実力主義に拾われた鑑定士 奴隷扱いだった母国を捨てて、敵国の英雄はじめました

薄味メロン

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1巻

1-3

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 ☆★☆★☆


「今後の打ち合わせなんかもあるだろうし、二人でクッキーでも食べてきていいよ」

 そう言ってアルトとリリを送り出したルドルフは、担当教官のサンザイを連れてルドルフの仕事部屋へと来ていた。
 原則として子供たちはここに入れず、用事があって訪れる者もめったにいない。秘密の話をするには、打ってつけの場所だ。

「サンザイ先生。あの青年、アルト幹部候補生をどう見ました?」
「……そうですね。率直な意見を言わせていただけるのであれば、少しだけ頼りないなと。ですが、あの魔力量は異常でしょう。彼はいったい何者ですか?」
「敵国に行っている同期からの贈り物です」
「ベラルト少佐の!?」
「ええ。任務中に見つけて思わずスカウトした。そう書かれていましたよ」

 ルドルフはそこで一度言葉を切り、香りの高いコーヒーでくちびるを湿らせる。
 ふわりとした苦味を楽しみつつ、小さく笑って見せた。

「一日に八百を超える数の鑑定魔法を使っていたそうです。とある地方都市に送る全てのものを彼一人で鑑定していたのだとか。もっとも、本人は知らないようですが」
「……にわかには信じられませんね」
「僕もです。ですが、まずはこれを」

 そう言って、ルドルフが小さな紙切れを差し出した。
 急いで書いたような流れる字で、子供たちの名前が記されている。

「これは?」
「優秀な子だと、彼が名前をあげた子供たちです」
「!!」

 マラソンが早かった者、遅かった者。その結果にかかわらず、サンザイの知る限りの優秀な生徒達の名が記されている。一人も余すことなく、上位者から順番に……
 評価に多少の差はあるが、幼い頃から見守ってきた者としての意見と、大きな差はない。

「これを、どうやって」
「鑑定だそうですよ」
「え……?」
「鑑定魔法を人に使ったらしいのです。使、という鑑定魔法の常識を蹴り飛ばすかのように、彼は走っている子供たちを鑑定して見せました。僕の目の前でね」
「…………」

 ──ありえない。
 その言葉をぐっと呑み込んだサンザイが、大きく息を吸い込んだ。

「規格外の魔力量がそれを可能に? いえ、毎日八百回以上使っていたということであれば、熟練度の方でしょうか?」
「分かりません。ですが、彼は、自分で育てる相手にリリ訓練候補生を選びました」
「鑑定の魔法が、あの子の将来性を高く評価したと?」
「憶測の部分も多いですが、八割方は当たっていると思いますよ」

 もしそうであれば、人の鑑定結果には何が記されているのか。〈値段〉や〈希少価値〉なんて言う一般的な結果とは、ずいぶんとかけ離れているのは間違いないだろう。

「次の練習試合で、リリ訓練候補生が勝ってしまうようなことになれば、面白いと思いませんか?」

 獰猛どうもうな笑みを浮かべるルドルフの言葉に、サンザイは肩をすくめて笑うしかなかった。


 ☆★☆★☆


「えっと。アルトって言います」
「はっ、はい。リリです。よっ、よろしくお願いします」
「うん。こちらこそ……」

 とりあえず挨拶したまではいいんだが、話す話題が見つからないんだよな。
 つやのあるふわりとした灰色の髪に、グルリと曲がった羊の角。身長は百四十センチくらいで小柄だけど、胸は大きめ……

「……? えっと……?」
「あっ、いや、なんでもない! うん、なんでもないよ!」

 平常心、平常心……というか、少女を相手にビビっている場合じゃないよな。
 早めに就職先を決めないと!

「それじゃあ、リリって呼んでもいいかな?」
「はい。大丈夫です、アルト様」

 ……さま、か。母国じゃ平民とかクズとかしか呼ばれたことなかったから、すごく違和感があるけど、好きな呼び方で呼んでもらえばいいか。

「早速で悪いんだけど、リリを詳しく鑑定したいんだ。いいかな?」
「かんてい、ですか? えっと? はい。大丈夫? だと、思います」

 そう言ってくれたものの、どう見ても理解してないね。コテリ、って首をかしげているし。
 でもまぁ、痛いことするわけじゃないから、大丈夫かな。

「行くよ?」
「はっ、はい!」

 無防備に目を閉じたリリの手にれて、細い魔力を流していく。
 子供たち全員を見た時より強く。彼女の全てを見る気持ちで……
 ──────────────────────────────────────────
【 名 前 】リリ(15歳)
【 状 態 】生命力:68/68 魔力量:39/39
【 能力値 】体力:20(F)魔力:30(E)物理:5(F)魔法:10(E)防御:3(F)
       素早さ:5(F)回避:5(F)幸運:20(D)
【 技 術 】なし
【 素 質 】支援魔法:S 杖術:C 料理:B
 ──────────────────────────────────────────
【能力値】の欄にある体力や魔力の後ろに付いているのは数値をランク化したものだ。Fが最低で、Sが最高評価となっている。
 現状は見た目通り、って感じだな。幸運以外の数値はかなり低い。
 ──まぁ、それも含めて彼女を選んだのだから仕方ないんだけどね。
 それにしても、どうして八日後に勝負とかそんな話になったのか……素質が高くても、育てるための時間がなぁ。部下を育成した経験もないし……
 とりあえずは、数値だけでもメモしておくか。

「アルト様? それは?」
「ん? あぁ、ごめんね。キミの──じゃなかった、リリの鑑定結果だよ」
「わたしの、かんてい……?」

 首を傾げたリリが、あごに指先を当てて天井を見上げる。
 かんてい? かんてい……? そう何度も繰り返し、ハッと目を見開いた。

「えっと、あの。もしかしてなのですが! アルト様は、人物の鑑定ができるのですか?」
「え? あ、うん。できるよ?」
「……!! すごいですね! さすがは幹部候補生です!」

 すごい?

「えっと……詳しい結果、聞く?」
「はい! よろしくお願いします!」

 身を乗り出して目を輝かせるリリを見ていると、どうにも自分がすごい人間に思えてくるな。
 そういえばルドルフ少佐に鑑定結果を見せた時の反応も、どことなくおかしかった。
 ──もしかして、この国には人間を鑑定できる人材が少ない、とか?

「……まさかね」
「アルト様?」
「あっ、ごめんね。まずはこれをもとに、強くなる方法を考えようと思うんだけど──」

 まぁ、ダメでもともと。できる限りのことはしようかな。
 そう思いながら、俺はリリに向き合った。
 現状の能力値が弱いのは仕方がないから目をつむるとして、注目すべきはやはり素質の部分だろう。
 リリに鑑定結果を伝えると、彼女は俺の顔を見上げて目を丸くした。

「私に、魔法の才能が?」
「そう。支援魔法がS評価。努力をすれば最強になれる可能性があるよ」
「最強に……」

 鑑定結果が記された紙を渡すと、リリはまじまじと見つめ、うめくように言葉を漏らす。

「わたしなんかが……?」

 どうやら信じられないらしい。
 ずっと落ちこぼれだったみたいだから、気持ちは分からなくもないけどね。

「どうかな? とりあえず試してみる、ってのは」
「はっ、はい! お願いします!」
「うん。それじゃ方針も決まったし、次は情報収集かな」
「情報収集、ですか?」
「そう。申し訳ないんだけど、支援魔法に関してはあまり知らなくてさ」

 母国じゃ鑑定する以外の時間なんてなかったし、俺にはその辺の知識がない。頼りにならず、本当に申し訳ない。

「図書室とか、資料室とか。本がいっぱいあって、俺も一緒に入って大丈夫そうな場所ってここにはないかな?」
「本がいっぱい……それでしたら、私達の教室に街の人からもらった本がたくさんありますよ」
「そうなんだ。案内してもらってもいいかな?」
「分かりました! こっちです!」

 リリは俺が書いた鑑定結果のメモを慌ててポケットにしまい、くるりと背を向けた。
 ……ん? スカートに、丸い尻尾しっぽが付いている?

「どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」

 あー、なるほど。スカートに穴を開けて、尻尾を外に出しているのか。
 どんな種族でも受け入れる国って話だからな。尻尾がある種族向けのスカートくらい、あって当然か。
 そんなことをぼんやりと思いながら歩いていると、リリがドアの前で立ち止まった。

「ここですね」

 ドアを開けてまず見えたのが、本の山。椅子とテーブルが五十個くらいあって、それをおおうように本棚が所狭ところせましと並べられていた。
 どの棚もパンパンで、入りきらなかった本が段ボール箱で積み上げられているくらいだ。ざっと見ただけでも三千冊は超えていると思う。

「他の部屋にも同じくらいあって、自由に読めるんです。強くなりたい人は勉強しなさい、って」
「なるほどね」

 試しに落ちていたものを拾ってみる。
『剣術の指南書』『料理の隠し味~母の味を求めて~』『おすすめの帝都パンケーキ百選』といったタイトルだった。
 軍事に必要か? と首を傾げたくもなるが、学びたいことは全て学べる気はする。

「魔法関係の本を探せばいいんですよね? えっと、確かこの辺りに──」

 リリが棚の奥の方をごそごそと探し始めるが……

「あれ? ここじゃなかったのかな? こっち……?」

 漏れる声を聞く限り、見当たらないらしい。
 まぁ、これだけの量があって毎日誰かが読むのなら、管理するのも一苦労だろう。むしろ、ある程度だけでも、どこに何があるのかを把握しているだけ優秀だと思う。
 だけど今は時間がないし、ちょっとだけズルをさせてもらおうかな。

「探しものは任せてくれていいよ」

 リリにそう声をかけて、目を閉じる。
 自分を中心に魔力を霧状に広げて、無作為に鑑定を施していく。
 母国でやったのが最後だけど、次々と脳内に流れ込む感じが懐かしいな。

『おい、平民! 国王様が取り寄せたものをどこへやった!? 今すぐ探し出せ!!』

 突然そう言われるのも日常茶飯事だったし。心穏やかにできる分、今の方が断然やりやすい。魔力を節約しなくていいって、すばらしいな!


 ・支援魔法を志す者達へ(2600エン)
 ・支援魔法入門(1680エン)
 ・君と僕は愛の支援魔法を紡ぐ(630エン)
 ・支援魔法と筋肉の歴史(2480エン)


「そこの段ボールの中に入門書があるね。中級、上級者向けは、そっちの棚みたいだよ」

『支援魔法入門』と『支援魔法を志す者達へ』の二冊を見つけた。
 残りは、時間がある時に読みに来るか。
 特に、『支援魔法と筋肉の歴史(2480エン)』はどんな歴史なのか気になって仕方がない。

「え……? え~っと……ありました!」
「それじゃ、一階に戻ろうか。広いところの方がいろいろと試せるしね」
「はい!」

 楽しそうに、ぎゅっ、と本を抱き抱えたリリと共に一階へ。

「十五分以内はカツカレー、二十分までがコロッケカレー、それ以下はノーマルのカレーです。用意はいいですね!? ──はじめ!」

 一階ではそんな声と共に、子供たちが一斉に走りだしていた。
 ラップタイムで夜飯のメニューを決めるマラソンのようだ。
 まぁ、誰だってカツカレーが食いたいよな。今はまだ、胃もたれなんて気にならない年齢だろうし……なんだか、言ってて悲しくなってきた。

「それじゃあ、俺たちは本を読もうか」
「……えっと、走らなくてもいいんですか?」

 ん? 走りたいです! って感じではなさそうだけど。
 疎外感……と言うよりは、自分だけ走らなくていいのかっていう罪悪感かな?

「いいよ、いいよ。リリはこっちが優先。ルドルフ少佐の許可は取ってあるから」
「えっと……分かりました」

 走っている子供たちに視線を向けたリリが、申し訳なさそうに頭を下げた。
 そして地面にペタンと腰を下ろして、抱えていた本を開いていく。俺も横から覗き込んでみると、はじめに支援魔法とはなんぞや! みたいな紹介文があり、その後は魔法が個別に紹介されていた。

「筋力アップ、視力向上、雑念排除……」

 支援魔法の主流は、味方を強くする魔法らしい。

「筋力ダウン、速度低下、詠唱阻害……」

 また、敵を弱くする魔法も支援魔法に含まれるようだ。
 でもって、その二つに分類できないものもある。

「食料運搬、給料計算、荷造り作業……」

 自分が主力になって戦う、と言った魔法ではなさそうだが……そこはリリの使い方次第かな、とも思う。
 それぞれに覚えやすさなんかがあって、主流の能力向上系は比較的簡単らしい。

「どうかな? 試してみたい魔法があったりした?」
「えっと、あの……これ、なんですが、ダメですか?」

 指差した先に書かれていたのは、〈パワーアップ〉と〈スピードアップ〉の二つ。
 マラソンは周回遅れだったみたいだし、憧れもするか。

「いいんじゃないかな。とりあえずは、その二つを頑張って覚えてみようか」
「はい!」

 そういうことになった。


 まぁ、いくら素質Sランクだと言っても、お試しで成功するようなものでもない。
〈スピードアップ〉の使い方を本で確認して、試してみる。

「……もう一回。魔力細くして、全身に行き渡らせて、それから」

 スピードアップのページを読んで、試して、また読んで。

「──失敗、ですね……すみません。もう一回頑張ります!」

 同じ動作を繰り返していたリリが、祈るように両手を自分の胸に当てて目を閉じた。
〈スピードアップ〉も〈パワーアップ〉も本来は他者に使う魔法らしいが、今回は最初からリリ自身に使ってもらうことにしてある。
 もちろんマルリアさんとの練習試合のためでもあるが、彼女自身も力強く、速く走れるようになってみたいと思っているはず。その思いが練習のモチベーションにつながる。

「今度こそ……〈スピードアップ〉をします」

 魔法のかけ声は人それぞれ。いろいろと試した結果、リリにはそのかけ声が一番しっくり来たらしい。
 ──そうして練習を始めて、一時間。
 時刻は午後の三時二十三分。
 不意にリリの肩がピクンと跳ねて、大きな目が開かれた。
 表情に疲れの色が浮かび、肩が大きく上下している。

「はぁ、はぁ、はぁ……どう、ですか……?」
「ちょっとだけ待って」

 魔力を大量に使った時に見られる疲れの色が見える。たぶん成功だろう。
 念のため、と思いながらリリに細い魔力を流していく。
 ──────────────────────────────────────────
【 状 態 】魔力量:19/39
【 能力値 】素早さ:5(F)『+2』
 ──────────────────────────────────────────

「成功しているね。素早さが上がっているよ」

『+2』の効果が多いのか少ないのかは分からないが、初めてならできただけでも御の字だ。

「ちょっと動いてみてくれるかな?」
「はい!」

 リリは大きく息を吸い込み、ワクワクした様子で駆けていく。
 そのまま十メートルくらい走って、振り向いた。

「すごいです。なんだか走りやすい気がします!」
「そっか、それはよかった。頑張った結果だな」

 周囲から見る分には何も変わらないように見えるが、本人が言うのなら変化は確かにあったのだろう。
 他の子たちは、足が遅い子で素早さ7。速い子で12。5から7への上昇ではまだまだ。
 だけど、これで方向性は見えたな。

「私、もっと頑張りますね!」
「うん、よろしくね。でも、再使用まではちょっと待ってくれるかな? 今のままじゃ魔力が足りてないから」
「そうなんですか?」
「詳しく見てないから正確じゃないけど。減り具合を考えると、ほんの少しだけね」

 39から19になったのだから、消費はたぶん20。あと、1だけ足りてない。
 そんなことを思っていると……
 ──────────────────────────────────────────
【 状 態 】魔力量:20/39
 ──────────────────────────────────────────
 最低限に絞って鑑定を続けていたリリの魔力量が、1だけ増えていた。
 時刻を見ると、三時二十六分。三分に1のペースで回復するらしい。

「俺が合図したら、もう一度スピードアップを使ってもらえるかな?」
「分かりました」

 より深く、ピンポイントで見るように。彼女の肩に手を載せて、魔力の糸を内部に届かせる。

「いいよ。使って」
「はい! 〈スピードアップ〉を起動します!」

 ──────────────────────────────────────────
【 魔法名 】〈スピードアップ〉
【 使用者 】リリ
【 レベル 】1/2
【継続時間】20分
【 効 果 】素早さの能力値を+5% or +2(素質補正)
【 補 足 】上昇する数値が高い方をステータスに適用する
 ──────────────────────────────────────────
 通常効果は実数値に+5%だが、Sランクの素質補正で+2の効果もある。上昇値はいい方を採用するようだから、素質がSじゃなかったらリリの場合、+1すらできてない、ってことか……
 さすがはSランク、とでも言うべきなんだろうな。

「はぁ、はぁ、はぁ……どう、でした……?」
「鑑定できたよ。やっぱり予測通りだった。再使用が可能になるのは一時間後だね。それまで休憩かな」
「休憩……? いいんですか……?」
「もちろん。無理や無茶をしても、意味ないからね」

 魔力切れの状態が続くと吐き気や目眩めまいがするし、長期化すると死にそうになる。日を追うごとに、顔色が悪くなる。
 リリにあんな思いをさせたくはないからな。
 ──────────────────────────────────────────
【 名 前 】リリ(15歳)
【 状 態 】魔力量:0/40
【 能力値 】素早さ:5(F)『+2』
 ──────────────────────────────────────────
 試しに鑑定してみたが、さすがに効果の重複はしないらしい。その代わりと言ったらなんだが、魔力量の上限が1増えているな。

「どうかな? コツとか掴めそう?」
「そう、ですね。なんとなくですが、分かった気がします!」
「そっか、それはよかった」

 魔法は使い続けると練度が上昇する。あとは何度も使ってレベルを上げていき、使い方を工夫するのが大事だ。筋力を上げる魔法も難度はそんなに大きく変わらないし、彼女ならすぐにできるようになるだろう。

「やっぱり休憩は五時三十分頃まで延長で。それからルドルフ少佐に今日の成果を報告しに行こうか」
「ルドルフ先生に報告、ですか?」
「そう。すごい魔法が使えるようになりましたー、ってさ。きっと褒めてくれるよ」

 そのついでに、パワーアップの魔法をルドルフ少佐の前で覚えてもらおう。そっちの方が驚くだろうし、俺の評価も上がりそうだ。

「わっ、分かりました」
「よろしくね。分かっていると思うけど、それまでは魔力を使わないように」
「もちろんです。えっと、アルト様は、休憩中はどちらに……?」
「あー……さっき見つけた本でも読んでこようかと思って」

 支援魔法と筋肉の歴史(2480エン)。これがどうしても頭から離れなくてな……

「でしたら、ご一緒させていただいてもいいですか?」
「ん? リリも本を読むのか?」
「えっと、そうですね。そうします」

 ……? まぁ、いいか。

「それじゃ、行こうか」
「はい! お供させていただきます!」

 楽しそうに笑うリリと一緒に、二階へと戻っていった。


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