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〈25〉 部下を占うよー!

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 そのままじゃ遠いからと、リリを隣に座らせて、本を片手に占っていく。

・手に流れる魔力を見る
〈手相占い〉

・精霊の力を借りる
〈精霊術〉

・守護霊と会話する
〈対話魔法〉


「どうですか? 何か見えますか?」

「……いや、これも違う気がしてくるだけだな」

 道具が要らない物を順番に試したが、どうにも言葉に出来ない違和感がある。

 何かが違う。

 そんな感じだ。

「スキル持ちだから、出来ない、ってことはないと思うんだけどな……」

「違う気がする、って言うのも気になりますよね」

 んんー、と うなりながら腕を組むリリを横目に、すべてを試す勢いで、本を読み進めた。

〈魔相占い〉に〈水流仙術〉。

 大根が箱の中にあったから、切った断面で占う〈大根占い〉なんて物も試した。

「どうしでしょう?」

「んー……、これもなんかなぁ」

「そうですか……」

 どれを試しても、違和感を感じてしまう。

 どうにも前に進めない。

 まぁでも、本を読んだだけで出来るはずないよな。

 まだ、始めたばかりだからな。

 なんて思いもあるけど、自分に使った時は、普通に出来たんだよな。

「ご主人様、【禁忌】はダメですからね? 絶対ですよ?」

「わかってるよ。死にたくないし」

 そもそも、あの時の俺は、何占いをしたんだろ?

 たしか、寝転がって自分の手を見たんだよな?

「再現してみるか……」

 床に寝るのも冷たいし、ベッドの方がいいよな。

 そんな思いを胸にテーブルを離れて、ベッドに向かう。

「ご主人様?」

 不思議そうな顔をするリリに見られながら仰向けにたおれて、右手を天井に向けて掲げた。

 ぼんやりと自分の手の甲を見詰めていると、あの時と同じ感情が湧いてくる。

「……出来そうだな。リリ、ちょっとこっちに来てくれるか?」

「!? ……はっ、はい」
 
 ビクンと肩を跳ね上げたリリが、耳をペタリと倒しながら側まで来てくれる。

 なぜかモジモジと頬を赤らめる彼女を促して、隣に座ってもらった。

「しっれい、します……」

 彼女がベッドに腰掛けると、その反動で俺の体がほんの少しだけ揺れる。

「そのまま寝転がれるか?」

「ひゃ、ひゃい……」

 ぎゅっ、と目を閉じた彼女が、ベッドに横たわってくれた。

 なんだかリリの表情が堅い気がするけど、まぁいいか。

 隣に寝転んだリリの手を引き寄せて、天井にかざす。

「いけるな」

 湧き上がる感情をそのまま口に出して、大きく息を吸い込んだ。

 リリの手の甲を左手の人差し指で、トントンとなぞっていく。

「ひゃ……! ご主人、さま……? これって!!」

「成功だな」


【ダ○○○○○○○○仲○○○○会○○○○○。○木○○○○○○盾○○○○(6%)】


 あの時見た金色の文字が、目の前に浮かんでいた。

 だけど、文章になっていない?

 違いは文字だけじゃなくて、俺自身の感覚も違っている。

「リリ。悪いんだけど、金色の文字を書き写して貰えるか? すぐに消えるんたが、動けそうになくて……」

 全速力で走り抜けたかのような疲労感が全身にあって、立ち上がる事すら出来そうにない。

 絞り出した声にも、疲労が混じっている気さえする。

「!! すぐにとってきますね!」

 慌てて立ち上がったリリが、備え付けてあったメモ用紙に、鉛筆の先を押しつけた。

--ダ 仲 会 木 盾

 リリがペン先を走らせている間に、文字はいつの間にか消えていた。



 それから休憩と魔力の濾過、夜飯を挟んで、もう一度リリを占ってみる。

「どうですか?」

「大丈夫そうだな」

 色々と試してみたのだが、寝転がる必要はなかったらしい。

 今は、互いに椅子に座って向かい合い、拝むように手を合わせたリリを眺めているのだが、俺の中の“占い師”が行けると囁いていた。

「寝転がる必要がないなら、楽でいいな」

「そっ、そうですね」

 なぜか肩をピクリと揺らすリリを眺めながら、自分の手のひらを彼女の手にかざす。

 不意に、頭の中に言葉が溢れて、口から漏れていた。

「〈彼女の幸せな未来をここに〉」

 自分の声だけど、感情が籠もっていない、ただの音。

 そう表現したくなるような声が、俺の口から流れ出していく。


【ダン○○○に○○○仲間○○○会い○○○○。○木○○○○福と盾○○○○(26%)】


「リリ!」

「任せてください!!」

 側に置いてあったメモ用紙と鉛筆を掴んで、リリが文字をしたためていく。

 自分を占った時とは比べ物にならないが、数時間前と比べると、見るからに文字が増えていた。

「同じ文章か?」

「みたいですね」

 全体の文字数も同じくらいで、木や盾など、同じ文字が見て取れる。

 最後に書いてある%も増えてるな。

 一応の進歩はしたのだろう。

「けどな……。リリ、意味分かるか?」

「えっと、あの……。ごめんなさい」

「だよな」

 全くとまでは言わないが、何を示唆しているのかなんて、わかるはずもない。

 ただし、最初の【ダン】から始まる文字、

「【ダンジョン】か?」

「うしろに続く隙間も3つなので、たぶん……。【会いを】は【出会いを】じゃないですか?」

【ダンジョンに○○○仲間○○出会いを……】

 ダンジョンに行けば、仲間に出会える、って事か?

 木や盾はわからないが、福とあるから、悪い示唆ではないと思うが……。

「まぁ、何にせよ。冒険者ギルドに相談、だよな?」

「そうですね。それがいいかもです」

 仲間と書かれた文字を指先でなぞったリリが、コクリと頷いて微笑んでくれた。
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