落ちこぼれ“占い師”が造る 最強ギルド! ~個性豊かな仲間や年下王女に頼られる“ 立派なギルマス”になってました~

薄味メロン

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〈36〉 格安で装備の依頼しよう!

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 専属の受付嬢であるルーセントさんに危険が迫っているのなら、俺やリリも巻き込まれる可能性が高いらしい。

 ボンさんにそう聞かされた俺は、色々と悩んで、彩葉に『大盾製作』の依頼をしていた。

「本当に私なんかでいいの? ほんとの、ほんとに?」

「いいも何も、お願いしてるのはこっちだから。な、リリ」

「はい。よろしくお願いします!」

 今は、冒険者ギルドからの帰り道。

 【死】について何も知らせてない2人が、楽しそうに笑っている。

『ナイフを作る腕は見たんだよな? 見極めるための時間を作るには、打って付けの言い訳だろ』

『……そうですね。わかりました』

 占いの制度を上げながら彩葉の人格を見極める。

 それと同時に、リリの戦力も高める。

 それが俺とボンさんで出した答えだった。

「ほんとの、ほんとに、素人なんだけど……」

 チラリと背中のリュックを流し見た彩葉が、肩をすくめながら笑って見せる。

 パンパンに詰まっていたリュックも、今は1番大きかった外殻が1枚入っているだけだ。

 その外核を使って、彩葉が大盾を作る。

 場所は俺たちの部屋。
 でもって、3食 昼寝 風呂付き。

「こっちこそ、本当に部屋と飯が報酬でいいのか?」

「もちろん。そのかわり、ガツガツ食べるからね」

「それは大丈夫だ。飯に関しては任せろ!」

 作るのはリリで、食材はボンさんが買ってくれた物だけどな。

--そんな事を思っていた時、

「ん?」

 ふと誰かの視線を背後に感じた。

 振り向いた先に見えたのは、慌てて物影に隠れる男の姿。 

「ご主人様? どうかしましたか?」

「何かあったの?」

「……いや、勘違いだったらしい」

「「????」」

 2人は気付いてないみたいだけど、やっぱり見られている気がするな。

 背後の1人だけじゃなさそうだ。

「リリ。帰ったら豪勢に肉を焼いてくれるか?」

「もちろんです! 任せてください!」

「おう、よろしく」

 リリの頭をくしゃくしゃと撫でながら、露天の前を通り過ぎる。

 人混みに紛れて見張る者が2人、背後から追い掛けてくるのが1人。

 彩葉に、不振な動きはないな……。

「彩葉も でっかい肉食うだろ?」

「!! いいの!?」

「そういう報酬だからな」

 クスリと肩を揺らしながら、周囲の視線をさぐる。

 田舎の森なら場所の特定も簡単だけど、街の中ここじゃ音が多すぎるな……。

「【木】の関連か、【死】の方なのか」

 もしくは両方に関わってくるのか。

 せめてもう少し情報があれば、なんて改めて自分の力不足を痛感するな。

 あまりやりたくないけど、すこしだけ揺すってみるか……。

「なぁ、彩葉。借りたナイフって、いつ返せばいい?」

「んん? ナイフ? おおー、そんな事もあったねぇ。でも、あれじゃない? 街中でナイフ出すのもどうかと思うから、そのまま貸しといてあげるよ。買い取りもありありだけど?」

「それは、値段次第だな。とりあえず借りておくよ」

「はいはーい。壊したら500ルネン、忘れないでねー」

 巧妙な罠の可能性も捨てきれないけど、武器を取り上げる素振りもなし。

 裏道に誘導するとか、明確に敵対してくれたら楽なんだけど、それもなし。

 やっぱ、悪いことするような女性には、見えないんだよな。

「背後のヤツらも動かないし……」

「ねぇねぇ、お兄さん。さっきからひとりでぶつぶつ言ってるけど、どったの?」

 単語が聞き取れるくらいの音量で、キミの反応を試してます。

 無駄っぽいけどな。

「いや、考えることが多すぎてさ」

「ふーん。ギルマスは大変ですにゃぁ」

 はじめから様子見だったのか。
 彩葉の存在が想定外だったのか。

 宿が近付いても、背後のヤツらは付いて来るだけか……。

「彩葉さん、ここですよ」

「ほへぇー。本当に立派な宿! お金持ちですにゃぁ」

「今はボンさんの援助で住んでるけどな」

 彩葉にも、背中の視線にも、焦りはないように感じる。

 そうして、なにも起こらないまま、リリを先頭に宿へと入っていった。

 さすがに宿の中までは追いかけて来ないらしく、背中に向けられていた視線が、今は感じない。

「んゅ? 二階?」

「それもボンさんのおかげでな」

 そのまま階段をあがって、部屋の前へ。

 少しだけ不安そうな表情を見せた彩葉が、リリの顔を見て、小さく頷いていた。

 まぁ、冒険者ギルドを通して正式な依頼にしたとは言っても、おれもいる部屋だからな。

『リリさんも一緒だから、万が一はないよね! お兄さん、ヘタレっぽいし! うん、大丈夫!』

 そんな感じだろうか?

 自分の妄想なのに、ちょっとへこむぞ?

「お邪魔しまーす。おぉー! 本当にお風呂がある! うらやましい! すべてにおいて負けたー!」

 不安を隠すようにリリに抱き付いた彩葉が、部屋の中を楽しそうに見渡している。

 その瞳は純粋に楽しんでいるようで、こちらの動きを探るような物は感じない。

「……もう十分かな」

「?? ご主人様? 何がですか?」

「彩葉のこと」

 もともと、疑うのとか得意じゃないし。

 飯に繋がらない事は、頑張らない主義だからな。

 後ろ手にガチャンと鍵を閉めて、ビクンと肩が跳ねた彩葉に目を向ける。

「“占い師”で冒険者になろうとした馬鹿がいる、って話し。聞いたことないか?」

「え? “占い師”?」

「そう。その“占い師”が、ギルマスになった、って噂は知ってるか?」

 不思議そうに首を傾げた彼女が、俺の顔を見詰める。

 そして、ハッと口に手を当てた。

「お兄さん、“占い師”なんだ」

 でもなんで、そんな事を?

 そう言いたげな雰囲気で、彩葉が首を傾げる。

「俺の“占い”で、彩葉が、賊の仲間か、そうじゃないのかを調べたい」

「!!!!」

 ビクンと肩が震えて、視線が俯いていく。

 そして、なぜかリリの側を離れた彩葉が、ロープをゆっくりと脱ぎ捨てた。

「いいよ。気が済むまで占って。そっちの方が、私も気が楽かな」

 両手を大きく広げた彼女が、無防備に目を閉じる。

 試しに彼女の手を握ってみたが、抵抗する素振りは何処にもなかった。
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