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 顔合わせを済ませ、当初の目的へと戻る。

 買取のために村長夫妻は毛皮の検品を始めた。手馴れた様子で、流れるように毛皮の山が減っていく。
 そんな夫婦の様子を眺めていると、夫人が戸惑ったような声を上げた。

「あら? Cなんて、珍しいわね」
「ほんとか? ……あー確かに、これはなー。
 リアム爺、大丈夫か? 疲れてるんじゃないか?」

 じーちゃんの体調を心配する2人が見つめる毛皮には見覚えがあった。

「……あっ、ごめんなさい。それ僕が仕留めたやつなんです」
「ほほほ、そぉいうことじゃ。クラッド、どこがダメなのか見せて貰いなさい」
「わかりました。よろしくお願いします」

 じいちゃんの指示通り、評価内容を聞こうと村長夫妻を見るが、二人ともぽかーん、と僕とじーちゃんを眺めている。

「あ、あのー」
「っぉ、あぁ、ランクの判定ね。えーっと、この毛皮なんだが、こことここに穴が開いているよね。恐らく、仕留める時に一発で仕留めれず、二発の矢で仕留めたのと思うんだ。で、穴がないのがA、穴が1個でB、2個でCといった感じになる」
 
 問題の毛皮には大きな穴が2つ。
 僕自身、本当に売りのものになるのかとばーちゃんに訪ねたくらいの代物だ。
 ばーちゃんは大丈夫だからね、と微笑んでくれたが、やっぱり質は悪い。それでも値段は下がるが、買取できないレベルではないとのことなので一安心だ。

「たしかに二発お腹の辺りに当てましたね。
 じーちゃんがなるべく眉間を狙えって言ったのは、仕留め易さだけじゃなくて、毛皮のことも考えてなんですね」
「そういうことだよ。……で、確認なんだが、クラッドくんがこれを仕留めたのかい?」
「そうです。全体の1/5ほどは僕が仕留めたやつなので、ランクが低いものが混じっていると思います。すいません」
「いや、謝らなくていいんだよ。えっと、リアム爺、たしかこの子って、ジュリと変わらないくらいの歳だったよな?」
「ほほほ、わしの孫じゃてぇ」

 村長が問い詰めるような目線で、早すぎるや危険すぎるなどの攻撃を繰り出したが、じーちゃんはわしの孫じゃてぇの必殺技ですべて回避してみせた。

 どうやら、8歳で狩り、ましてや一人で獲物をとるなんてありえないらしい。異世界基準でも10歳から訓練を始めてー、ってのが一般的なのだそうだ。

 まー僕も、早いなー、とは思ってたんだよね。
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