54 / 73
<53>
しおりを挟む
準備開始から、3時間。全員をふたたび村中央の広場に集めた。
作業完了を宣言し、しばしの休憩を伝えた後、住民全員で、最後の晩餐になるかもしれないスープを飲む。
本当のことを言えば、作業は完了していなかった。
ゴブリンが近くまで接近し、これ以上の作業は戦闘に影響を出すと判断した結果だった。
それでも、最低限のものだけは出来上がっている。その中でも、作戦の生命線とも言える、ここ、村中央広場はなんとか仕上げることが出来た。
周囲は、村はずれから持ってきた柵で四角く三重に囲まれ、中央に立てば、東、西、南、北、すべての方角において、村はずれの森まで見通せる状態だ。
僕達の村は、家は17軒しか無く、殆どの場所が畑なので、もともと視界は良好だったのだが、念を入れて、数件の家を取り壊した。
そのおかげで、森から飛び出してくるゴブリンを見落とす心配は無い。
食事を終え、それぞれが持ち場に着く。
僕は、ジュリとソフィア、ハウン姉を連れ立って、村入口方面(方角で言えば南側)の柵の前で弓を構えた。
村正面は、ゴブリン達の進行方向であり、1番の激戦が予想されるのだが、正面の守りに付いたのは、僕達4人だけだ。
そして、ハウン姉とソフィアは戦力外、ジュリは付与魔法での援護なので、実質、僕1人での防衛と言っても過言ではない。
そんな正面に比べ、左右に17人ずつ、後方は7人に守ってもらうことにしてある。ちなみに戦えない人達は、中央で矢などの備品補充に回ってもらっていた。
場所の割り振りはすべて僕の指示なので、正面の配置は勿論、自信あっての采配だ。
その自信の源である矢を森に向けて放つ。
手元を離れた矢は、自分から飛び込むかのように木々の合間から顔を出した1匹のゴブリンに刺さり、ゴブリンが光となって消えた。
その光景を見ていた村長代理が全員を鼓舞するように声を張り上げる。
「村長が、その武を示された。我らも事に備えるぞ!!」
そんな声に対し、さすが村長だ、などと、僕を賞賛する声が広場を取り巻く。
ゴブリンを1発で仕留めた矢は、ジュリに火の魔法を付与して貰った物だ。
9匹目のゴブリンと対峙した時、足止めのつもりで放った炎によってゴブリンが消滅したことから、もしかして、と思ったのだが、どうやらゴブリンは火が苦手なようだ。
その後も、すずめの目を通じてタイミングを計り、次々と飛び出してくるゴブリンに矢を放っていった。
作業完了を宣言し、しばしの休憩を伝えた後、住民全員で、最後の晩餐になるかもしれないスープを飲む。
本当のことを言えば、作業は完了していなかった。
ゴブリンが近くまで接近し、これ以上の作業は戦闘に影響を出すと判断した結果だった。
それでも、最低限のものだけは出来上がっている。その中でも、作戦の生命線とも言える、ここ、村中央広場はなんとか仕上げることが出来た。
周囲は、村はずれから持ってきた柵で四角く三重に囲まれ、中央に立てば、東、西、南、北、すべての方角において、村はずれの森まで見通せる状態だ。
僕達の村は、家は17軒しか無く、殆どの場所が畑なので、もともと視界は良好だったのだが、念を入れて、数件の家を取り壊した。
そのおかげで、森から飛び出してくるゴブリンを見落とす心配は無い。
食事を終え、それぞれが持ち場に着く。
僕は、ジュリとソフィア、ハウン姉を連れ立って、村入口方面(方角で言えば南側)の柵の前で弓を構えた。
村正面は、ゴブリン達の進行方向であり、1番の激戦が予想されるのだが、正面の守りに付いたのは、僕達4人だけだ。
そして、ハウン姉とソフィアは戦力外、ジュリは付与魔法での援護なので、実質、僕1人での防衛と言っても過言ではない。
そんな正面に比べ、左右に17人ずつ、後方は7人に守ってもらうことにしてある。ちなみに戦えない人達は、中央で矢などの備品補充に回ってもらっていた。
場所の割り振りはすべて僕の指示なので、正面の配置は勿論、自信あっての采配だ。
その自信の源である矢を森に向けて放つ。
手元を離れた矢は、自分から飛び込むかのように木々の合間から顔を出した1匹のゴブリンに刺さり、ゴブリンが光となって消えた。
その光景を見ていた村長代理が全員を鼓舞するように声を張り上げる。
「村長が、その武を示された。我らも事に備えるぞ!!」
そんな声に対し、さすが村長だ、などと、僕を賞賛する声が広場を取り巻く。
ゴブリンを1発で仕留めた矢は、ジュリに火の魔法を付与して貰った物だ。
9匹目のゴブリンと対峙した時、足止めのつもりで放った炎によってゴブリンが消滅したことから、もしかして、と思ったのだが、どうやらゴブリンは火が苦手なようだ。
その後も、すずめの目を通じてタイミングを計り、次々と飛び出してくるゴブリンに矢を放っていった。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる