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〈61〉光の天使
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おかしい、なによこれ!?
バグにしても酷すぎるでしょ!!
そんな事を思いながら桃子が顔をあげると、不意に黄色い小さな玉が飛んできた。
思わず伸ばした手の中にパチリと収まって、豆電球のような小さな光が浮かび上がる。
「これって……」
「えぇ、天使の祭礼に使われる宝玉ーーあなたが光の天使だと認められた時に手に取った玉ですね」
やはり、覚えて居られましたか。
アルスルンがそんな言葉を口にするけど、忘れるはずがない。
この玉は、主人公であるマリリンが触れると光が溢れ出して、シンデレラ ストーリーが始まる重要なもの。
シンデレラで言うところの、魔女やカボチャの馬車のようなものね。
それなのに!
「もちろん覚えているわよ! 昨日のことのように! 鮮明にね!」
儀式の会場に、なぜか同じような玉がいっぱい飾ってあって、無駄に迷わせやがるし!
私がどれだけ魔力を込めても、小さな光しか出さないし!
光が小さいせいで、最初の頃は誰も気が付かないし!
周囲が気付いてくれるまで5回も触る事になったクソ玉を忘れる訳ないじゃない!
「それで? これがなに? また光らせて証明すればいいわけ?」
「いえ、その必要はありませんよ」
「え、どういうこと……?」
意図が読めなくて不思議に思っていると、アルスルンがゴソゴソとポケットを探り始めた。
そうして出てきたのは、おなじような小さな玉。
「あの後、この宝玉が気になりまして、独自に調べてみたのです」
「調べる……?」
「えぇ、このように」
見えやすいように目線の高さまで持ち上げられて、中指と親指に挟まれる。
不意に中心部が、ぼんやりと光り始めた。
「…………ぇ?」
光は緩やかに広がって行き、玉全体を包み込む。
どう見ても、私が持つものより大きくて、強い光りだった。
「なんで……?」
神に認められた天使だけが、光を灯せる。
主人公であるマリリン以外には、灯せない。
公式のあらすじにも、攻略本のアイテム紹介にも、そう書いてあった。
それなのに、
「どうして、光が……」
どう見ても、アルスルンの手の中で光っている。
有り得ない話しだけど、私が持っている物よりも、強く光っている。
「どういう、こと……!?」
「そうですね。私も神に認められた、光の天使。そう言うことでしょうか」
ふわりと微笑んだアルスルンが、まるで見せ付けるかのように、小さな玉を指先で揺らしていた。
攻略対象らしい爽やかさがこぼれているけど、そんなバカな話はない。
「ふざけないで! 何が言いたいのよ!!」
「おや、まだわからないのですか?」
憎たらしくそう口にしたアルスルンが、なぜかクルリと背を向ける。
「メアリ様、少しだけ魔力をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん、良いわよ。その玉を持てば良いのよね?」
「はい。話が早くで助かります」
では、失礼して。なんて言葉を口にしながら、メアリの手に小さな玉を握らせた。
不意に淡い光が灯り、強い光が放たれて、また淡い光に戻っていく。
メアリの手に握られた小さな玉が、壊れかけた蛍光灯のように、何度も点滅を繰り返していた。
「これは面白いわね。込めた魔力の量によって光の強さが変わるのね」
「えぇ、本人の資質に関係なく。ただ魔力を流せば光る。そのような代物だったみたいです」
つまりは、誰でも光の天使になれる。
「光の天子か否かなど、計れる物ではなかった。そのようですね」
そんな言葉を口にしながら、アルスルンがクルリと振り向いた。
「したがって、相模原 桃子さん。あなたが光りの天使だと言う証拠は、これで無くなってしまいました」
「…………」
「あなたが天使である事を証明出来ないのであれば、その称号を剥奪するしかありません。それはわかりますね?」
……なにが?
なにが、わかりますね?
ぜんぜん、わからないわよ!!
なんなのよ!!!!
マリリンで主人公で、白竜様の嫁になる私が、天使じゃなくなる!?
「ふざけないで!! なによ、勝手な事ばかり! そんなのそっちが一方的に騒いで認定したんじゃない!! それが今更、間違ってたから剥奪する? ふざけーー」
「無論、剥奪の理由はそれだけではありませんよ」
「ぇ…………?」
「この人たちに見覚えはありますか?」
そう言葉にしたアルスルンが、数枚の紙を取り出して見せる。
そこに写って居たのは、見覚えのあるクラスメイトたち。
「相模原 桃子さん。あなたは、メアリ様だけじゃなくて、色々な方もいじめていたみたいですね」
そう言葉にしたアルスルンの瞳が、悲しげに揺れていた。
バグにしても酷すぎるでしょ!!
そんな事を思いながら桃子が顔をあげると、不意に黄色い小さな玉が飛んできた。
思わず伸ばした手の中にパチリと収まって、豆電球のような小さな光が浮かび上がる。
「これって……」
「えぇ、天使の祭礼に使われる宝玉ーーあなたが光の天使だと認められた時に手に取った玉ですね」
やはり、覚えて居られましたか。
アルスルンがそんな言葉を口にするけど、忘れるはずがない。
この玉は、主人公であるマリリンが触れると光が溢れ出して、シンデレラ ストーリーが始まる重要なもの。
シンデレラで言うところの、魔女やカボチャの馬車のようなものね。
それなのに!
「もちろん覚えているわよ! 昨日のことのように! 鮮明にね!」
儀式の会場に、なぜか同じような玉がいっぱい飾ってあって、無駄に迷わせやがるし!
私がどれだけ魔力を込めても、小さな光しか出さないし!
光が小さいせいで、最初の頃は誰も気が付かないし!
周囲が気付いてくれるまで5回も触る事になったクソ玉を忘れる訳ないじゃない!
「それで? これがなに? また光らせて証明すればいいわけ?」
「いえ、その必要はありませんよ」
「え、どういうこと……?」
意図が読めなくて不思議に思っていると、アルスルンがゴソゴソとポケットを探り始めた。
そうして出てきたのは、おなじような小さな玉。
「あの後、この宝玉が気になりまして、独自に調べてみたのです」
「調べる……?」
「えぇ、このように」
見えやすいように目線の高さまで持ち上げられて、中指と親指に挟まれる。
不意に中心部が、ぼんやりと光り始めた。
「…………ぇ?」
光は緩やかに広がって行き、玉全体を包み込む。
どう見ても、私が持つものより大きくて、強い光りだった。
「なんで……?」
神に認められた天使だけが、光を灯せる。
主人公であるマリリン以外には、灯せない。
公式のあらすじにも、攻略本のアイテム紹介にも、そう書いてあった。
それなのに、
「どうして、光が……」
どう見ても、アルスルンの手の中で光っている。
有り得ない話しだけど、私が持っている物よりも、強く光っている。
「どういう、こと……!?」
「そうですね。私も神に認められた、光の天使。そう言うことでしょうか」
ふわりと微笑んだアルスルンが、まるで見せ付けるかのように、小さな玉を指先で揺らしていた。
攻略対象らしい爽やかさがこぼれているけど、そんなバカな話はない。
「ふざけないで! 何が言いたいのよ!!」
「おや、まだわからないのですか?」
憎たらしくそう口にしたアルスルンが、なぜかクルリと背を向ける。
「メアリ様、少しだけ魔力をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん、良いわよ。その玉を持てば良いのよね?」
「はい。話が早くで助かります」
では、失礼して。なんて言葉を口にしながら、メアリの手に小さな玉を握らせた。
不意に淡い光が灯り、強い光が放たれて、また淡い光に戻っていく。
メアリの手に握られた小さな玉が、壊れかけた蛍光灯のように、何度も点滅を繰り返していた。
「これは面白いわね。込めた魔力の量によって光の強さが変わるのね」
「えぇ、本人の資質に関係なく。ただ魔力を流せば光る。そのような代物だったみたいです」
つまりは、誰でも光の天使になれる。
「光の天子か否かなど、計れる物ではなかった。そのようですね」
そんな言葉を口にしながら、アルスルンがクルリと振り向いた。
「したがって、相模原 桃子さん。あなたが光りの天使だと言う証拠は、これで無くなってしまいました」
「…………」
「あなたが天使である事を証明出来ないのであれば、その称号を剥奪するしかありません。それはわかりますね?」
……なにが?
なにが、わかりますね?
ぜんぜん、わからないわよ!!
なんなのよ!!!!
マリリンで主人公で、白竜様の嫁になる私が、天使じゃなくなる!?
「ふざけないで!! なによ、勝手な事ばかり! そんなのそっちが一方的に騒いで認定したんじゃない!! それが今更、間違ってたから剥奪する? ふざけーー」
「無論、剥奪の理由はそれだけではありませんよ」
「ぇ…………?」
「この人たちに見覚えはありますか?」
そう言葉にしたアルスルンが、数枚の紙を取り出して見せる。
そこに写って居たのは、見覚えのあるクラスメイトたち。
「相模原 桃子さん。あなたは、メアリ様だけじゃなくて、色々な方もいじめていたみたいですね」
そう言葉にしたアルスルンの瞳が、悲しげに揺れていた。
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