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4巻
4-3
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「質問をしてもよいだろうか?」
「えぇ、もちろんです」
「余は、弱いのだな?」
何かを諦めたかのような、そんな声音。
確かに、彼女は強くはない。
現在のリリやフィオランたちと比較すると、劣っている点は多くある。だが――
「女王様は、人の上に立つ者に相応しい能力を持っておられますよ」
権力に媚びているわけじゃない。
鑑定士の誇りをもって、素直にそう言える。
「情報と状況を正確に把握し、慈愛の力で人々に安心を与えられる。この国に適した、優れた力をお持ちだと思います」
女王様が直接戦う機会なんてない……いや、そんな機会はない方がいい。そのための軍であり、そのための俺たちだ。
胡麻すりではなく、彼女は女王に相応しいと本気で思う。
「ただ、現状よりできることを増やしたいのなら、防御魔法の修練を積んでみてください。それほど苦労することなく、覚えられると思います。女王様にとって一番大事なのは、国のために『生きる』ことですから」
自分で身を守れれば、教官や護衛が助けに来るまで一人で凌げる。
時間を稼ぐことが、結果的に国を守ることに繋がる局面だってあるはずだ。
そんな俺の思いが伝わったのだろう、女王様は頷いた。
「攻撃系の魔法が軒並み使えなかったことで、魔法では戦えないと悲嘆し、見切ってしまっていた。しかし……防御魔法か。分かった。試してみよう」
女王様は、何か吹っ切れたような表情で大きく肩を回して、ルルベール教官の方を向く。
「余の腹は決まった。やはり、爺の言う通りだな」
そして再度俺の方に視線を向けて、表情を引き締める。
「さて、最後の用件だ。そちの噂を広めた人物を特定するために、手を貸してもらいたい。犯人は訓練校の内部にいる可能性が高い。そこまでは分かったのだが、それを調べるために部外者が立ち入れば目立ってしまうのでな」
「それで初めから関係者である、俺と教官に依頼をしたい――そういうことですか」
「うむ。概ねその通りだ」
何故訓練校にそんな人物が? 犯人は噂を流しただけだよな? 女王様が自ら動くような案件なのか?
次々に疑問が浮かぶが、ひとまずそれらは横に置いておこう。
何せ、女王様直々の依頼である。断れるわけもない。
それに権力云々の前に、これまでのやり取りの中で、俺はこの方を信じてもよいのではないかと判断している。
つまり俺にとって今一番大事なのは、『鑑定を使い、その者を捕まえろ』という依頼内容だけだ。
異形を倒した時に、俺は鑑定を使って敵の位置を割り出した。
部外秘の報告書に記載はないが、女王なら、教官や伍長たちから正しい報告を受けているはずだ。
敵を探すついでに俺の能力を見極める。そんな目的も兼ねた依頼なのだろう。
自分の能力が認められたようで、素直に嬉しい。
そうは思うが――
「申し訳ありません。現時点の俺の実力では、噂の鑑定はできません」
視線のように、直接向けられるものなら出所を探れる。殺気を放つ人物を特定することもできる。
だが、不特定の人間を経由する噂の出所を確かめることは不可能だ。
どこに魔力を向ければいいのか、それすら分からないからな。
「俺は、鑑定以外の索敵手段を持っていません。誠に申し訳ないのですが、俺が依頼を達成できる可能性は、極めて低いと思います」
これで失望されてしまっても仕方がない。できないものはできないのだから。
そう決意しての俺の言葉だったのだが、女王様は首を傾げている。
「そちは何を言っている? 噂の鑑定?」
え……? ……あれ?
教官も不思議そうな顔をしているが、もしかしてそういう話じゃない?
「なるほどな。そちが規格外と言われる理由が、それか」
女王様の言葉を受けて、今度は俺が首を傾げる番だった。
「規格外、ですか?」
リリたちにそう言われたことはあるが、何故今なんだ? むしろ俺は『できない』って断ろうとしたんだぞ?
「いや、思わず口からこぼれただけだ。気にせずともよい」
女王様は、そう口にすると、くすりと笑う。
「余の言葉が悪かったようだ。依頼という言葉だと重かったな。警戒しながら生活していてほしい、というだけの話だ」
「警戒、ですか?」
「うむ。この件、噂が流れただけで終わるとは考えにくい。大袈裟かもしれないが、噂を流した者を『潜入者』と呼ぶことにする。潜入者は今後、そちの周囲で何かしらの動きを見せるだろう」
噂の標的は俺だ。敵は、俺の周辺で何かを起こすだろうという読みか。
「その何かが起きる前に、異変を見つけ出せってことですか」
「うむ。余のような凡人には、噂を鑑定するなどという、突拍子もない作戦を考えつくことはできなかったのでな」
女王様は、そう口にするとすごく楽しそうに笑う。
扇子で口元を隠しているが、口角が上がっているのは見えるし、目も細められているから分かる。
何はともあれ、俺がするべきことはハッキリした。
「周囲の動きに注意を払い、異変を感じたら教官に報告します」
「うむ。そうしてくれると助かる。着手金として、報酬の半額を先に振り込んでおく故、あとで確認してほしい」
「分かりました」
そう言って頭を下げたところで気付く。
え、報酬が出る!? 准尉の基本給とは別に⁉
着手金も何も、今回の任務に必要なものなんて、何もないぞ。
そう戸惑う俺の前で、女王様は眉を寄せる。
「金額が少なくて申し訳ないが、美味しいものでも食べて、英気を養ってくれ」
「……ありがとうございます」
女王様から与えられるものを断るのは、さすがに失礼に当たる。
せっかくだから、その金で焼肉に行かせてもらうか。
『女王様の金で焼肉を食う!』なんて贅沢は他にないだろうし。
話がまとまったところで、女王様はパンと手を打ち鳴らす。
「さて、余からの用件は以上だ。最後に、おぬしの認識を訂正しておきたいのだが、よいか?」
「もちろんです。謹んで拝聴します」
「うむ。恥ずかしい話ではあるのだが、余は、そちが思っているほど権力を有していないのだ。ただそれだけを伝えておきたくてな」
「え……?」
……どういうことだ?
この国のトップは、女王様だ。訓練校の座学でもそう聞いている。
数分前にした鑑定結果でも、職業は女王になっていた。
国のトップなのに、強い権力を持ってない?
「近いうちに今の言葉の意味を知る日が来るであろう。その時に、そちが余の味方であってくれると嬉しく思う」
「分かりました」
頭を下げたものの、俺の頭は混乱している。
だが、詳しく教える気はないようで女王様は話を締める。
「話は以上だ。噂に関しては、余の方でも引き続き調べる故、何か分かれば連絡を入れる」
「承知しました。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました」
俺はそう口にして、立ち上がる。
ひとまず女王様との謁見はつつがなく終わりそうだ。
そう思っていると、これまで沈黙を守っていた教官が口を開く。
「それでいいんじゃな?」
「うむ。余の実力が足りていない。そう判断した」
「……相変わらずじゃな」
教官はちらりと俺を一瞥し、やれやれといった感じで席を立つ。
会話の意味は分からないが、どうやら話は済んだらしい。
教官のあとに続いて、豪華な扉に向けて歩き出す。
背後から女王様も付いて来てくれているところを見ると、部屋の入口まで見送ってくれるようだ。
それから数歩進み、ちょうど部屋の外に出たその時――
「きゃっ!」
可愛らしい叫び声が聞こえたので、俺は慌てて振り向く。
見えたのは、前のめりにペタンと転ぶ女王様の姿。
女王様は頬を染めて、恥ずかしそうに視線を逸らしている。
「やっ、やり直しで……」
そんな女王様らしからぬ姿を隠すように、教官が豪華な扉を閉じた。
2 城からの帰り道
女王の部屋をあとにした俺とルルベール教官は、入ってきた時と同じ通路を通り、誰とも会わないまま、城の裏口にたどり着く。
「アルト准尉。おぬしにはこのまま、一人で帰ってもらいたい。できるだけ隙を見せつつのぉ」
そう言いながらルルベール教官はニヤリと笑い、誰もいない庭を見下ろした。
王城から外に出るためには、二つの門を通る必要がある。それらの間のスペースは、非常に入り組んだ造りの庭になっているのだ。
背の高い薔薇が咲き誇る庭は迷路のようで、追っ手を撒きやすい。
だがそれは、周囲からの死角が多いことも意味する。
もし潜入者が国の関係者だった場合、確実に襲ってくるだろう。
まぁ、それを炙り出すのが俺の仕事、か。
「囮になりながら帰れ。そういうことですか」
「うむ。おぬしとしても、早めに解決したかろう?」
「まあ、そうですね」
不安を抱えたまま生きるのは、性に合わない。
夜も昼も、安心してぐっすり眠りたい。
「指輪は持っておるな?」
ルルベール教官の質問に、俺は頷く。
俺のポケットの中には、女王様が小指にはめていたのとは別の指輪が入っている。
「ええ。大切に保管していますよ」
『指輪はアルト准尉に託す。好きに使うとよい』そう女王様から言付かった上で、教官は指輪を預かったとのこと。
どう考えても高い価値を持っているだろうことは想像に難くないので、俺は冷や汗をかきながら指輪を持ち歩くはめになってしまった。
「囮になることより、この指輪を持っている方が嫌なんですけど」
「うむ。気に入ったようで何よりじゃ。大切にするんじゃぞ?」
「……」
くつくつ笑う教官の頭を一発殴りたいんだが? 本当にやるか?
一瞬だけそう思ったが、教官を殴ったところで、俺の手が折れるだけで終わる。
『蚊が止まったかのようなパンチじゃな。鍛え直してやるわい』と言われる気しかしない。
触らぬ教官に祟りなしだ。
「曲がり角を右に曲がり続ければ庭を出ることができるぞ。おぬしの武運を祈る」
「分かりました……って、え……?」
振り向いた先に、教官の姿はすでにない。
隣を歩いていたはずなのに、一瞬で消えてしまった。
「教官のデタラメは今更か」
鑑定を広げて見つけることはできると思うが、する必要もないよな。
切り替えは大事だ。
「えーっと? 庭を通ればいいんだよな」
それにしても狙われるために見通しの悪い場所に行けなんて、予想以上に鬼畜だ。一応、短剣は持ち歩いているが、戦闘力は一般人レベルでしかない。
そんなことを言っていても始まらないので早速薔薇の迷路に入る。
この時点では鑑定結果に異常はない。
美しい花々が、女王様との対話で疲れた心を癒やしてくれるだけだ。
「それにしても、太陽が眩しい……」
手元の時計を見たが、昼の二時だと分かる。
ものすごく長時間に思えたが、女王様と話していた時間は十五分もなかったらしい。
教官が言うように、散歩程度の時間だ。
「でもせめて、事前通知くらいは欲しいよな」
裏口からコソコソ出入りしたり、女王の護衛すらいなかったりしたことを考えると情報が漏れるリスクを考慮していた、つまり『教えたくても教えられなかった』というのが正しいのだろう。
とはいえ――
「もう二度とこんな思いはごめんだな」
国のトップが仕掛け人のドッキリとか、マジで心臓に悪すぎる。
あの十五分で、十年くらいは寿命が縮んだ気がする。
今回の慰謝料として、幸せな生活の保証を要求したいくらいだ。
「女王様にそう言ったら処刑……いや、楽しそうに笑われて終わりか」
まったく、本当に懐が深い女王様だ。
そんなことを考えながら薔薇の迷路を進み、俺は行き止まりで足を止めた。
「全て右に曲がったはずなんだが……」
目の前は完全な行き止まりである。
どこかで間違えたのか? なんて思っていると、ポケットの中にある指輪が魔力を帯びた。
すると、目の前の石畳が開き、地下に続く道が姿を見せる。
「……なるほど。隠し通路ですか」
大人一人がギリギリ通れる大きさの入口の奥は、緩やかな傾斜になっている。
「王族の緊急脱出用通路とか?」
どう考えても、俺が知っていい通路じゃないだろ、これ。
今日だけで、知ってはいけないことを知りすぎた。その自覚はある。
だが、ここで引き返すこともできない。
「女王様と教官様――最強の二人にかかれば、しがない鑑定士は手のひらの上だな」
大きく溜め息をつき、俺はゆっくりと地下通路に入っていった。
「鑑定に不自然な反応はなし」
薄暗い地下通路の先は、図書館の個室に繋がっていた。
そこで改めて鑑定をかけてみたが、追っ手の気配はない。
「簡単に尻尾を出してくれる相手なら、教官たちも手を焼いていないか……」
そう呟きながら、俺は個室の扉を開ける。
周りは大きな本棚に囲まれている。
前後左右に、上下。見回す限りの場所が、本で埋まっている。
さすがは帝国随一の蔵書を誇る図書館だな。
「こんな場所が、無料で誰でも使えるって、本当にすごいよな」
ちなみにだが、王国の図書館は貴族専用。平民は、近付くだけで処刑される。
「今の依頼が終わったら、リリたちと一緒に見て回るのも面白そうだ。訓練校にはない本が、大量にあるし、訓練のヒントになるかもしれない」
俺は鑑定の範囲を広げ、面白そうな本をピックアップしていく。
それからしばらく借りる本を吟味して、俺は併設されている喫茶店に移動する。
結局借りたのは『リーダーの哲学』『帝国と筋肉の歴史』『理想の上司になる 7』の三冊。
それらを流し見しつつ、俺は周囲の会話に耳を傾けた。
「聞いたかい? すっごい英雄様の話」
「もちろんさね。まだ訓練生なのに、なんやすごい敵を倒したんやろ? えらい生徒さんがいたもんやねぇ」
「へ!? 訓練校の生徒さん!? それは知らなかったよ! 本当なのかい!?」
聞こえてくる噂話は、訓練校で聞くものと同系統だ。
だけど、俺が倒したことまでは伝わっていないようだ。
「訓練校の内部に敵か……」
身内を疑いたくはないが、その可能性が高いという女王様の推測は、間違っていないように思える。
図書館を出て、店が並ぶ大通りをふらふら歩く。
すると、とある店の店主が声をかけてくる。
「どうだい、兄さん。朝採れのハニーアップル。安くしとくぜ?」
「へぇー、美味しそうですね」
教官に突然拉致されたため、昼飯がまだだ。
みんなは先に昼食を済ませていると思うが、せっかくだから、リリたちの分も買っていこうか。
――そう思って口を開こうとした瞬間、得体の知れない悪寒が全身を駆け抜けた。
「――ッ!」
勢いよく振り向いた先に見えるのは、楽しそうに買いものをする人々の姿。
嫌な気配も、いつの間にか消えている。
「おん? どうかしたんか?」
「……いえ、気のせいだったみたいです」
そう言いながら店主に笑みを向けて、俺は足早にその場を離れた。
人混みに紛れながら周囲に魔力を流すが、鑑定結果に異常はない。
「風邪でも引いたか?」
いや、そんな言葉で片付けられるような気配ではなかった。
「……ひとまず帰ろう」
この先を左に入れば、人通りの少ない道がある。
細く入り組んだ道だが、訓練校への近道。もし俺をつけている奴がいても不自然には思わないはずだ。
この道を通ることで、潜入者を誘い出せたなら、儲けものである。
大通りを離れ、裏通りを進む。周囲の喧騒が消え、人混みが遠ざかる。目に見える範囲に人はいない。
改めて細心の注意を払いながら魔力を広げたが、尾行されている気配はなかった。
「……」
釣れなかったのか?
そう思った時――ガシャンと何かが倒れる音がした。
次いで察知したのは、息を呑む音。
思わず俺は言う。
「――来たか!」
そして慌てて振り向いた先に、見覚えのある制服が見えた。
ポニーテールの赤い髪。小柄な体。訓練校の制服を着た小さな背中が、角を曲がって逃げていく。
慌てて鑑定するべく魔力を向けたが、魔力はそいつの体をすり抜けた。
「最初に異形を鑑定しようとした時と同じか!」
慌てて追いかけ、角を曲がる。その先に見えたのは、無人の道。
がむしゃらに魔力を広げたが、空振りだ。
「……逃げられたか」
細い路地の真ん中で、肩を落としながら天を仰ぐ。
俺のあとをつける敵がいることは分かったが、次に打てる手は思い浮かばない。
一瞬見えた後ろ姿だけでは、敵を絞り込むのは難しい。
「見た目なんて簡単に魔法で変えられるしな。唯一の成果は、鑑定ができなかったことだけ、か」
俺の鑑定を拒むものは全て、邪神を崇める集団が関わっていた。
そう考えると、今回の敵もそれに与している可能性が極めて高い。
「〈蛇の末裔〉だったか? 目をつけられる覚えはないんだがな……まずはリリたちに相談するしかないか」
訓練校に帰還した俺は、正面の門をくぐる。
俺の顔を見た門番が、慌てて背筋を伸ばした。
「アルト准尉、お帰りなさいませ!」
次いで、他の門番の声。
「「お帰りなさいませ!」」
門番たちの対応が、事件の前と後で劇的に違う。
詰め所で休んでいた者まで出てきて、横一列に並ぶなんて、今までなかったもの。
「うん。みんなもお疲れさま」
「「ありがとうございます!」」
気まずくて仕方がないが、好意的な反応ではあるので、注意もしづらい。
そしてそれは、訓練校に入ってからも続く。
「見て、鬼殺しの英雄様よ!」
「やっぱ、オーラが違ぇよな。オーラが」
「お願いしたらサイン書いてくれるかな? 私の実力じゃ無理かな?」
そんな会話が、ひっきりなしに周囲から聞こえるのだ。
普段であればこそこそ逃げるが、今日ばかりはそれも無理だ。
「やば! 目が合った!」
「スカウト? スカウトされちゃう!?」
この場だけでも、赤髪のポニーテールの女子は四人もいる。
訓練校全体から絞り込むのは現実的じゃないな。
それならなおのこと――
「えぇ、もちろんです」
「余は、弱いのだな?」
何かを諦めたかのような、そんな声音。
確かに、彼女は強くはない。
現在のリリやフィオランたちと比較すると、劣っている点は多くある。だが――
「女王様は、人の上に立つ者に相応しい能力を持っておられますよ」
権力に媚びているわけじゃない。
鑑定士の誇りをもって、素直にそう言える。
「情報と状況を正確に把握し、慈愛の力で人々に安心を与えられる。この国に適した、優れた力をお持ちだと思います」
女王様が直接戦う機会なんてない……いや、そんな機会はない方がいい。そのための軍であり、そのための俺たちだ。
胡麻すりではなく、彼女は女王に相応しいと本気で思う。
「ただ、現状よりできることを増やしたいのなら、防御魔法の修練を積んでみてください。それほど苦労することなく、覚えられると思います。女王様にとって一番大事なのは、国のために『生きる』ことですから」
自分で身を守れれば、教官や護衛が助けに来るまで一人で凌げる。
時間を稼ぐことが、結果的に国を守ることに繋がる局面だってあるはずだ。
そんな俺の思いが伝わったのだろう、女王様は頷いた。
「攻撃系の魔法が軒並み使えなかったことで、魔法では戦えないと悲嘆し、見切ってしまっていた。しかし……防御魔法か。分かった。試してみよう」
女王様は、何か吹っ切れたような表情で大きく肩を回して、ルルベール教官の方を向く。
「余の腹は決まった。やはり、爺の言う通りだな」
そして再度俺の方に視線を向けて、表情を引き締める。
「さて、最後の用件だ。そちの噂を広めた人物を特定するために、手を貸してもらいたい。犯人は訓練校の内部にいる可能性が高い。そこまでは分かったのだが、それを調べるために部外者が立ち入れば目立ってしまうのでな」
「それで初めから関係者である、俺と教官に依頼をしたい――そういうことですか」
「うむ。概ねその通りだ」
何故訓練校にそんな人物が? 犯人は噂を流しただけだよな? 女王様が自ら動くような案件なのか?
次々に疑問が浮かぶが、ひとまずそれらは横に置いておこう。
何せ、女王様直々の依頼である。断れるわけもない。
それに権力云々の前に、これまでのやり取りの中で、俺はこの方を信じてもよいのではないかと判断している。
つまり俺にとって今一番大事なのは、『鑑定を使い、その者を捕まえろ』という依頼内容だけだ。
異形を倒した時に、俺は鑑定を使って敵の位置を割り出した。
部外秘の報告書に記載はないが、女王なら、教官や伍長たちから正しい報告を受けているはずだ。
敵を探すついでに俺の能力を見極める。そんな目的も兼ねた依頼なのだろう。
自分の能力が認められたようで、素直に嬉しい。
そうは思うが――
「申し訳ありません。現時点の俺の実力では、噂の鑑定はできません」
視線のように、直接向けられるものなら出所を探れる。殺気を放つ人物を特定することもできる。
だが、不特定の人間を経由する噂の出所を確かめることは不可能だ。
どこに魔力を向ければいいのか、それすら分からないからな。
「俺は、鑑定以外の索敵手段を持っていません。誠に申し訳ないのですが、俺が依頼を達成できる可能性は、極めて低いと思います」
これで失望されてしまっても仕方がない。できないものはできないのだから。
そう決意しての俺の言葉だったのだが、女王様は首を傾げている。
「そちは何を言っている? 噂の鑑定?」
え……? ……あれ?
教官も不思議そうな顔をしているが、もしかしてそういう話じゃない?
「なるほどな。そちが規格外と言われる理由が、それか」
女王様の言葉を受けて、今度は俺が首を傾げる番だった。
「規格外、ですか?」
リリたちにそう言われたことはあるが、何故今なんだ? むしろ俺は『できない』って断ろうとしたんだぞ?
「いや、思わず口からこぼれただけだ。気にせずともよい」
女王様は、そう口にすると、くすりと笑う。
「余の言葉が悪かったようだ。依頼という言葉だと重かったな。警戒しながら生活していてほしい、というだけの話だ」
「警戒、ですか?」
「うむ。この件、噂が流れただけで終わるとは考えにくい。大袈裟かもしれないが、噂を流した者を『潜入者』と呼ぶことにする。潜入者は今後、そちの周囲で何かしらの動きを見せるだろう」
噂の標的は俺だ。敵は、俺の周辺で何かを起こすだろうという読みか。
「その何かが起きる前に、異変を見つけ出せってことですか」
「うむ。余のような凡人には、噂を鑑定するなどという、突拍子もない作戦を考えつくことはできなかったのでな」
女王様は、そう口にするとすごく楽しそうに笑う。
扇子で口元を隠しているが、口角が上がっているのは見えるし、目も細められているから分かる。
何はともあれ、俺がするべきことはハッキリした。
「周囲の動きに注意を払い、異変を感じたら教官に報告します」
「うむ。そうしてくれると助かる。着手金として、報酬の半額を先に振り込んでおく故、あとで確認してほしい」
「分かりました」
そう言って頭を下げたところで気付く。
え、報酬が出る!? 准尉の基本給とは別に⁉
着手金も何も、今回の任務に必要なものなんて、何もないぞ。
そう戸惑う俺の前で、女王様は眉を寄せる。
「金額が少なくて申し訳ないが、美味しいものでも食べて、英気を養ってくれ」
「……ありがとうございます」
女王様から与えられるものを断るのは、さすがに失礼に当たる。
せっかくだから、その金で焼肉に行かせてもらうか。
『女王様の金で焼肉を食う!』なんて贅沢は他にないだろうし。
話がまとまったところで、女王様はパンと手を打ち鳴らす。
「さて、余からの用件は以上だ。最後に、おぬしの認識を訂正しておきたいのだが、よいか?」
「もちろんです。謹んで拝聴します」
「うむ。恥ずかしい話ではあるのだが、余は、そちが思っているほど権力を有していないのだ。ただそれだけを伝えておきたくてな」
「え……?」
……どういうことだ?
この国のトップは、女王様だ。訓練校の座学でもそう聞いている。
数分前にした鑑定結果でも、職業は女王になっていた。
国のトップなのに、強い権力を持ってない?
「近いうちに今の言葉の意味を知る日が来るであろう。その時に、そちが余の味方であってくれると嬉しく思う」
「分かりました」
頭を下げたものの、俺の頭は混乱している。
だが、詳しく教える気はないようで女王様は話を締める。
「話は以上だ。噂に関しては、余の方でも引き続き調べる故、何か分かれば連絡を入れる」
「承知しました。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました」
俺はそう口にして、立ち上がる。
ひとまず女王様との謁見はつつがなく終わりそうだ。
そう思っていると、これまで沈黙を守っていた教官が口を開く。
「それでいいんじゃな?」
「うむ。余の実力が足りていない。そう判断した」
「……相変わらずじゃな」
教官はちらりと俺を一瞥し、やれやれといった感じで席を立つ。
会話の意味は分からないが、どうやら話は済んだらしい。
教官のあとに続いて、豪華な扉に向けて歩き出す。
背後から女王様も付いて来てくれているところを見ると、部屋の入口まで見送ってくれるようだ。
それから数歩進み、ちょうど部屋の外に出たその時――
「きゃっ!」
可愛らしい叫び声が聞こえたので、俺は慌てて振り向く。
見えたのは、前のめりにペタンと転ぶ女王様の姿。
女王様は頬を染めて、恥ずかしそうに視線を逸らしている。
「やっ、やり直しで……」
そんな女王様らしからぬ姿を隠すように、教官が豪華な扉を閉じた。
2 城からの帰り道
女王の部屋をあとにした俺とルルベール教官は、入ってきた時と同じ通路を通り、誰とも会わないまま、城の裏口にたどり着く。
「アルト准尉。おぬしにはこのまま、一人で帰ってもらいたい。できるだけ隙を見せつつのぉ」
そう言いながらルルベール教官はニヤリと笑い、誰もいない庭を見下ろした。
王城から外に出るためには、二つの門を通る必要がある。それらの間のスペースは、非常に入り組んだ造りの庭になっているのだ。
背の高い薔薇が咲き誇る庭は迷路のようで、追っ手を撒きやすい。
だがそれは、周囲からの死角が多いことも意味する。
もし潜入者が国の関係者だった場合、確実に襲ってくるだろう。
まぁ、それを炙り出すのが俺の仕事、か。
「囮になりながら帰れ。そういうことですか」
「うむ。おぬしとしても、早めに解決したかろう?」
「まあ、そうですね」
不安を抱えたまま生きるのは、性に合わない。
夜も昼も、安心してぐっすり眠りたい。
「指輪は持っておるな?」
ルルベール教官の質問に、俺は頷く。
俺のポケットの中には、女王様が小指にはめていたのとは別の指輪が入っている。
「ええ。大切に保管していますよ」
『指輪はアルト准尉に託す。好きに使うとよい』そう女王様から言付かった上で、教官は指輪を預かったとのこと。
どう考えても高い価値を持っているだろうことは想像に難くないので、俺は冷や汗をかきながら指輪を持ち歩くはめになってしまった。
「囮になることより、この指輪を持っている方が嫌なんですけど」
「うむ。気に入ったようで何よりじゃ。大切にするんじゃぞ?」
「……」
くつくつ笑う教官の頭を一発殴りたいんだが? 本当にやるか?
一瞬だけそう思ったが、教官を殴ったところで、俺の手が折れるだけで終わる。
『蚊が止まったかのようなパンチじゃな。鍛え直してやるわい』と言われる気しかしない。
触らぬ教官に祟りなしだ。
「曲がり角を右に曲がり続ければ庭を出ることができるぞ。おぬしの武運を祈る」
「分かりました……って、え……?」
振り向いた先に、教官の姿はすでにない。
隣を歩いていたはずなのに、一瞬で消えてしまった。
「教官のデタラメは今更か」
鑑定を広げて見つけることはできると思うが、する必要もないよな。
切り替えは大事だ。
「えーっと? 庭を通ればいいんだよな」
それにしても狙われるために見通しの悪い場所に行けなんて、予想以上に鬼畜だ。一応、短剣は持ち歩いているが、戦闘力は一般人レベルでしかない。
そんなことを言っていても始まらないので早速薔薇の迷路に入る。
この時点では鑑定結果に異常はない。
美しい花々が、女王様との対話で疲れた心を癒やしてくれるだけだ。
「それにしても、太陽が眩しい……」
手元の時計を見たが、昼の二時だと分かる。
ものすごく長時間に思えたが、女王様と話していた時間は十五分もなかったらしい。
教官が言うように、散歩程度の時間だ。
「でもせめて、事前通知くらいは欲しいよな」
裏口からコソコソ出入りしたり、女王の護衛すらいなかったりしたことを考えると情報が漏れるリスクを考慮していた、つまり『教えたくても教えられなかった』というのが正しいのだろう。
とはいえ――
「もう二度とこんな思いはごめんだな」
国のトップが仕掛け人のドッキリとか、マジで心臓に悪すぎる。
あの十五分で、十年くらいは寿命が縮んだ気がする。
今回の慰謝料として、幸せな生活の保証を要求したいくらいだ。
「女王様にそう言ったら処刑……いや、楽しそうに笑われて終わりか」
まったく、本当に懐が深い女王様だ。
そんなことを考えながら薔薇の迷路を進み、俺は行き止まりで足を止めた。
「全て右に曲がったはずなんだが……」
目の前は完全な行き止まりである。
どこかで間違えたのか? なんて思っていると、ポケットの中にある指輪が魔力を帯びた。
すると、目の前の石畳が開き、地下に続く道が姿を見せる。
「……なるほど。隠し通路ですか」
大人一人がギリギリ通れる大きさの入口の奥は、緩やかな傾斜になっている。
「王族の緊急脱出用通路とか?」
どう考えても、俺が知っていい通路じゃないだろ、これ。
今日だけで、知ってはいけないことを知りすぎた。その自覚はある。
だが、ここで引き返すこともできない。
「女王様と教官様――最強の二人にかかれば、しがない鑑定士は手のひらの上だな」
大きく溜め息をつき、俺はゆっくりと地下通路に入っていった。
「鑑定に不自然な反応はなし」
薄暗い地下通路の先は、図書館の個室に繋がっていた。
そこで改めて鑑定をかけてみたが、追っ手の気配はない。
「簡単に尻尾を出してくれる相手なら、教官たちも手を焼いていないか……」
そう呟きながら、俺は個室の扉を開ける。
周りは大きな本棚に囲まれている。
前後左右に、上下。見回す限りの場所が、本で埋まっている。
さすがは帝国随一の蔵書を誇る図書館だな。
「こんな場所が、無料で誰でも使えるって、本当にすごいよな」
ちなみにだが、王国の図書館は貴族専用。平民は、近付くだけで処刑される。
「今の依頼が終わったら、リリたちと一緒に見て回るのも面白そうだ。訓練校にはない本が、大量にあるし、訓練のヒントになるかもしれない」
俺は鑑定の範囲を広げ、面白そうな本をピックアップしていく。
それからしばらく借りる本を吟味して、俺は併設されている喫茶店に移動する。
結局借りたのは『リーダーの哲学』『帝国と筋肉の歴史』『理想の上司になる 7』の三冊。
それらを流し見しつつ、俺は周囲の会話に耳を傾けた。
「聞いたかい? すっごい英雄様の話」
「もちろんさね。まだ訓練生なのに、なんやすごい敵を倒したんやろ? えらい生徒さんがいたもんやねぇ」
「へ!? 訓練校の生徒さん!? それは知らなかったよ! 本当なのかい!?」
聞こえてくる噂話は、訓練校で聞くものと同系統だ。
だけど、俺が倒したことまでは伝わっていないようだ。
「訓練校の内部に敵か……」
身内を疑いたくはないが、その可能性が高いという女王様の推測は、間違っていないように思える。
図書館を出て、店が並ぶ大通りをふらふら歩く。
すると、とある店の店主が声をかけてくる。
「どうだい、兄さん。朝採れのハニーアップル。安くしとくぜ?」
「へぇー、美味しそうですね」
教官に突然拉致されたため、昼飯がまだだ。
みんなは先に昼食を済ませていると思うが、せっかくだから、リリたちの分も買っていこうか。
――そう思って口を開こうとした瞬間、得体の知れない悪寒が全身を駆け抜けた。
「――ッ!」
勢いよく振り向いた先に見えるのは、楽しそうに買いものをする人々の姿。
嫌な気配も、いつの間にか消えている。
「おん? どうかしたんか?」
「……いえ、気のせいだったみたいです」
そう言いながら店主に笑みを向けて、俺は足早にその場を離れた。
人混みに紛れながら周囲に魔力を流すが、鑑定結果に異常はない。
「風邪でも引いたか?」
いや、そんな言葉で片付けられるような気配ではなかった。
「……ひとまず帰ろう」
この先を左に入れば、人通りの少ない道がある。
細く入り組んだ道だが、訓練校への近道。もし俺をつけている奴がいても不自然には思わないはずだ。
この道を通ることで、潜入者を誘い出せたなら、儲けものである。
大通りを離れ、裏通りを進む。周囲の喧騒が消え、人混みが遠ざかる。目に見える範囲に人はいない。
改めて細心の注意を払いながら魔力を広げたが、尾行されている気配はなかった。
「……」
釣れなかったのか?
そう思った時――ガシャンと何かが倒れる音がした。
次いで察知したのは、息を呑む音。
思わず俺は言う。
「――来たか!」
そして慌てて振り向いた先に、見覚えのある制服が見えた。
ポニーテールの赤い髪。小柄な体。訓練校の制服を着た小さな背中が、角を曲がって逃げていく。
慌てて鑑定するべく魔力を向けたが、魔力はそいつの体をすり抜けた。
「最初に異形を鑑定しようとした時と同じか!」
慌てて追いかけ、角を曲がる。その先に見えたのは、無人の道。
がむしゃらに魔力を広げたが、空振りだ。
「……逃げられたか」
細い路地の真ん中で、肩を落としながら天を仰ぐ。
俺のあとをつける敵がいることは分かったが、次に打てる手は思い浮かばない。
一瞬見えた後ろ姿だけでは、敵を絞り込むのは難しい。
「見た目なんて簡単に魔法で変えられるしな。唯一の成果は、鑑定ができなかったことだけ、か」
俺の鑑定を拒むものは全て、邪神を崇める集団が関わっていた。
そう考えると、今回の敵もそれに与している可能性が極めて高い。
「〈蛇の末裔〉だったか? 目をつけられる覚えはないんだがな……まずはリリたちに相談するしかないか」
訓練校に帰還した俺は、正面の門をくぐる。
俺の顔を見た門番が、慌てて背筋を伸ばした。
「アルト准尉、お帰りなさいませ!」
次いで、他の門番の声。
「「お帰りなさいませ!」」
門番たちの対応が、事件の前と後で劇的に違う。
詰め所で休んでいた者まで出てきて、横一列に並ぶなんて、今までなかったもの。
「うん。みんなもお疲れさま」
「「ありがとうございます!」」
気まずくて仕方がないが、好意的な反応ではあるので、注意もしづらい。
そしてそれは、訓練校に入ってからも続く。
「見て、鬼殺しの英雄様よ!」
「やっぱ、オーラが違ぇよな。オーラが」
「お願いしたらサイン書いてくれるかな? 私の実力じゃ無理かな?」
そんな会話が、ひっきりなしに周囲から聞こえるのだ。
普段であればこそこそ逃げるが、今日ばかりはそれも無理だ。
「やば! 目が合った!」
「スカウト? スカウトされちゃう!?」
この場だけでも、赤髪のポニーテールの女子は四人もいる。
訓練校全体から絞り込むのは現実的じゃないな。
それならなおのこと――
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