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 外出する際には、肌身離さず持ち歩いていた毛皮の袋を腰紐から取り外し、ハウン姉に差し出す。

 受け取った物の中身を見て、ハウン姉の目が大きく開かれた。

 何度も確かめるように手の中で転がすように見ていた彼女は、確信を持った表情を浮かべると、鑑定スキルより詳しい説明をしてくれた。
 
 曰く、技術石は。ダンジョンの奥地でのみ発見されており、貴族などが自分や子供の誕生日プレゼントとして、購入する物らしい。
 生涯に1度しか使用できず、(鑑定スキルがないと)どの能力が向上するかわからないため、運試し石やおみくじ石などと呼ばれているらしい。

「それで、これってお金になりませんか?」
「えぇ。大丈夫よ。高価すぎて私じゃ扱えないけど、知り合いに頼めばなんとかなるわ。……だけど、これどこで手にいれたの?」

 彼女の質問はもっともだった。
 この村周辺でにダンジョンなどはなく、王都でも一般市場に出回ることがない代物ある。

 いまさら隠し事をするつもりもなく、洞窟で盗賊を倒し、そいつらから奪ったものだと伝えた。

「その男達が盗賊であるという意見には賛成するし、盗賊の持ち物は倒した人の物よ。だから、行動自体は問題ないのだけど、一言だけ言わしてもらうわ。
 もう少し、私達、大人を頼ってくれないかな? 2人に何かあってからじゃ遅いのよ」
「ごめんなさい。当時は色々とパニックになってて」

 その点については自覚があったので、素直に謝っておく。

「過ぎたことを言ってもしかたないけど、今後は頼ってよね?」
「わかりました。ごめんなさい。ハウン姉」
「その言葉、忘れないでよね? ……よし、それじゃ、お説教はこれでおしまい。
 それで、この石なんだけど、1つだけ貸してもらえない?」
「1つですか? 勿論良いですけど、どうするんですか?」
「出所を調べるのよ。物がものだけに慎重に動かざるを得ないからね」

 間を空けず貸し出しに了承をすると、ハウン姉は、袋から石を1つ取り出し、残りを僕に差し出してきた。

 その行動を拒否するように首を大きく横に振る。

「石は、すべてお任せします。そのまま、持っていてください。販売できそうならお金にして、税率の交渉に役立ててもらえませんか?」 
「すべてって。……この石の価値、わかってないでしょ? それに私は商会の人間よ。そん――」
「頼っていいんでしょ?」

 自分でも、怒られた直後は、卑怯だなと思いながらも、ハウンさんの言葉を遮るように被せた。

「…………」
「商会は敵かもしれないけど、お姉ちゃんは味方ですよ。だから、すべてお任せします」

 複雑に考えるしぐさを見せた後、決意がともった瞳と共に、わかったわと、僕達の姉はやさしく頷いてくれた。
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