72 / 118
棚ぼた勇者
侵入者11
しおりを挟む
「動くわけがないし、恐らく生きていたんだろうな。……え?? サラ、死体って動かないよな?」
「そうだね。リビングデッドや操作魔法なんかが使える魔法使いがいれば可能だけど、今回に限っては僕達がいたからね。
誰の目にも触れることく、忽然と消えてたことから考えると、十中八九、移動魔法を使ったと思うよ」
「そうか……」
一応は否定してくれたが、不可能ではないようだ。
だが、消えているのが移動系の魔法使いということを加味するれば、生きていたと考えるのが妥当だろう。
「残りの遺体はすぐに埋葬する。
それと同時進行で王都の様子も確認してみるから、結果がわかり次第またここに集まることにしよう。異論はあるか?」
そう結論を出して仲間の顔を見渡せば、クロエが大きく手を挙げた。
「お兄ちゃん、質問していい?」
「……あぁ、いいぞ?」
「えっとね、宴会の準備はどうするの?」
「ん? ……あぁ、そういえば、そんな話をしていたな。
悪いが、事情がかわったから、状況が把握できるまで宴会は延期する。それでいいよな?」
俺がそういうと、クロエは驚いたように目を開き、頬をプクーっと膨らませる。
「……やだ」
「いや、やだって……」
「やだもん」
クロエが拗ねてしまった。
けど、まぁ。この状況で明日宴会ってわけにはいかないよな。
「クロエは、俺と食事、どっちが大事なんだ?」
我ながら卑怯な質問だとは思うが、仕方がない。
もし移動魔法が使える者が生きて王都へ帰ったとすれば、俺達の人相や戦い方など、俺達が不利になる情報が敵に渡ることになる。
早いうちに状況を把握し、対策を立てなければ、取り返しの付かないことになる可能性が高かった。
「ん? お兄ちゃんと食事?
んー………、食事」
ん? …………え?
……あ、はい。
そうですよね。……知ってましたよ?
俺なんかが人間の三大欲求の1つに勝てるはずないですよね。
あれ? なんだろう。目から汗が……。
「悩む素振りを見せてくれてありがとうございます」
そう、即決じゃなかった。一応、悩んでくれた。俺はそれだけで満足です。
…………ほんとだよ?
さて、どうするかな……。
クロエが納得してくれそうなこと、……うーん。
やっぱ、飯関係だよな。
「あー、クロエ。飯の量を増やすので、日にちを延長させてくれませんか?」
「ごはん、増量? んーーーー、…………。うん、わかった。約束だからね」
えーっと、あのー、クロエさん。先ほどの質問より今回の方が悩んだ気がするのは、俺の気のせいですかね?
気のせいだよね? そうだよね?
周りのみんなも、俺を哀れむような目をしているのも気のせいだよね?
……うん。気にしない。
「……みなさま、解散してください」
「イ、イエッサー」
そうして精神に大きなダメージを受けながら自室に戻った俺は、全身系を集中して王都周辺に配置したカラス達と感覚を共有した。
そして見つけたのが、第2王子に報告をする魔法使いの姿。
やはり移動系の魔法使いが生きていたようだ。
(つめが甘かったか……)
俺達の戦い方や人相が王子たちに、伝わってしまった。
移動魔法が使える者を即死させることが出来なかった原因は俺で、回復魔法が使える者に魔法を使う時間を与えてしまったのも俺だ。
俺がみんなに心配を掛けなければ、アリスに連行されることもなかった。
(すべての責任は、俺か……)
俺は何のために彼等の命を奪い、何のために彼女達の手を汚させたのだろう。
自分の無能さ加減が嫌になる。
「今回の結果は仕方のなかったことだから、自分を責める必要はないと進言させて貰うよ」
「そうだよお兄ちゃん。
私の焼き鳥あげるから、元気出して」
「終わったことを悩んでても仕方ないわよ。
みっともない顔してないで、笑いなさいよね」
「兄様は笑ってるほうが、似合ってますよ」
「お姉ちゃんがよしよししてあげるから、嫌な事は忘れちゃおうねー」
仲間達に情報収集の結果を伝えると、みんな、同じような言葉を口にした。
どうやら、俺はポーカーフェイスも出来ないらしい。
ほんと、いやになるね。
(さて、俺たちはどうするべきなのか……)
楽しそうに指示を出す第2王子をカラスの視界にとらえて、はぁー……、と息を吐き出した。
「そうだね。リビングデッドや操作魔法なんかが使える魔法使いがいれば可能だけど、今回に限っては僕達がいたからね。
誰の目にも触れることく、忽然と消えてたことから考えると、十中八九、移動魔法を使ったと思うよ」
「そうか……」
一応は否定してくれたが、不可能ではないようだ。
だが、消えているのが移動系の魔法使いということを加味するれば、生きていたと考えるのが妥当だろう。
「残りの遺体はすぐに埋葬する。
それと同時進行で王都の様子も確認してみるから、結果がわかり次第またここに集まることにしよう。異論はあるか?」
そう結論を出して仲間の顔を見渡せば、クロエが大きく手を挙げた。
「お兄ちゃん、質問していい?」
「……あぁ、いいぞ?」
「えっとね、宴会の準備はどうするの?」
「ん? ……あぁ、そういえば、そんな話をしていたな。
悪いが、事情がかわったから、状況が把握できるまで宴会は延期する。それでいいよな?」
俺がそういうと、クロエは驚いたように目を開き、頬をプクーっと膨らませる。
「……やだ」
「いや、やだって……」
「やだもん」
クロエが拗ねてしまった。
けど、まぁ。この状況で明日宴会ってわけにはいかないよな。
「クロエは、俺と食事、どっちが大事なんだ?」
我ながら卑怯な質問だとは思うが、仕方がない。
もし移動魔法が使える者が生きて王都へ帰ったとすれば、俺達の人相や戦い方など、俺達が不利になる情報が敵に渡ることになる。
早いうちに状況を把握し、対策を立てなければ、取り返しの付かないことになる可能性が高かった。
「ん? お兄ちゃんと食事?
んー………、食事」
ん? …………え?
……あ、はい。
そうですよね。……知ってましたよ?
俺なんかが人間の三大欲求の1つに勝てるはずないですよね。
あれ? なんだろう。目から汗が……。
「悩む素振りを見せてくれてありがとうございます」
そう、即決じゃなかった。一応、悩んでくれた。俺はそれだけで満足です。
…………ほんとだよ?
さて、どうするかな……。
クロエが納得してくれそうなこと、……うーん。
やっぱ、飯関係だよな。
「あー、クロエ。飯の量を増やすので、日にちを延長させてくれませんか?」
「ごはん、増量? んーーーー、…………。うん、わかった。約束だからね」
えーっと、あのー、クロエさん。先ほどの質問より今回の方が悩んだ気がするのは、俺の気のせいですかね?
気のせいだよね? そうだよね?
周りのみんなも、俺を哀れむような目をしているのも気のせいだよね?
……うん。気にしない。
「……みなさま、解散してください」
「イ、イエッサー」
そうして精神に大きなダメージを受けながら自室に戻った俺は、全身系を集中して王都周辺に配置したカラス達と感覚を共有した。
そして見つけたのが、第2王子に報告をする魔法使いの姿。
やはり移動系の魔法使いが生きていたようだ。
(つめが甘かったか……)
俺達の戦い方や人相が王子たちに、伝わってしまった。
移動魔法が使える者を即死させることが出来なかった原因は俺で、回復魔法が使える者に魔法を使う時間を与えてしまったのも俺だ。
俺がみんなに心配を掛けなければ、アリスに連行されることもなかった。
(すべての責任は、俺か……)
俺は何のために彼等の命を奪い、何のために彼女達の手を汚させたのだろう。
自分の無能さ加減が嫌になる。
「今回の結果は仕方のなかったことだから、自分を責める必要はないと進言させて貰うよ」
「そうだよお兄ちゃん。
私の焼き鳥あげるから、元気出して」
「終わったことを悩んでても仕方ないわよ。
みっともない顔してないで、笑いなさいよね」
「兄様は笑ってるほうが、似合ってますよ」
「お姉ちゃんがよしよししてあげるから、嫌な事は忘れちゃおうねー」
仲間達に情報収集の結果を伝えると、みんな、同じような言葉を口にした。
どうやら、俺はポーカーフェイスも出来ないらしい。
ほんと、いやになるね。
(さて、俺たちはどうするべきなのか……)
楽しそうに指示を出す第2王子をカラスの視界にとらえて、はぁー……、と息を吐き出した。
0
お気に入りに追加
802
あなたにおすすめの小説
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる