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 ソフィアの足に付けられたオモリが外され、彼女は自由に動けるようになった。
 枷の外れた彼女が何をするかわからないが、剣も弓もGランクである彼女が何か出来るとは思えない。何か仕掛けてきたとしても十分な対処が取れるだろう。


 そう思っていた時期が自分にもありました。



 枷の外れた彼女は、その場で屈伸やジャンプなどを繰り替えしていたかと思うと、


 突如、


 服を脱ぎだした。


 完全に予想外の攻撃で、なんの対処も出来なかった。 気付いたころには、彼女は全裸である。

 呆気にとられていると、彼女はその場でゆっくりと回ってみせ。軽くジャンプをした。ジュリよりは少し小さいだろうが、それでも十分な破壊力のある胸が上下に揺れる。
 ぷるんぷるんだ。

 そして、気が付いたときには遅かった。

 立派な胸に気を取られている間に、彼女の右手がボクの肩に触れる。
 接触部分から、緑色の光が放ったれた。

 魔法をかけられた。
 そのことに思い至った瞬間彼女を突き飛ばす。
 ソフィアは、尻餅をつくように、後ろに倒れた。

 ……何をされた? 体に異常は?

 自分の迂闊さに落胆しながらも思考をめぐらせる。光に当たった肩に痛みなど無い。むしろ、からだ全体が軽くなったように感じる。

 鑑定スキルの結果が正しければ、彼女が使える魔法は、生活、空間、回復。
 生活に緑の光を放つものなどない。
 
 残るは空間と回復。
 体が軽くなったことを考えると回復か?

 そこまで考え、近づこうとしていた商人を手で制止する

「あぁ、悪い、大丈夫だ。少々過剰反応だったようだ。気にしないでくれ」

 突き飛ばされた形で倒れこむソフィアに手を差し伸べる

「突き飛ばしてたりして悪かったな」
「いや、ボクのほうこそ悪かったよ。ご主人様はおっぱいが好きそうだったから、感触を確かめて貰おうかと思ってね」

 どうやら、魔法については触れないようだ。
 
「最近ちょっと、栄養価が足りなくて、少々ハリがなくなってきてるが、それでもこの胸は悪くないと思わないかい?」

 そういって、自分の胸を両手で持ち上げ、ムニムニと強調する。そして、ゆっくりと近づき僕の腕に胸を押し付けるように抱きついてきた。
 
「自分で言うのもなんだが、ボクは中々の優良物件だよ? それにご主人様がお望みなら、夜のお仕事もしっかりするしね。ボクをキミのものにしてくれないかな?」

 ふわふわの感触が腕を覆う。そして、肩に向けて緑色の光が放たれ、徐々に全身から疲れが抜けていく。
 どうやら攻撃する気は微塵も無いようだ。それどころか、出来る限りのアピールを試みているらしい。
 なんとなくではあるが、彼女の意図が見えてきた。

「そうだな。楽しみにしておこう」

 もう十分だとソフィアを退出させ、商談に入る。

 ほぼ、購入することを決めたが、確認すべきことはまだあった。

「あの子は確か二級奴隷だったよな? 罪状は?」
「はい、何でも国立図書館に無断で侵入したとかで、こっちに流れてきた商品です」

 ふーん、図書館にねぇ。まぁ、そのくらいなら大丈夫だろう。

「身体的な問題などあるか?」
「はい。目が多少不自由な点意外は問題ありません」
「目が不自由というと?」
「はい。なんでも物がぼやけて見えるとか。しかしながら、一般生活に支障はないようです」

 戦闘は出来ないか。……初めからメイドの予定だ。問題ないだろう。

「他に何か注意点はあるか?」
「すべての奴隷に共通することではありますが、購入から5日は傷や健康状態に問題が無ければ、お買い上げの8割で買い取らせて頂いております。しかし、彼女は処女ですので、5日以内であっても、性行為を行われた後ですと3割での買い取りになりますので、ご注意願います」

 クーリングオフのような物か。
 購入したものを気に入らないからって返すのもどうかと思うが、人間同士、ちょっと生活してみないとわからないこともあるしな。なんにせよ、客としては安心か。

「わかった。彼女を購入しよう」
「畏まりました。お買い上げありがとうございます」

 異世界生活15年。僕はお金を対価に奴隷を手に入れてしまった。
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