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5.ハムロとウタマクラ
14.「やあ、週末のスポーツに、山登りはどう?」
しおりを挟む「はぅうううッ! 大好きです我が主、ヴァイス様! ジゼルは、マスターの愛の奴隷です。どうか、この卑しい私めに、何なりとご命令くださぃいいいッ!」
その瞬間、目をハートにした大魔族ジゼルが、俺に土下座してきた。
「はぁ……?」
いままで、散々、俺たちを苦しめてくれた意趣返しの意味も込めて、【傾国】の呪いを返してやった訳だが……
「お前、キャラが変わりすぎじゃないか!?」
「わ、私めの性格がお気に召さないようでしたら、がんばってマスター好みの女の子になります! どんな娘が好みですかぁあああッ!?」
「あっ、いや、考えてみたら、【傾国】で魅了された男たちも、みんなおかしくなっていたか……!?」
でも、まさか、ここまでジゼルの言動がおかしくなるとは思わなかった。
ジゼルは犬のようにハアハア言いながら、俺を見上げていた。
おい、絶世の美少女に、こんな欲情された目を向けられると、いたたまれないんだが。
「ちょ、ちょっと、どういうことなの!?」
「ヴァイスさん、ジゼルになぜトドメを刺しませんの!?」
「兄様、退いてください! その魔女が殺せません!」
セリカとフィアナが警戒した様子で、駆け付けてきた。
エレナは剣を構えて、殺気立っている。
「一言で言うと、【傾国】の呪いを逆手に取って、ジゼルを支配してやった訳だが……」
「はい! このジゼルめは、ヴァイス様の忠実なる下僕です! 何かお気に召さないことがありましたら、どうか鞭で叩いて、ご褒美──いえ、お仕置きしてください!」
ジゼルは恍惚とした顔で、絶叫した。
「「「はぁあああッ!?」」」
3人の少女たちだけでなく、居合わせた者、全員が呆気に取られた。
「ハハハハハッ! なんということだ! 数々の国を滅ぼしてきたという伝説の魔族を! あの【傾国】のジゼルを逆に支配してしまったというのか!?」
国王陛下が、さも愉快といった様子で大笑いした。
深傷を負い、出血多量だったハズだが、さすがは獅子王。なんともタフな人だ。
「こんなことは、歴史上どんな英雄でもなし得なかったことだ! ジゼルを支配したとなれば、戦場の常識が覆る。魔族どもとのパワーバランスが変わるぞ!」
「お父様、それは一体、どういう?」
「わからぬか? 魔族は魔物を支配下に置ける。つまり、ジゼルを使えば、我々も魔物の軍勢を持つことができるということだ!」
「あっ!」
その有用性は、少し考えれば誰でも理解できることだ。
王国軍を強化できるだけでなく、兵たちの命を無駄に散らすことも減らせる。
その発想は、俺にも無かったな。さすがは国王陛下だ。
魔物の軍勢とは、おもしろそうじゃないか。
「ヴァイスよ。そこで提案だが……おぬしが倒したエドワードに代わり、王国最強の騎士の称号である【栄光なる騎士】を受けてはくれぬか? そなたには、ジゼルと共に魔物の軍勢を率いてもらいたい」
「に、兄様が【栄光なる騎士】!」
「在学中に、【栄光なる騎士】の称号を得るなんて……王国始まって以来の大偉業ですわ!」
「す、すごいわヴァイス君!」
国王陛下の提案に、みんなが沸き立った。
俺はあまりに意外な展開に、腰を抜かしそうになる。
「陛下。俺はまだ学生の身です。しかも、【栄光なる席次】ナンバー1にもなっていませんが?」
グロリアス騎士学園は、王国を守る騎士を輩出することを目的としている。
【栄光なる騎士】はその頂点であり、在学中に【栄光なる席次】ナンバー1になるくらいの強者でないと、その称号を得られることは無かった。
「何を申す。今代の【栄光なる騎士】の誰も。お主の父ですら、大魔族を討伐することはできなかったのだぞ! その功績を考えれば当然のことであろう!」
国王陛下は、豪放磊落に笑った。
「余は強き者こそ愛し、評価する! この国には強者が必要なのだ!」
「陛下。僭越ながら僕もヴァイスこそ、父上の後を継いで、【栄光なる騎士】になるにふさわしいと思います」
レオナルドが国王陛下の前に歩み出て片膝をついた。
「わたくしも賛成ですわ。まさか、【栄光なる席次】ナンバー1のわたくしを飛び越えて、【栄光なる騎士】に任命されてしまわれるなんて。さすがは、ヴァイスさんですわね」
フィアナまで賛同の声を上げた。
「どうであるかな、ヴァイスよ。【栄光なる騎士】となって、その大いなる力を、王国のために貸してはもらえぬか?」
「へ、陛下!?」
なんと、国王陛下は俺に頭を下げてきた。
これには、誰も彼もが驚愕し、言葉を無くしている。
なにしろ、俺はつい1週間前まで、学園最下位の落第生だったのだ。
「なにより最近、【栄光なる騎士】の質が下がっておると感じていたところだ。アルバンとエドワードは、くだらぬ諍いを続け、エドワードは魔族に取り込まれる始末。ここで新進気鋭の英雄を抜擢し、喝を入れねばならん」
「……陛下、面目次第もございません」
レオナルドは、深く恥じった様子だった。
国王陛下にここまで言われては、俺も嫌とは言えない。
それに大魔族を支配下に置いて、魔物の軍勢を指揮するなんて、ゲーム本編ではできなかったことだ。
ここからは、ゲームシナリオから完全に外れた未知の領域だ。
ゲーマーとして、ワクワクするのを抑えられなかった。
「陛下、【栄光なる騎士】の称号、謹んでお受けいたします!」
「おおっ! 受けてくれるかヴァイスよ! これほどうれしいことはない! みなの者、王国の英雄【栄光なる騎士】が一柱、【超重量】のヴァイスを讃えよ!」
「【栄光なる騎士】ヴァイス様、万歳!」
「ヴァイス様こそ、真の英雄にして強者です!」
「我々は皆、ヴァイス様に付いていきます!」
なんと、これまで俺を落ちこぼれだとバカにしていた学園の生徒と教師が、拍手喝采で俺を褒め讃えた。
「兄様、万歳! お父様もきっとお喜びになります!」
「ヴァイス君と、3年後に結婚できるなんて夢みたいだわ!」
エレナとセリカも俺を祝福してくれていた。
「この僕に勝ったんだ。それくらい出世してもらわないと、張り合いがないね」
ギルベルトが白い歯を見せながら、やっくてくる。
「……ヴァイス、今は勝ちを譲る。だが、僕もいずれ必ず【栄光なる騎士】となって、再び君に挑戦する。君は僕の永遠のライバルだ」
レオナルドは陰りがありつつも、前向きな顔で告げた。
レオナルドも根は悪い奴ではないと思う。
父上たちのようないがみ合う関係ではなく、お互いを高め合える関係を、コイツとなら築けそうな気がする。
「そうだな。次は、ジゼルに邪魔されることなく、正々堂々と戦おう」
さらにそこにフィアナが割って入ってきた。
「ヴァイスさん、次はわたくしと決闘! と言いたいところですが……正直、ここまで格の違いを見せられると、今は勝てる気がしませんわ。ですが、卒業するまでに、必ずあなたと肩を並べられる領域にまで、己を高めて見せます。わたくしは、あなたとの婚約をあきらめませんわよ!」
「ああっ、わかった。挑戦は大歓迎だ。いつでも来いよ、フィアナ」
「無論ですわ!」
そして、俺を讃える宴が三日三晩続いた。
今日、この日は大魔族ジゼルに勝利した記念日、『ヴァイス祭』となり、毎年、俺の偉業を讃える祭りが開かれることになったのだった。
その瞬間、目をハートにした大魔族ジゼルが、俺に土下座してきた。
「はぁ……?」
いままで、散々、俺たちを苦しめてくれた意趣返しの意味も込めて、【傾国】の呪いを返してやった訳だが……
「お前、キャラが変わりすぎじゃないか!?」
「わ、私めの性格がお気に召さないようでしたら、がんばってマスター好みの女の子になります! どんな娘が好みですかぁあああッ!?」
「あっ、いや、考えてみたら、【傾国】で魅了された男たちも、みんなおかしくなっていたか……!?」
でも、まさか、ここまでジゼルの言動がおかしくなるとは思わなかった。
ジゼルは犬のようにハアハア言いながら、俺を見上げていた。
おい、絶世の美少女に、こんな欲情された目を向けられると、いたたまれないんだが。
「ちょ、ちょっと、どういうことなの!?」
「ヴァイスさん、ジゼルになぜトドメを刺しませんの!?」
「兄様、退いてください! その魔女が殺せません!」
セリカとフィアナが警戒した様子で、駆け付けてきた。
エレナは剣を構えて、殺気立っている。
「一言で言うと、【傾国】の呪いを逆手に取って、ジゼルを支配してやった訳だが……」
「はい! このジゼルめは、ヴァイス様の忠実なる下僕です! 何かお気に召さないことがありましたら、どうか鞭で叩いて、ご褒美──いえ、お仕置きしてください!」
ジゼルは恍惚とした顔で、絶叫した。
「「「はぁあああッ!?」」」
3人の少女たちだけでなく、居合わせた者、全員が呆気に取られた。
「ハハハハハッ! なんということだ! 数々の国を滅ぼしてきたという伝説の魔族を! あの【傾国】のジゼルを逆に支配してしまったというのか!?」
国王陛下が、さも愉快といった様子で大笑いした。
深傷を負い、出血多量だったハズだが、さすがは獅子王。なんともタフな人だ。
「こんなことは、歴史上どんな英雄でもなし得なかったことだ! ジゼルを支配したとなれば、戦場の常識が覆る。魔族どもとのパワーバランスが変わるぞ!」
「お父様、それは一体、どういう?」
「わからぬか? 魔族は魔物を支配下に置ける。つまり、ジゼルを使えば、我々も魔物の軍勢を持つことができるということだ!」
「あっ!」
その有用性は、少し考えれば誰でも理解できることだ。
王国軍を強化できるだけでなく、兵たちの命を無駄に散らすことも減らせる。
その発想は、俺にも無かったな。さすがは国王陛下だ。
魔物の軍勢とは、おもしろそうじゃないか。
「ヴァイスよ。そこで提案だが……おぬしが倒したエドワードに代わり、王国最強の騎士の称号である【栄光なる騎士】を受けてはくれぬか? そなたには、ジゼルと共に魔物の軍勢を率いてもらいたい」
「に、兄様が【栄光なる騎士】!」
「在学中に、【栄光なる騎士】の称号を得るなんて……王国始まって以来の大偉業ですわ!」
「す、すごいわヴァイス君!」
国王陛下の提案に、みんなが沸き立った。
俺はあまりに意外な展開に、腰を抜かしそうになる。
「陛下。俺はまだ学生の身です。しかも、【栄光なる席次】ナンバー1にもなっていませんが?」
グロリアス騎士学園は、王国を守る騎士を輩出することを目的としている。
【栄光なる騎士】はその頂点であり、在学中に【栄光なる席次】ナンバー1になるくらいの強者でないと、その称号を得られることは無かった。
「何を申す。今代の【栄光なる騎士】の誰も。お主の父ですら、大魔族を討伐することはできなかったのだぞ! その功績を考えれば当然のことであろう!」
国王陛下は、豪放磊落に笑った。
「余は強き者こそ愛し、評価する! この国には強者が必要なのだ!」
「陛下。僭越ながら僕もヴァイスこそ、父上の後を継いで、【栄光なる騎士】になるにふさわしいと思います」
レオナルドが国王陛下の前に歩み出て片膝をついた。
「わたくしも賛成ですわ。まさか、【栄光なる席次】ナンバー1のわたくしを飛び越えて、【栄光なる騎士】に任命されてしまわれるなんて。さすがは、ヴァイスさんですわね」
フィアナまで賛同の声を上げた。
「どうであるかな、ヴァイスよ。【栄光なる騎士】となって、その大いなる力を、王国のために貸してはもらえぬか?」
「へ、陛下!?」
なんと、国王陛下は俺に頭を下げてきた。
これには、誰も彼もが驚愕し、言葉を無くしている。
なにしろ、俺はつい1週間前まで、学園最下位の落第生だったのだ。
「なにより最近、【栄光なる騎士】の質が下がっておると感じていたところだ。アルバンとエドワードは、くだらぬ諍いを続け、エドワードは魔族に取り込まれる始末。ここで新進気鋭の英雄を抜擢し、喝を入れねばならん」
「……陛下、面目次第もございません」
レオナルドは、深く恥じった様子だった。
国王陛下にここまで言われては、俺も嫌とは言えない。
それに大魔族を支配下に置いて、魔物の軍勢を指揮するなんて、ゲーム本編ではできなかったことだ。
ここからは、ゲームシナリオから完全に外れた未知の領域だ。
ゲーマーとして、ワクワクするのを抑えられなかった。
「陛下、【栄光なる騎士】の称号、謹んでお受けいたします!」
「おおっ! 受けてくれるかヴァイスよ! これほどうれしいことはない! みなの者、王国の英雄【栄光なる騎士】が一柱、【超重量】のヴァイスを讃えよ!」
「【栄光なる騎士】ヴァイス様、万歳!」
「ヴァイス様こそ、真の英雄にして強者です!」
「我々は皆、ヴァイス様に付いていきます!」
なんと、これまで俺を落ちこぼれだとバカにしていた学園の生徒と教師が、拍手喝采で俺を褒め讃えた。
「兄様、万歳! お父様もきっとお喜びになります!」
「ヴァイス君と、3年後に結婚できるなんて夢みたいだわ!」
エレナとセリカも俺を祝福してくれていた。
「この僕に勝ったんだ。それくらい出世してもらわないと、張り合いがないね」
ギルベルトが白い歯を見せながら、やっくてくる。
「……ヴァイス、今は勝ちを譲る。だが、僕もいずれ必ず【栄光なる騎士】となって、再び君に挑戦する。君は僕の永遠のライバルだ」
レオナルドは陰りがありつつも、前向きな顔で告げた。
レオナルドも根は悪い奴ではないと思う。
父上たちのようないがみ合う関係ではなく、お互いを高め合える関係を、コイツとなら築けそうな気がする。
「そうだな。次は、ジゼルに邪魔されることなく、正々堂々と戦おう」
さらにそこにフィアナが割って入ってきた。
「ヴァイスさん、次はわたくしと決闘! と言いたいところですが……正直、ここまで格の違いを見せられると、今は勝てる気がしませんわ。ですが、卒業するまでに、必ずあなたと肩を並べられる領域にまで、己を高めて見せます。わたくしは、あなたとの婚約をあきらめませんわよ!」
「ああっ、わかった。挑戦は大歓迎だ。いつでも来いよ、フィアナ」
「無論ですわ!」
そして、俺を讃える宴が三日三晩続いた。
今日、この日は大魔族ジゼルに勝利した記念日、『ヴァイス祭』となり、毎年、俺の偉業を讃える祭りが開かれることになったのだった。
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