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7.聖獣権能はエラーです
しおりを挟む深く眠っている間、アルヴィがどんな気持ちでいたかリシアにはわからない。
純愛思考のドラゴンは、自分から仕掛けた悪ふざけで死の淵に滑り落ちそうになった相手のため、泣いて縋りつくだけでなく、性的興奮を呼び起こすことまでしてくれた。
献身的で、健気な求愛者にまったく感謝が生まれないと言ったら嘘だろう。
ゆっくりと目を開け、怠い身体を起こしたリシアに、アルヴィは見ている方が恥ずかしくなるほど優しく微笑んでくれる。
「めちゃくちゃ良く寝た気がするんだが、お前がここにいてウチの誰かが付き添ってないってことは、まだ日付が変わってないのか?」
数時間寝た程度で回復出来るとは信じ難い。
どんな難題もクリアしてしまう彼がいれば、日時の概念などどうにでもなるかもしれない。
身体中に付着したはずのあれこれがサッパリしているのもおそらく魔法によるものだろう。
男性器の挿入こそなかったけれど、リシアは他人の精液を体内に取り入れた。
草木の受粉や医療行為に近い方法ではあったけれど、擬似的な交わりがあったのは事実である。
貫通に伴う痛みや身体を繋げた違和感はひとつも残っていない。
あくまで生命維持が目的の体液摂取。患者として開き直ればいいのに、口づけより深い行為を思い出して、リシアの感情制御はおかしくなる。
「ちゅーしたくらいで、あんな風に拒絶反応が出るってことは、俺とお前の相性が良くないってことか?」
精液を知った舌は、意地の悪いセリフを平気で吐く。
口内と秘奥を躊躇いつつ汚したくせに、リシアからのキスさえカウントしてなさそうな男は、目を伏せながら反論する。
「君以外の人と試してみる機会は来ないだろう。僕にとっては、君が最初で最後の相手だ」
「お前と俺じゃ、種族が違う。最後ってことは……」
「関係が深まれば特性は移行する。うまくいけば僕が1人になる時間はほとんどなくなるはずだ」
しれっと物騒なことを予告する彼の独占欲は甘ったるくて、そう簡単には受け入れてやれない。
「言っとくが、俺から仕掛けたことだ。変な責任を感じなくていいからな」
「なら、僕は君を救った恩人ってことになるのかな」
「は? なんで? こっちは寝てる間にヴァージンじゃなくなってるんだから、貸し借り無しが妥当だろ」
事実を淡々と伝えただけなのに、アルヴィの顔が茹だったように赤くなる。
「ほ、他に方法がなかっただけで……僕は……。君が一連の行為をしっかり認識してるというのも想定外だ」
「見えてたわけじゃねぇよ。音とか身体の感覚とかで、何が起きてるかぼんやりわかった」
「君の同意を得ないまま、処置したのは悪かったと思っている」
リシアが応えられない状況だったにも関わらず、素直に非を認める世界一不遜な種族に可愛げしか見つからない。
自分のために矜持も捨てて、搾精までしてくれた彼に、冷たくするばかりではフェアではない。
「聖獣特性持ちだろお前。自分が種付けセックスした相手なら、変わらず好きでいられんの?」
確認せずとも答えはわかっている。
アルヴィは、下品な言葉に耐性がないのか1人でむせて返答を遅らせた。
「……僕は、純粋に治療のつもりだった。君はまだ誰にも穢されていない」
そんな特例が通用するはずがない。
彼以外が純潔を判定するなら、奥まで彼の体液を流し込まれた時点で完全にアウトだろう。
お前の判定ガバガバすぎる。
笑って反論してやりたいのに、リシアにも彼の純情が伝染してくる。
耳も目元にも熱が集まってきた自分は、彼と同じくらい思考がまとまってない。
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