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49 お祭りをはじめましょう
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「魔物のおにく、無料でくばってまーす。1人1杯ですよー」
「らっしゃいやせっ!!」
「最後尾はこっち! そこのお姉さん、横入りはダメっす!!」
朗らかな日差しと、心地よい風。
祭り会場になった広間には、たくさんの住民と子供たちの声が響いている。
「あっ、お会計ですね! 上着は80コウで、その靴は……、えっと……」
「50だ。合計でいくらになるかわかるか?」
「8と5は、じゅう、さん? だから、130……、ですか?」
「あってるぜ。釣銭も自分でやってみな」
「はい!!」
1つの店舗につき、1人以上の子供を雇ってもらう。
その代わりに、場所代や出店費は取らない。
商業ギルドとそんな契約を結んだため、会場は予想以上に華やかだ。
「こちらでは、魔物肉のスープを販売してます!」
「男爵様がおいしいとお認めになった焼肉。食べてみたいですよね!!」
「魔物肉の卵とじ。早く買わなきゃ売り切れちゃうよー」
「姫様おすすめのスジ肉の煮込み、すっごく美味しい。お持ち帰りも買ってこようかな」
祭りのメインである魔物肉の売れ行きも好調。
中央に設置した飲食スペースでは、領民たちが楽しそうに肉を頬張っている。
そんな祭り会場の様子を覗き終えて、俺は控え室であるテントの入口を閉めた。
「敵に動きなし。やっぱり、アイツの狙いは俺っぽいな」
難しい顔で街の地図と睨めっこするミルトに手を差し出して、優しく微笑む。
ミルトの手は冷たく、顔も青白い。
我々の隊長は、相変わらず緊張しているらしい。
「大丈夫。出来るだけの準備は全部したし、簡単に返り討ちに出来るよ」
やれるだけのことはした。
だからきっと、大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、ミルトの手を優しく握る。
「行こうか。みんなが待ってる」
「……うん」
護衛のホムンクルスはつけずに、ミルトの手を引いてテントを出る。
俺たちの体格に合わせて作ってもらった、隊長と副隊長らしい衣装。
そんな豪華な服が似合うように、俺はテントの前で堂々と胸を張った。
「諸君! 本日はよく集まってくれた!!」
目の前に広がるのは、祭りのメイン通路とでも言うべき場所。
両端に屋台が並び、正面には木製のステージが建っている。
(姫様とフェドナルンド様だ)
(おふたりとも可愛いー!!)
(頭をなでなでしたいかも)
(わかるー! ぎゅっと抱きしめて、なでなでしたい!)
周囲の雰囲気は、ずいぶんと和やかだ。
魔物肉を待つ列が横にずれて、俺たちに気付いた人々が道を譲ってくれる。
そうして自然と出来たステージまでの通路を、俺たちはゆっくりと進んでいく。
「全員、魔物肉は食べたか?」
「食べました!」
「おいしかったです!」
「我々新部隊が考えた特殊な調理法だ。すごいだろ?」
「最高です!」
「ミルトレイナ隊長、フェドナルンド副隊長は、本当にすごいです!!!!」
そんなやり取りをしながら、ミルトと共にステージに上る。
アイドルのファンサービスをイメージして、周囲に手を振って見せた。
ちなみにだが、道中の問いに答えてくれた者の半数は、俺たちが雇ったサクラだ。
こういうのは、最初のイメージが大切だからな。
みんな、いい仕事をしてくれた。
そう思いながら、マイクのような魔道具の前に立つ。
『あー、あー。マイクテスト、マイクテスト……』
レン伍長たちが事前にしてくれているはずだけど、司会者がいないから念のため。
クスリと笑ってくれる人が多いから、掴みとしては正解だろう。
ステージからは本当に多くの人が見えて、全員が俺たちに注目している。
『聞いていると思うが、本日は、我々 新設部隊の初任務を記念したものだ。大いに騒ぎ、我々の門出を祝って欲しい』
何の変哲もない、お偉いさんの開会宣言だ。
これが日本なら、俺の挨拶を真面目に聞く人なんて1割もいないだろう。
だけど、ここは異世界で、俺たちは貴族であり、軍の上層部の人間だ。
年齢ゆえに微笑ましい者を見る目は多いが、全員が真摯に耳を傾けてくれている。
『私からは以上だ。これより、ミルトレイナ隊長のお言葉を賜る』
買い物客は全員が手を止めていて、店主たちも見える範囲に顔を出してくれている。
広間は心地よい静けさを保ったまま、全員がミルトの言葉を待っていた。
そんな中で、この場に似合わない笑い声が聞こえる。
「なんだ? ゴミの演説は、もう終了か??」
観客が慌てて振り向き、声がした方に顔を向ける。
そこにいたのは、4人の護衛を伴ったクズの姿。
伯爵家の長男らしい豪華な服を身に着けた腐った兄が、堂々と立っていた。
「面白い催しでもあるかと思い、わざわざ足を運んだが、興ざめだな」
横に落ちているローブに身を隠して、会場に潜入したのだろう。
腐った兄は護衛に守られながら剣を抜き、切っ先を俺に向けた。
「余興は仕舞いだ。ここからは、伯爵家の次期当主である俺様が――」
『あれあれ? 予想以上に早く到着したんだね。出迎えは必要なかったの??』
そんな兄の声を遮って、言葉をかぶせる。
兄も護衛も、観客たちも呆気に取られ、思わずと言った様子で言葉に詰まっていた。
『ようこそ、俺たちのお祭りに。歓迎するよ、伯爵家の長男さん』
「……ゴミが、いったいなにを――」
『今日は楽しんでいってね』
予想できた侵入者を無視して、観客たちに言葉を投げかける。
『みんな大丈夫だよ。護衛も含めて、この5人は僕の招待客だから安心してね』
俺はマイクの前に立ったまま、優雅に笑って見せた。
「らっしゃいやせっ!!」
「最後尾はこっち! そこのお姉さん、横入りはダメっす!!」
朗らかな日差しと、心地よい風。
祭り会場になった広間には、たくさんの住民と子供たちの声が響いている。
「あっ、お会計ですね! 上着は80コウで、その靴は……、えっと……」
「50だ。合計でいくらになるかわかるか?」
「8と5は、じゅう、さん? だから、130……、ですか?」
「あってるぜ。釣銭も自分でやってみな」
「はい!!」
1つの店舗につき、1人以上の子供を雇ってもらう。
その代わりに、場所代や出店費は取らない。
商業ギルドとそんな契約を結んだため、会場は予想以上に華やかだ。
「こちらでは、魔物肉のスープを販売してます!」
「男爵様がおいしいとお認めになった焼肉。食べてみたいですよね!!」
「魔物肉の卵とじ。早く買わなきゃ売り切れちゃうよー」
「姫様おすすめのスジ肉の煮込み、すっごく美味しい。お持ち帰りも買ってこようかな」
祭りのメインである魔物肉の売れ行きも好調。
中央に設置した飲食スペースでは、領民たちが楽しそうに肉を頬張っている。
そんな祭り会場の様子を覗き終えて、俺は控え室であるテントの入口を閉めた。
「敵に動きなし。やっぱり、アイツの狙いは俺っぽいな」
難しい顔で街の地図と睨めっこするミルトに手を差し出して、優しく微笑む。
ミルトの手は冷たく、顔も青白い。
我々の隊長は、相変わらず緊張しているらしい。
「大丈夫。出来るだけの準備は全部したし、簡単に返り討ちに出来るよ」
やれるだけのことはした。
だからきっと、大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、ミルトの手を優しく握る。
「行こうか。みんなが待ってる」
「……うん」
護衛のホムンクルスはつけずに、ミルトの手を引いてテントを出る。
俺たちの体格に合わせて作ってもらった、隊長と副隊長らしい衣装。
そんな豪華な服が似合うように、俺はテントの前で堂々と胸を張った。
「諸君! 本日はよく集まってくれた!!」
目の前に広がるのは、祭りのメイン通路とでも言うべき場所。
両端に屋台が並び、正面には木製のステージが建っている。
(姫様とフェドナルンド様だ)
(おふたりとも可愛いー!!)
(頭をなでなでしたいかも)
(わかるー! ぎゅっと抱きしめて、なでなでしたい!)
周囲の雰囲気は、ずいぶんと和やかだ。
魔物肉を待つ列が横にずれて、俺たちに気付いた人々が道を譲ってくれる。
そうして自然と出来たステージまでの通路を、俺たちはゆっくりと進んでいく。
「全員、魔物肉は食べたか?」
「食べました!」
「おいしかったです!」
「我々新部隊が考えた特殊な調理法だ。すごいだろ?」
「最高です!」
「ミルトレイナ隊長、フェドナルンド副隊長は、本当にすごいです!!!!」
そんなやり取りをしながら、ミルトと共にステージに上る。
アイドルのファンサービスをイメージして、周囲に手を振って見せた。
ちなみにだが、道中の問いに答えてくれた者の半数は、俺たちが雇ったサクラだ。
こういうのは、最初のイメージが大切だからな。
みんな、いい仕事をしてくれた。
そう思いながら、マイクのような魔道具の前に立つ。
『あー、あー。マイクテスト、マイクテスト……』
レン伍長たちが事前にしてくれているはずだけど、司会者がいないから念のため。
クスリと笑ってくれる人が多いから、掴みとしては正解だろう。
ステージからは本当に多くの人が見えて、全員が俺たちに注目している。
『聞いていると思うが、本日は、我々 新設部隊の初任務を記念したものだ。大いに騒ぎ、我々の門出を祝って欲しい』
何の変哲もない、お偉いさんの開会宣言だ。
これが日本なら、俺の挨拶を真面目に聞く人なんて1割もいないだろう。
だけど、ここは異世界で、俺たちは貴族であり、軍の上層部の人間だ。
年齢ゆえに微笑ましい者を見る目は多いが、全員が真摯に耳を傾けてくれている。
『私からは以上だ。これより、ミルトレイナ隊長のお言葉を賜る』
買い物客は全員が手を止めていて、店主たちも見える範囲に顔を出してくれている。
広間は心地よい静けさを保ったまま、全員がミルトの言葉を待っていた。
そんな中で、この場に似合わない笑い声が聞こえる。
「なんだ? ゴミの演説は、もう終了か??」
観客が慌てて振り向き、声がした方に顔を向ける。
そこにいたのは、4人の護衛を伴ったクズの姿。
伯爵家の長男らしい豪華な服を身に着けた腐った兄が、堂々と立っていた。
「面白い催しでもあるかと思い、わざわざ足を運んだが、興ざめだな」
横に落ちているローブに身を隠して、会場に潜入したのだろう。
腐った兄は護衛に守られながら剣を抜き、切っ先を俺に向けた。
「余興は仕舞いだ。ここからは、伯爵家の次期当主である俺様が――」
『あれあれ? 予想以上に早く到着したんだね。出迎えは必要なかったの??』
そんな兄の声を遮って、言葉をかぶせる。
兄も護衛も、観客たちも呆気に取られ、思わずと言った様子で言葉に詰まっていた。
『ようこそ、俺たちのお祭りに。歓迎するよ、伯爵家の長男さん』
「……ゴミが、いったいなにを――」
『今日は楽しんでいってね』
予想できた侵入者を無視して、観客たちに言葉を投げかける。
『みんな大丈夫だよ。護衛も含めて、この5人は僕の招待客だから安心してね』
俺はマイクの前に立ったまま、優雅に笑って見せた。
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