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<44>同級生と銃弾2
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銃も盾も、現物に触れながら消さない限り、もう一度呼び出すことは叶わない。
俺は小さくため息を吐き出して、彼女と同じような細い剣を右手の中に呼び出した。
「知っているだろうけど、剣は苦手なんだ。手加減してくれるとうれしいよ」
「言ってなさい」
俺が両手で構えるのを待ってから、彼女が急激に飛び込んでくる。
切り下ろしを剣で弾き、次いで繰り出された切っ先を後ろに下がって避ける。
体力の関係で普段よりも鈍い彼女の動きに出来るだけ剣を触れ合わせて、じりじりと後退をし続けた。
俺の剣と彼女の剣が交わるたびに、"力"が光の粒になって散っていく。
「あくまで殺し合わずに、体力切れを狙う。どこまで私を馬鹿にすれば気が済むのかしら?」
「いや、バカになんてしてないさ。俺が思う最善の戦いをしているだけだよ」
「それがバカにしてるって言ってるの!!」
不意に彼女の声に怒気が混じり、突きの一線が放たれる。
だけどやはりそれは、動きの鈍ったキレのない攻撃。
「キミは何を抱えているのかな?」
「……っ!!」
問いかけと共に剣を弾くと、彼女が一瞬だけ目を見開いた。
「どうしてあなた達はそうやって……!」
「ん?」
言いかけた言葉が途切れて、彼女の視線がより鋭さを増していく。
「こう見えておしゃべりは好きなんだ。聞かせてくれないかな?」
「…………」
唇をギュッと結んで一瞬だけ動きを止めた彼女が、小さく首を振って剣を握りしめた。
どうやら話してくれる気はないらしい。
だけど、その小さな時間も、彼女の体力を奪っていく。
手に持っているだけでも、"力”は常に減り続けていた。
剣と剣がぶつかり合って、時間と共に彼女の顔色が険しくなっていく。
そしてついには彼女の体が大きくふらつき、剣が地面に突き刺さった。
「くっ……」
剣を杖のように使いながら、彼女の悔しそうな瞳が俺を見上げる。
「殺、しなさい……」
「それは出来ないよ。キミは僕より長く生きるべきだ」
ホッと力を抜いて、俺は手の中から剣を消した。
授業中にはなし得なかった初勝利。
それは彼女が俺を殺そうと力が入りすぎていたことと、警告のために空へ銃弾を打ち上げたこと。
いろいろと俺に有利だったが、それでも素直に嬉しかった。
「でもせっかくだから、どうして俺を殺そうとするのか教えてくれないかな?」
そう言葉にして、今にも倒れそうな彼女に手を伸ばす。
――そんな時、
「ん……?」
木々の隙間に隠れるように、迷彩服の男が伏せているのが見えた。
彼女の体のはるか後方に、狙撃銃のような長い銃身が太陽の光を反射している。
「っ!!」
取り付けられた装置から出る赤い点が、榎並さんの心臓を背中から狙っていた。
慌てて彼女と体を入れ替える。
彼女の体を強く抱きしめる。
「ちょっと!?」
驚いくような榎並さんの声と重なり合う、小さな銃声。
「ぇっ……?」
視界の端に、真っ赤な血が飛び散っていた。
俺は小さくため息を吐き出して、彼女と同じような細い剣を右手の中に呼び出した。
「知っているだろうけど、剣は苦手なんだ。手加減してくれるとうれしいよ」
「言ってなさい」
俺が両手で構えるのを待ってから、彼女が急激に飛び込んでくる。
切り下ろしを剣で弾き、次いで繰り出された切っ先を後ろに下がって避ける。
体力の関係で普段よりも鈍い彼女の動きに出来るだけ剣を触れ合わせて、じりじりと後退をし続けた。
俺の剣と彼女の剣が交わるたびに、"力"が光の粒になって散っていく。
「あくまで殺し合わずに、体力切れを狙う。どこまで私を馬鹿にすれば気が済むのかしら?」
「いや、バカになんてしてないさ。俺が思う最善の戦いをしているだけだよ」
「それがバカにしてるって言ってるの!!」
不意に彼女の声に怒気が混じり、突きの一線が放たれる。
だけどやはりそれは、動きの鈍ったキレのない攻撃。
「キミは何を抱えているのかな?」
「……っ!!」
問いかけと共に剣を弾くと、彼女が一瞬だけ目を見開いた。
「どうしてあなた達はそうやって……!」
「ん?」
言いかけた言葉が途切れて、彼女の視線がより鋭さを増していく。
「こう見えておしゃべりは好きなんだ。聞かせてくれないかな?」
「…………」
唇をギュッと結んで一瞬だけ動きを止めた彼女が、小さく首を振って剣を握りしめた。
どうやら話してくれる気はないらしい。
だけど、その小さな時間も、彼女の体力を奪っていく。
手に持っているだけでも、"力”は常に減り続けていた。
剣と剣がぶつかり合って、時間と共に彼女の顔色が険しくなっていく。
そしてついには彼女の体が大きくふらつき、剣が地面に突き刺さった。
「くっ……」
剣を杖のように使いながら、彼女の悔しそうな瞳が俺を見上げる。
「殺、しなさい……」
「それは出来ないよ。キミは僕より長く生きるべきだ」
ホッと力を抜いて、俺は手の中から剣を消した。
授業中にはなし得なかった初勝利。
それは彼女が俺を殺そうと力が入りすぎていたことと、警告のために空へ銃弾を打ち上げたこと。
いろいろと俺に有利だったが、それでも素直に嬉しかった。
「でもせっかくだから、どうして俺を殺そうとするのか教えてくれないかな?」
そう言葉にして、今にも倒れそうな彼女に手を伸ばす。
――そんな時、
「ん……?」
木々の隙間に隠れるように、迷彩服の男が伏せているのが見えた。
彼女の体のはるか後方に、狙撃銃のような長い銃身が太陽の光を反射している。
「っ!!」
取り付けられた装置から出る赤い点が、榎並さんの心臓を背中から狙っていた。
慌てて彼女と体を入れ替える。
彼女の体を強く抱きしめる。
「ちょっと!?」
驚いくような榎並さんの声と重なり合う、小さな銃声。
「ぇっ……?」
視界の端に、真っ赤な血が飛び散っていた。
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