。

「リリー、帰ってきたんだ。あれ、アイラは?」
「アイラちゃんには先に休んでもらったわ。顔色もよくなかったし」

 内側から部屋の鍵かけられるからねって言ったら「え?」って返されちゃった、とミィが苦笑する。

「で、どうもしなくていいってどう言う意味だよ、リリー」
「そのままの意味だよ、トール。彼女、多分実験素材扱いくらいのほうが心地いいと思うんだよねー」

 物扱いしたほうがいい、というリリーの言葉に、ミィ以外が眉を寄せた。

「でも、それは流石に…」
「優しい言葉が怖いんですって」

 ヴィックの言葉をミィが遮る。言葉をつづけたのはリリーだ。

「初めはみんなそうだったって言ってたよ、聖女ちゃん。穏やかな好意、優しい言葉から始まって、そのうちに自分の言葉が相手に全く届かなくなるんだって。自分のことを好きだ、愛してるって言う人間に囲まれてるのに、自分の意見は丸無視されるってそれもう、どんなホラー体験って話だよねぇ」

 想像するしかできないその体験は、確かにホラーと言えるようなものだ。

「だからさ、僕らはいつもの僕ら。魔法が好きで、それを探求することに余念がない僕らのままでいたほうがいいと思うんだよね」

 アルトは、そっかぁ、そうだね…と呟き、ビアンカは唇をきゅっと閉じる。
 もちろん、今のアイラが演技で、故意に魅力を使っていた可能性はゼロではない。だから、魔封じの加護を持っている人間しか関われないし、魔封じを施された部屋からは出られないようにする。

 けれど。

「はやく、魅了魔法について、調べてあげなきゃね」

 たぶん、興味からだけではなく、アルトはそう呟いた。
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